新加入・相馬勇紀がついにフィットした町田 「6試合ぶり勝利」をもたらした新システム
FC東京戦の町田は相馬(左)、エリキ(右)ら「個」の強みが出た 【写真は共同】
町田は9月21日の第31節(町田 1△1 コンサドーレ札幌)まで首位を保っていたが、その後はサンフレッチェ広島やヴィッセル神戸に遅れを取っている。鹿島アントラーズ、ガンバ大阪にも追い上げられ、優勝はもちろん「3位」「AFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場」が危うくなっていた。
もちろん初昇格クラブの優勝争いは偉業で、8日の黒田剛監督の契約更新発表もサポーターの安心材料にはなるだろう。といいつつチームが強い不安、危機感に包まれていたことは間違いない。しかし町田は3-0で国立競技場の大一番を制し、出口の見えないトンネルから抜け出した。
必要だった「ミスを恐れない」「迷いのない」プレー
「なかなか勝ち点3をもたらせず、監督としてもかなりの不安を抱えていました。選手たちは正解が分かっていても、それを見失い、足踏みの続く状況が確かにあったと思います。探り探りやるのではなくて、しっかりと振り切って、ミスを恐れず果敢にチャレンジすることが必要でした」
町田の強みは攻守ともに躊躇せず、迷いなくプレーすることだ。ただ町田の強みを分析され、持ち味の消される展開が増える中で、個々の選手に迷いが生まれていた。
どのチームも「町田がプレスに来たらサイドに蹴って揺さぶる」「サイドでは縦を切って中に誘い込む」といった対応をしてくる。これは明らかに有効で、町田はなかなかその上を行く打開策を提示できていなかった。町田はカウンターからの得点が減り、逆にカウンターからの失点が増えていた。カウンターを避けようと意識した結果、今度は前に出る勢いが薄れ、攻撃の勢いも消えていた。
FC東京戦は修正が鮮やかにハマり、町田らしい思い切りと「いい守備からいい攻撃」という形が戻った。ほぼすべての試合を4バックで戦ってきた町田が、湘南ベルマーレ風の[3-1-4-2]でよみがえった。
FC東京は[4-2-1-3]の布陣で、センターFWのディエゴ・オリヴェイラとトップ下の荒木遼太郎が攻撃の軸になる。町田は3バックの中央に入ったDFチャン・ミンギュがオリヴェイラ、MF下田北斗が荒木へマンマーク気味についた。また相馬勇紀と白崎凌兵が2列目のシャドー(インサイドMF)に入り、FC東京の両ボランチと1対1の関係を作った。
[3-1-4-2]で攻守が機能
白崎(中央)も2点に絡む大活躍だった 【(C)FCMZ】
「今までの4バックから3バックにチェンジし、相手の特徴を消しながら、我々のストロングを出していこうと考えました。多少メンバーもいじりながら、彼らの特徴がしっかりと出る配置をして、今日のゲームに入れさせました」
センターバックが1枚増えたことで保険がかかり、結果的に躊躇(ちゅうちょ)も消え、守備の鋭い出足が復活した。相手と近い距離感から詰める守備がハマり、インターセプトやボール奪取からのカウンターが増えた。
左サイドバックの林幸多郎は振り返る。
「センターバックの選手がしっかりケアしてくれたので前に出られました。いつもとやり方が違ったのでズレは色々ありましたが、うまく声掛けをしながら思い切って行くシーンを多く出せたと思います」
FWの近くでプレーする選手が増えたことで、長身FWオ・セフンが競ったこぼれ球の回収率も上がった。ボランチからシャドーに移った白崎は、エリア内への飛び出しが有効で、1得点1アシストと結果も出した。
林はこう述べる。
「まず前線の選手がよく競ってくれて、手前に落ちるボールが多かったと思います。あとはシャドーを配置して真ん中の人数が多かったので、うまく(セカンドボールを)拾えたのもあります」
エリキは昨季のJ2でMVPに輝いたFWだが、今季はなかなか結果が出ず、直近の2試合はベンチからも外れていた。しかし新システムで前向きの仕掛け、近い距離感の崩しといった強みが生きた。町田が15分に挙げた1点目は、オ・セフンの競り合いからエリキがセカンドを収めてゴール右脇までボールを運び、白崎に合わせる形だった。
「すごくコンパクトになりますし、距離感がやりやすくなりました。自分の特徴もより出せる流れになりました」(エリキ)
町田にとってさらに大きかった発見は、相馬の「生かし方」だ。