プロ野球12球団戦力分析(2024)

充実の戦力で連覇に向けて突き進む阪神 不安要素は「レギュラーと控え選手の格差」?

データスタジアム株式会社

村上頌樹は新人王とMVPの同時受賞を果たし、日本一の立役者となった。 【写真は共同】

 いよいよシーズン開幕が目前となったプロ野球。1934年の日本プロ野球誕生から90周年のメモリアルイヤーとなる今季、覇権を奪うのはどのチームになるだろうか。春季キャンプ、練習試合を含めた実戦を経て、各チームとも一軍メンバーが固まりつつあるが、もちろん1年間を戦うには開幕一軍入りを逃した選手の存在や若手の突き上げも必要不可欠だ。そこで今回のコラムでは各チームの昨季の「ポジション別得失点貢献」をもとに、新シーズンを戦ううえでのポイントや展望を確認していきたい。貢献度に使用する選手評価は、野手の打撃をwRAA(Weighted Runs Above Average)、守備にはUZR(Ultimate Zone Rating)。投手はRSAA(Runs Saved Above Average)を用いている。いずれもリーグ内の平均的な選手と比較して、打撃・守備・投球でどれだけ得失点に貢献しているかを示した指標であり、本稿ではそれぞれ同一ポジションの平均的な選手と比較している。なお、RSAAの計算式で使用される失点率は実際のものではなく、守備の影響を排除したtRA(True Run Average)を使用している。

 今回、評価に活用した2つの指標(wRAA、RSAA)は、スポーツナビがプロ野球の週間MVPを選出する企画でも活用しており、指標の解説を以下リンクから確認できる。

※本文は2024年3月20日時点の情報をもとに執筆。

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質と枚数ともに充実した先発陣

【データスタジアム株式会社】

 昨季は38年ぶりの日本一に輝いた阪神。その原動力となったのが先発投手陣で、得点貢献度はリーグトップの23.5を記録した。新人王とリーグMVPの同時受賞というNPB史上3人目の離れ業をやってのけた村上頌樹を筆頭に、2ケタ勝利を達成した伊藤将司と大竹耕太郎の両左腕、18先発で防御率1.87をマークした才木浩人といった面々が大きなプラスを生み出した。昨季は成績が落ち込んだ青柳晃洋と西勇輝もシーズン終盤やポストシーズンでは復調した姿を見せており、今季もこの6人によって盤石なローテーションを形成することができるだろう。後に続く投手の中ではビーズリーの存在が大きい。昨季は先発と救援いずれの役割でも好成績を残しており、主力に有事があった際に、その穴を埋める働きが期待できる。

  次世代の育成という点に目を向けると、2年目の門別啓人が注目を集めている。昨季終盤には高卒ルーキーながら一軍のマウンドを経験しており、この春もキャンプからアピールを続けている。ローテーションの谷間などで一軍登板を重ね、今季を飛躍の足がかりとしたいところだ。また、高卒5年目の及川雅貴も主力先発陣の牙城を崩そうと意気込んでいる。オープン戦ではセットポジション時に打ち込まれるなど課題も残しているが、昨季リリーフとして残した成績を見ても、一気にブレークするだけのポテンシャルは備えている。

左腕を中心とした強力リリーフ陣

守護神・岩崎は昨季のセーブ王に輝いた。今季はゲラとクローザー争いを繰り広げる可能性も? 【写真は共同】

 救援陣も先発陣と同様に戦力は充実しており、昨季の得点貢献度は13.8でリーグ2位を記録した。特に左腕の層が厚いのが特徴で、昨季のセーブ王である岩崎優をはじめ、岩貞祐太、桐敷拓馬、島本浩也といった頼れる存在がそろう。一方の右腕も加治屋蓮と石井大智の2人が安定した投球を見せた。その他にも戦力として期待が持てる選手は多い。真っ先に名前が挙がるのが新助っ人のゲラ。キャンプやオープン戦ではここまで上々の内容を見せており、シーズンでの活躍次第では岩崎に代わって最終回を任される可能性もあるだろう。

 若手の中では岡留英貴にブレークの兆しが見える。2年目の昨季に一軍デビューを果たし、日本シリーズの舞台を経験するなど、シーズン終盤は戦力として活躍した。春季キャンプでは岡田監督からMVPに選ばれ、ここまでのオープン戦でも好投を続けており、飛躍が期待される存在だ。最後に、不振からの脱却を目指す湯浅京己の動向も気になるところ。実戦での登板は重ねているものの、安定感を欠いており、現在は二軍で調整を続けている。復調すればブルペンにとって大きなプラスアルファとなるだけに、コンディションを整えて完全復活を果たしたい。

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日本で唯一のスポーツデータ専門会社。 野球、サッカー、ラグビー等の試合データ分析・配信、ソフト開発などを手掛ける。

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