MLBポストシーズンレポート2024

「PS得点圏打率.833」チャンスに強すぎる大谷翔平 勝負を決める本塁打の裏側【NLCS第3戦】

丹羽政善

10月16日(現地時間)に行われた、ドジャースとメッツによるナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)第3戦。ドジャースは、大谷翔平が八回に試合を決定づける3ランを放つなど、投打がかみ合い0-8で快勝した 【Photo by Rob Tringali/MLB Photos via Getty Images】

 筆者は10月14日(現地時間、以下同)の第2戦が終わって、翌朝5時15分出発の便で、ニューヨークへ移動。午後3時45分、ラガーディア空港に着いて、そのままメッツの本拠地シティ・フィールドへ車で移動したが、夏の暑さが残るロサンゼルスから4500キロ移動した先は、すっかり秋、いや、初冬だった。第4戦、試合開始時の気温は10度。ロサンゼルスとは10度も違う。しかも風が強いので、体感はさらに低い。

 ドジャースのリリーフ投手、アンソニー・バンダは、渋い表情だった。「ブルペンには暖房も入っている。でも、そこにずっといると、肩を作り始める時に寒く感じるから、ある程度は外気に体を慣らしておく必要がある。その作業そのものが久々だから、そこが厄介かな」。

 選手らは第2戦終了後、午後7時27分にロサンゼルス空港を出発。翌朝午前3時29分、ニューアーク空港に到着し、マンハッタンまでバスで移動。部屋に入ってベッドに横になれたのは、午前6時ごろか。午後4時35分から会見に応じた大谷翔平(ドジャース)は、「さっきまで寝ていた」と話し、実際、寝起きのような声だった。

「まだ今も眠い」

 第3戦に向けては、「きょう、明日の睡眠が試合のパフォーマンスの中で大事」と話し、続けている。「質よりどれだけ寝たかを僕は気にしているので、寝れば寝るほど自分の中ではいい」。

八回に飛び出した大谷の特大本塁打

0-4で迎えた八回、大谷翔平はライトポールを超える特大の3ランを放った 【Photo by Daniel Shirey/MLB Photos via Getty Images】

 実際、大谷はよく寝られたよう。しかし、“寝覚め”は遅かった。

 最初の4打席は3打数無安打、1四球だったが、全て走者なしの場面。これでプレーオフに入ってから、走者なしでは22打数無安打となった。不思議なもので、大谷の目の前で打線が切れたり、本塁打が出たりして、ことごとく走者がいなくなる。

 そのことは九番を打つキケ・ヘルナンデスも意識していた。「もちろん、塁に誰もいない場合と、いる場合の違いは知っていた。だから、なんとか翔平に打順を回そうと思っていた」。

 よって、1打席、2打席と凡退したとき、「自分自身に腹が立った」と振り返っている。六回の3打席目も、「なんとか大谷に回そう」としてホームランを打ってしまったのは、ヘルナンデスらしい。

 八回の4打席目は、ようやくヒットを放ち、スムーズに繋いだ。

 1死一、二塁。走者なしの時とは対照的に、ポストシーズンに入ってから走者がいる場合は8打数6安打。得点圏では5打数4安打という大谷。史上初の「50-50」を達成した9月19日のマーリンズ戦から数えて、得点圏では19打数16安打(打率.842)で、さすがにいつまでも同じ傾向が続くとは思えなかったが、タイラー・メギルの2球目――内角低めのカッターを捉えた打球は、高々と右翼ポール付近に上がった。

 入るのか? 切れるのか? 大谷も少しの間打席で体を傾けて打球の行方を追っていたが、着弾する前にフェアと確信したのか、三塁ダグアウトに向けて左手の人差し指を立てて、ゆっくりと走り出した。

大谷翔平は打球の行方を見守り、本塁打を確信すると、三塁ダグアウトに向けて指を立てた 【Photo by Luke Hales/Getty Images】

「ちょっと高く上がった。ただ、入るなとは思いました」と大谷。

 打球はポールの上を通過しており、メッツがリプレイを求めたのは当然だったが、やがて一塁塁審のビル・ミラーが、クルクルと指を回した。

「通過地点は内側だったので、ホームランだなとは思っていました」

 筆者の席はその逆――レフトポール際だったが、その上を打球が超えていくホームからの距離感は、写真からもイメージできるのではないか。

メッツの本拠地シティ・フィールドのレフトポール 【筆者撮影】

 その打球について、五回からマウンドに上がって勝ち星を挙げたマイケル・コペックが振り返った。

「翔平の打球は強いから、切れる前にスタンドに入ってしまう」

 弱い打球であれば、スピンに負ける。しかし、115.9マイルという打球初速が、回転に負けない打球となった。

1/2ページ

著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント