インターハイ「夏のベスト4」が出揃う 玉田圭司監督率いる昌平は因縁の準決勝へ挑む

川端暁彦

今年の4強に残ったのは、神村学園、米子北、帝京長岡、昌平の4校 【撮影:川端暁彦】

ベスト8の激突の末に

 7月31日、全国高等学校総合体育大会(通称インターハイ)の男子サッカー競技は準々決勝を終え、ベスト4が出揃った。

 8強の内、高校年代最高峰のリーグ戦である高円宮杯プレミアリーグに所属するチームが7つを占めた今年の総体。実力と経験を兼ね備えるチームが揃い、白熱した攻防が展開された。

 午前中の試合では神村学園(鹿児島)が静岡学園(静岡)を3-0と圧倒し、米子北(鳥取)が市立船橋(千葉)に1-0と競り勝って4強進出を決定。また、午後の2試合はいずれもPK決着。帝京長岡(新潟)が青森山田(青森)を、昌平(埼玉)が桐光学園(神奈川1)をそれぞれPK戦の末に破っての準決勝進出となった。

 3回戦から全試合がJヴィレッジ開催となり、ちょっとしたフェスティバルといった雰囲気も出てきていた今年の総体。視察に訪れたスカウトにもさまざまなチームや選手をチェックできる集中開催は好評で、選手からも「いろいろなチームの選手と話もできて楽しい」といった声が聞かれた。

 運営本部の機能も集約できる意味も大きく、審判のやりくりなどを含め、さまざまな事態での融通も利くので、運営上のメリットも大きそうだ。ただ、それでも現場で運営に当たるのは、その多くが福島の高校の先生で、その負担感は小さくなさそうだった。

 中には「大変すぎますよ。来年のことを考えると気が重い」というボヤキ節を漏らす方もいた一方で、「めちゃくちゃ面白い。勉強にもなるし、いろいろな方と知り合えたり、昔の仲間と再会できたりして充実してます!」と目を輝かせて語ってくれる先生もいた。

 このあたりについては、福島固定開催への移管を含め、あらためて大会後に語ってみたい。

関東勢同士の激闘

PK戦を制して4強進出を決めて弾ける昌平イレブン 【撮影:川端暁彦】

 試合はさすが8強戦という実力伯仲の戦いの連続となったが、昌平と桐光の一戦は少々意外な流れでの決着だった。

「記事やSNSの声を読むと、皆さんの評価は低かったようなので」と桐光・鈴木勝大監督が憤然と話したように、外野の下馬評では昌平有利の声も多かったこの試合。だが、前半に関してはほぼ完全に桐光のゲームだった。

 CKとPKから2点を先行した桐光に対し、キーマンである主将のMF大谷湊斗がタフなマークで思うようにゲームへ加われなかった昌平は、ほとんど“らしさ”を発揮できず。攻撃陣が機能しないまま、ハーフタイムを迎えることとなっていた。

 そこに雷を落としたのは、今季から昌平を率いる元日本代表FWの玉田圭司監督だ。

「前半の出来を見ていて、負けを覚悟しましたよ」

 試合後、開口一番に新指揮官がそう振り返るほど、昌平のチームパフォーマンスは低調だった。

「一言で表してしまえば、スキがあったんでしょう。選手たちに聞いたら『ない』と答えるとは思いますが、どこかに『普通にやれば勝てるだろう』というのがあったんだと思います」

 ハーフタイムには戦術的な部分の整理を行いつつ、あらためて「気持ちの部分」を強調。激しい口調も混ぜながら伝えたのは、要するに「こんなもんじゃないだろ!」ということだった。

 選手交代も交えて臨んだ後半は、昌平が火のついたようなプレーを披露。どうしても2点のリードを守りたいという心理的な罠、「フットボールの難しいところ」(鈴木監督)にハマってしまった桐光を押し込み続けることになり、後半34分(35分ハーフ)に、試合途中からサイドバックに移っていたDF中松陽太が同点ゴール。試合を振り出しに戻すと、迎えたPK戦では全員が成功し、2人が外した桐光を退けての準決勝進出となった。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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