【カーリング】MD日本一の松村・谷田組「変えるところはない」 ブレずに頂点に輝いた理由

竹田聡一郎

松村は3シーズンほどダブルスに専念しているが、北澤は中部電力のチームメイトでもある。試合後にはお互いの健闘を抱擁で称え合った。 【著者撮影】

 決勝は小穴・青木と松村・谷田という共にミックスダブルスに専念したペア同士の対戦となった。

 これまで無敗の小穴・青木は大会レギュレーション上、有利な後攻を持ってのスタートとなったが、1エンド目の先攻の1投目、松村が秀逸なセンタードローを見せた。

 5位に終わった昨大会は松村の1投目、センターガードの裏に隠す初投が乱れることもあった。「今シーズンも途中までは1投目のズレがたくさんあった」松村は振り返る。

「海外遠征中に谷田と『ピンポイントを狙いすぎているかも』という話をして、まずは(ハウス中心付近の)置き石の上に積みたい。もう少し広く『4フットの中まであればいい』くらいに気楽に投げるようにしました。優秀なスイーパーがいるので」

 優秀なスイーパーとはもちろん谷田のことだ。4フットとはハウス中心の「ボタン」と呼ばれる円のひとつ外側の円を指す。ストーンがボタンに向かっていさえすれば、谷田のスイープで狙ったところに運べる。メンタルの余裕が高いショット率を呼び込んだ。

 谷田もそれに呼応するように序盤から次々に効果的なショットを重ねた。相手の石に自軍に有利な形で寄せるフリーズ、相手の石をハウスの外側に追いやりながらシューター(投げた石)を好位置に動かすヒットロール、ガードを置き直すドローも、逆にガードを払うクリアリングもほぼノーミスでこなしていく。コンサドーレで3連覇していた時代はセカンドでプレーしていることもあり、多彩で器用なショットは元々、持ち味だ。2次予選で連敗を喫しながらも、谷田はこうコメントしていた。

「どちらも1点差だったっていうのは手応えがあって、崩れた負け方はしていない。いい試合はできているので何かを変える必要はないです」

 松村も「大会を通していいパフォーマンスができている」と補足する。

「その中で負けがあったり勝ちがあったりするのは当たり前で、粘りのカーリングっていうのが私たち持ち味だと思うので、そこが出せたことはすごく良かった」

 いい試合はできている。その手応えを持ったまま苦しみながら決勝までたどり着き、最後の最後にピークを作ることに成功。ショットと集中力が噛み合って主導権を握った。1エンドと2エンドにスチールを記録すると、5エンドから7エンドまでも3連続でスチールに成功。獲得した9点のうち8点がスチールという、先攻でも常に先手を奪う戦い方で頂点に立った。

 谷田は「素直にすごくうれしいです。まだちょっとふわふわしてるような夢みたいな気持ちでいます」、松村は「私は準決勝が1番緊張していて、決勝戦はもうすべてのものを出し切るだけだし、自分たちを信じて戦うだけだと思ってたのですごくいい緊張感といいリラックスで臨めました」、それぞれ喜びのコメントを口にした。

 準優勝の小穴・青木の小穴は「まずは本当に相手のナイスショットに拍手をしたいです」と涙を浮かべながら勝者を称え、「一投決まっても次が決まらなかったりとなかなかショットが続かなかった」と悔やんだ。青木も3エンドに早いウェイトで相手の石を2つ押し出すヒットロールを決めるなど見せ場は作ったが、「決勝独特の雰囲気に若干、飲まれたかなっていうのはあります」とコメント。常に4シートで同時に試合をしていた予選とは変わり、準決勝と決勝は1シートのみで行われる。雰囲気だけでいえばテニスでいう「センターコート」のようなものだろうか。

「ファイナルの雰囲気に慣れていかないといけない。僕は(札幌国際大学の)大学院でスポーツ心理学を専攻しているので、もう1回勉強し直そうかなって思っています」(青木)

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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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