池江璃花子は戦い続けるーー 100mバタフライ準決勝で敗退した彼女が「次」に向けて語ったこと

大島和人

池江は100mバタフライの準決勝で個人種目を終えた 【写真は共同】

 準決勝を終えた池江璃花子は完全燃焼とは言い難い、何か「引っかかった」様子で、メディアの前に現れた。

 パリオリンピックの競泳女子100mバタフライ予選4組目に登場した彼女は57秒82を記録し、全体14位で準決勝に進出。しかし準決勝は57秒79で1組目6位(全体12位)にとどまり、決勝進出を逃した。

 100mバタフライは池江がパリ五輪で唯一エントリーしている個人種目。同種目は17歳の平井瑞希が好調で、29日の決勝進出を決めている。池江はリレー種目出場の可能性を残しているが、400mメドレーリレーの出場は後輩に譲る可能性が高い。パリ五輪における最終レースとなる可能性もあり、間違いなく大きな区切りだった。

「16歳の自分」を超えられず

 準決勝の彼女はかなり積極的なレースを見せた。前半は2位争いに絡み、50mのターンからしばらくは「期待」を感じる力泳だった。しかしゴール間際で失速し、予選からほとんど記録を伸ばせなかった。

 池江は自らの泳ぎについてこう説明する。

「予選のときに自分のスプリント力を生かしたかったレースができなかったので、前半はしっかり攻めようと思いました。後半も持つ練習はやってきたつもりだったので、前半から突っ込みました。内容はわからないですけど、ずっと『決勝進出』『16歳の自分を超える』という気持ちでやってきましたけど、このような形で自分の個人種目が終わってしまったのは、すごくショックです」

 池江が持つ100mバタフライの日本記録は18歳で記録した「56秒08」で、16歳のリオデジャネイロ五輪は「56秒86」を記録している。同大会は自由形も含めて7種目に出場し、100mバタフライは一種目で日本記録を3度も叩き出した。怖いもの知らずの新鋭だった時期だ。

彼女が語った悔いと、自分への疑問

レースを終え、ライバルに慰められる池江 【写真は共同】

 もっとも、3大会連続で五輪出場を果たしている現状は、素晴らしい偉業でもある。池江は日本大学に入学した直後の2019年2月に白血病と診断されたことを公表し、約10ヶ月の入院生活も経験した。東京五輪が2021年に延期されたことで復活・復調がぎりぎり間に合い、彼女は同大会でリレー3種目に出場している。なお、個人種目は8年ぶりの登場だった。

「個人種目で泳げたことは、一つ良かったことだと捉えています。ただリオが終わったとき、16歳のときには言っていたのですが『オリンピックは出るだけではつまらない』という気持ちでここまで来ましたが、やはり決勝に残らないと戦いは始まりません。スタート台には立てたけど、戦えずに終わってしまった気持ちです」

 池江は心の底から悔しそうだった。

「この10月から拠点を変えて、もう本当に一生懸命練習して、すごく頑張ってきたつもりだったけど『この約1年間の努力は何だったのだろう?』という結果がこうして出てしまいました。悔しい気持ちと、自分に対して『なぜできなかったんだろう?』という疑問、『なぜ(苦しい練習を)やってきたのにできなかったのか?』という気持ちでいっぱいです」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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