堀米雄斗の起死回生連覇に荒畑潤一もうなる “愛されスケーター”がストリートの伝説に
大逆転となるトリックを決めて雄叫びを上げる堀米。五輪連覇という偉業を成し遂げた 【写真は共同】
白井は3位、堀米は4位で予選を通過するが、ジャガー・イートン(米国)とナイジャ・ヒューストン(米国)の得点をなかなか超えることができなかった。堀米は最後のベストトリックで96.98を超えないと連覇の可能性が閉ざされる中、この日最高得点の97.08を叩き出し、大逆転優勝を飾った。
五輪連覇を目指す堀米、東京五輪の雪辱を果たしたい白井、世界ランク1位の重圧を背負う小野寺――それぞれが異なる想いで挑んだパリ五輪。その想いは滑りにどのように表れたのだろうか。18歳で全日本チャンピオン(AJSA)を獲得し、日本スケートボードシーンを牽引してきたパイオニアの荒畑潤一さんに白熱の試合を振り返ってもらいつつ、堀米の魅力について解説してもらった。
後がない場面で完璧に決める堀米の“強さ”
ジャガー・イートン(左)、ナイジャ・ヒューストン(右)の出来が良かっただけに、堀米の金メダルはとてつもない価値を持つ 【Photo by Cameron Spencer/Getty Images】
最後のトリックに至るまでを見ても、決勝の1本目のトリックも素晴らしい出来でした。堀米選手があまり大会で出したことのない「ノーリーバックサイド180フェイキー5-0グラインド」でしたが、動きも着地も完璧でした。ランでも1本目に89.90を出しましたし、ベストトリックの1本目も94.16でメイクしたので、これがラストにつながるいい流れを生みましたね。
それまで上位にいたアメリカのイートン選手と堀米選手の差は、ほんのわずかでした。もしイートン選手のベストトリックの4本目がキレイにメイクしていたら結果は違っていたかもしれません。これを成功させる人は初めてというくらいのトリックでした。
3位になったヒューストン選手は、「勝ちにいく滑りをしている」「攻めていない」などと悪く言われたり、洋服を批判されたりすることもありました。それでも気合いを感じるかっこいい滑りをするので、私は1人のスケーターとして心を打たれましたね。他にもコルダノ・ラッセル選手(カナダ)の圧巻のベストトリックなど、堀米選手の最後のトリック以外にも興奮と感動が止まらない最高峰の試合でした。