ファンを黙らせ、流れをつかんだ「大谷の球音」 2試合連続本塁打でWS進出へ王手【NLCS第4戦】
10月17日(現地時間)に行われた、ドジャースとメッツによるナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)第4戦。ドジャースは、大谷翔平の先頭打者本塁打など計12安打を放ち、2-10で快勝。WS進出へ、王手をかけた 【写真は共同】
もっとも、そのメッツファンは、試合開始1分で静かになっている。
1ボールからの2球目。大谷が、ほぼ真ん中のシンカーを捉えると、乾いた打球音が球場内に響いた。117.8マイルという打球初速を記録し、それは大谷の本塁打の中でも10番目という痛烈なもの。柵を越えるのに要した時間はわずか4.5秒。打球角度が22度と低かったため、ひょっとしたらフェンス直撃かと思われたが、まったく打球が落下する気配がなく、そのまま右中間のメッツブルペンへ飛び込んでいる。
そのとき、シティ・フィールドは一瞬にして静まり返ったのだった。
※フォローすると試合の情報などを受け取ることができます。(Yahoo! JAPAN IDでログインが必要です)
詳しくはこちら
NLCS第4戦は、大谷翔平の先頭打者本塁打で幕を開けた。強烈な一閃に、血気盛んなメッツファンも黙るしかなかった 【Photo by Sarah Stier/Getty Images】
「プレーオフでは、試合の流れが大きな意味を持つ。そこではファンの声援も大きな要素になるが、あそこで翔平がファンを黙らせたことで、こっちが逆に有利になった」
ファンのため息が、メッツの選手に伝染した。
なお、このポストシーズンにおいて、走者なしでの安打は、26打席目で初めてとなっている。
同僚が語る、大谷の打球音の凄まじさ
「飛距離もまるで違う。ゴルフボールのようだった」
それを聞いて思い出したのが、ギャビン・ラックスの証言である。プレーオフが始まって間もない頃、内野の守備練習を終えたタイミングで話を聞くと、大谷の打球を「ショットガンのよう」と形容した。
「彼の打球音は、目をつぶっていてもわかる。室内ケージでも音が違うから、そこに向かっているとき、音だけで誰が打っているかわかる」
それを聞いてまた思い出した。かつて、べーブ・ルースの孫にあたるトム・スティーブンスさんから、こんな話を聞いたことがあったのである。
「祖父が本塁打を打つと、球場の外にいても、『あぁ、ルースがホームランを放ったんだな』と分かったそうだ。打球音が、他の誰よりも凄まじかったから」
それをラックスに伝えると、「大げさではないと思う」とうなずいた。
「そうであっても、不思議ではない」
何気ないことだが、音だけでこれだけ話が広がるのも、大谷ぐらいではないか。