堀米雄斗の起死回生連覇に荒畑潤一もうなる “愛されスケーター”がストリートの伝説に

田中凌平

白井と小野寺も高難易度のトリックを連発

ベストトリック5本目で着地が乱れた白井だったが、晴れやかな笑顔はスケーターとしてやり切った証しだ 【Photo by Cameron Spencer/Getty Images】

 白井選手は腰の動きにメリハリがありますし、オーリーの高さがあってキレイだなと改めて感じました。「ソラグラインド」という自分の技があるくらいトリックの幅が広く、90点台を出せるトリックの引き出しの多さは魅力的です。

 今日の白井選手もさすがの滑りでした。ランもしっかり決めていましたし、ベストトリックの1本目はこの上ないくらい最高のメイクでした。さらに4本目の「アーリーウープバックサイド180フェイキー5-0グラインド」は、白井選手にしかできないトリックです。普通の縁石でも難しいのに、10段もある下りで成功させるのは信じられません。もし最後のトリックの着地で体重がもう少しつま先に乗ってメイクすれば、結果は変わっていたかもしれません。

熱中症の症状に苦しみながらも最後まで攻めた小野寺。予選落ちも14歳で得た経験は今後の財産になる 【Photo by Patrick Smith/Getty Images】

 小野寺選手は「熱中症のようになってしまった」とコメントしていましたが、14歳でオリンピックの場に立てることだけでリスペクトできます。小野寺選手なら確実にメイクできるトリックを持ってくれば予選通過もできたと思います。しかし、置きにいかず見たことないトリックに挑戦していたのが、スケーターとしてかっこよかったですね。

 階段で跳んだ「バックサイドフリップ」は飛距離も相当出ていて、レベルがものすごく上がっています。身体が大きくなるにつれていいスケーターになっていますが、それは相当練習しているからです。練習量が多いだけでなく、普段からものすごく難易度の高いトリックを練習しています。4年後のロサンゼルス五輪はまだ18歳なので、今の堀米選手が25歳だと考えるとこれからも期待できますね。

実力に加えて素晴らしい“人間性”が堀米の強み

 男子のスケートボードも大会ごとにレベルが上がっていると感じます。お互いに研究して、他のスケーター以上のトリックを決めないと勝てません。特に最高峰の試合が繰り広げられる五輪の大舞台ならなおさらです。これからもさらにスケートボードが進化して、世界を代表する日本人選手がどんどん出てくることを楽しみにしています。

 今回の試合を見て改めて感じましたが、スケートボードは上手いだけでは大成しないと思います。堀米選手のようにスター性があって、かっこよくて、礼儀正しくて、仲間のことも考えている――スケーターは、まず人間として素晴らしくあるべきだと思います。

 実際、堀米選手のことを悪く言う人を聞いたことがありませんし、多くの人から“愛されるスケーター”だからこそ、五輪連覇という偉業を成し遂げるほどに強くなれたと感じています。4年後はスケートボードの聖地・ロサンゼルスが舞台です。堀米選手が3連覇して「パリは通過点だった」と言ったりするとかっこいいですし、また新たな伝説が生まれてしまいますね。

荒畑潤一(あらはた・じゅんいち)

【株式会社SFIDA】

スケートボード歴36年の大ベテランであり、日本スケートボードシーンを牽引してきたパイオニアの1人。1995年、18歳で全日本チャンピオン(AJSA)を獲得。その翌年には渡米し武者修行をするなど、本場のスケート文化に心酔した。近年はスケートボードの普及活動に力を入れており、東京五輪やパリ五輪、XGamesのテレビ中継の解説をはじめとしたメディア出演や、次世代のキッズを育成するスケートボードスクールなども開催している。

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著者プロフィール

東京都出身。フリーライター。ラグジュアリーブランドでの5年間の接客経験と英語力を活かし、数多くの著名人や海外アスリートに取材を行う。野球とゴルフを中心にスポーツ領域を幅広く対応。明治大学在学中にはプロゴルフトーナメントの運営に携わり、海外の有名選手もサポートしてきた。野球では国内のみならず、MLBの注目選手を観るために現地へ赴くことも。大学の短期留学中に教授からの指示を守らず、ヤンキー・スタジアムにイチローを観に行って怒られたのはいい思い出。

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