「戦えない」「決定力不足」? U-16代表に見る“脱・日本っぽさ”の時代
U-16日本代表の選手・スタッフたち。目指すは来年のU-17ワールドカップである 【撮影:川端暁彦】
お手本としての「自国のA代表」
「日本と違って我々(ベネズエラ)は戦うことをベースにしたチームだから、明日の試合は良い経験になると思うよ」
言われた日本の指揮官がまず思ったのは、日本のパブリックイメージが依然として「戦えないチーム」であるということ。そして、その印象を「変えてやる」という思いだった。
ミーティングでは早速選手たちにアラウホ監督の言葉を「伝達」し、こんなことを伝えた。
「あいつらに『日本は戦ってくるチームだ』と思わせてやろうぜ」
そのモデルになるのはシンプルにA代表。大人の“侍たち”である。
「いまのA代表はもうそうなっている。ガツガツ戦えて、それでいてクレバー。そうやって変えていかないといけない」
かつて年代別日本代表にチームとしてのロールモデルは希薄で、「監督によって全然違うチームになる」なんて揶揄(やゆ)されることもあったが、いまは違う。「手本」になる先達がいて、選手たちとのイメージ共有も「A代表の“お手本”になる映像を切り抜いて見せるだけでグッと理解が深まる」(廣山監督)ようになっている。
廣山監督の目指す「相手を見てクレバーに戦う」要素と、大前提として個人に求める「強度と球際」は、まさに世界で戦う憧れの日本代表選手たちが見せてくれているものだから話も早い。
「ブラジル代表のように」ではなく、「フランス代表みたいに」でもなく、「スペイン代表のマネをして」なんてこともなく、「日本代表のようにプレーしよう」というわけだ。
もちろんまだまだ課題もあるし、トップレベルとの距離もあるというのは確かなのだが、伝統国が当たり前に持っている「お手本が自国の代表」という領域に、日本も少し近づいていることをU-16代表の現場で実感できることである。
南米流「球際術」を体感
激しく競り合う日本とベネズエラの選手たち 【撮影:川端暁彦】
21日にU-16ベネズエラ代表と対戦したU-16インターナショナルドリームカップ第2戦は、そのための格好の舞台となった。「本当にこういう相手とやれるのはありがたい」と指揮官が笑顔で振り返ったように、序盤からガツガツと球際での勝負を挑み、日本では「来ない」ような距離感からタックルを飛ばし、競り合いを挑んできた。
「南米のチームとやるのは初めてだったんですけど、想定以上でした」
そう振り返ったのは中盤の中央で先発したMF野口蓮斗(サンフレッチェ広島ユース)。チーム屈指の技巧派MFが「最初は圧力に負けてしまう部分があった」と振り返るほど、日本の選手たちは南米流のプレッシャーに戸惑いを見せていた。
「だいぶやられてましたね」と笑った指揮官は心底嬉しそうで、選手たちが日本国内の大会では味わえない「基準」を体感しながら、「まだまだ反省点はありますけれど、向こうが『来た』中で最低限の戦いはできていた」と振り返る。
「最近の子どもたちはフィジカル的なところもだいぶ上がってきていますし、本当にまだまだ(競り合いが)下手ではあるんですけれど、五分五分のボールを体ごとガーッと持って行かれることもある。でも、それをマネして自分たちもやろうとしていましたよね。そういう経験値を得られる試合になりました」(廣山監督)
試合としては、相手のプレッシャーに対して日本が思うようにボールを運べない時間帯も長く、押し込まれる流れもあった。ただ、アラウホ監督が敗因に挙げたのは、「決定力の差が出た」ということ。チャンスの数ではベネズエラも悪くはなかったが、ゴール前で決め切ったのは、日本の方だった。