2023プロ野球・スポーツナビ週間MVP

プロ野球・スポーツナビ週間MVP 指標となる「wRAA」「RSAA」を説明

データスタジアム株式会社
 週間MVPランキングでは、打者は「wRAA(weighted Runs Above Average)」、投手は「RSAA(Runs Saved Above Average)」という指標を用いている。どちらも「Runs=得点」「Above Average=平均より上」の名称が示す通り、「リーグの平均的な選手と比べてどれだけ得点を増減させたか」を表したもので、算出にあたっては各プレーの「得点価値」がベースとなっている。ここでは、この「得点価値」を中心に、各指標を簡単に説明したい。

得点価値とは

 得点価値は、「単打」や「四球」といった各プレーが、平均的にどれだけ得点を増減させるかを数値化したものだ。得点価値を算出するための前段階として、まずはアウトカウントと走者状況ごとに、そのイニングが終わるまでに平均で何得点するかを求める必要がある。これを得点期待値と呼び、2022年のNPBでは下表の通りである。

【データおよび画像提供:データスタジアム】

 例えば、ある試合のある打者がイニング先頭で単打を放ったとする。この場合、得点期待値は0.39(無死走者なし)から0.74(無死一塁)に上昇したため、差分の0.35がこの単打の価値となる。他の全ての単打についても同じように得点期待値の差分を集計していくと、2022年のNPBにおける単打の得点価値が0.42と求まる。この要領で、各プレーの得点価値を算出している。

 投手の場合は、各プレーが平均的にそれだけの確率でアウトになるかの計算も行う。これにより、味方の守備力の影響を受けずに、投球内容から見込まれるアウト数が求められる。例を挙げると、2022年のNPBにおける外野フライ打球のアウト確率は70.6%である。

 こうして算出した得点価値やアウト確率を実際の成績に掛け合わせていくことで、「リーグの平均的な選手と比べてどれだけ得点を増減させたか」を求めることができる。なお、打者は単打・二塁打・三塁打・本塁打・四球・死球・失策出塁、投手は本塁打・四球・死球・三振・ゴロ・内野フライ・外野フライ・ライナーを対象に計算している。

注意点

 RSAAは失点率をベースに算出する場合もあるが、週間MVPランキングでは「tRA(true Runs Allowed)」という指標をベースとしている。

 RSAAとwRAAは、ともに点差や走者状況などのシチュエーションは考慮しない指標である。各プレーの得点価値は、あくまで「そのプレーで増減した得点期待値の平均」を画一的に適用しているため、起死回生の逆転サヨナラ満塁本塁打であっても、10点リードからのソロ本塁打であっても、得点価値は等しく1.40(2022年NPB)である。同様に、1-0のしびれる投手戦を制した完封勝利も、10-0の大差がついた試合での完封勝利も、投球内容が同一であれば評価は等しくなる。

 そのため、殊勲打の多さや緊迫した場面での投球などは評価できないが、そもそもそういったシチュエーションで出番が回ってくるかは、チーム状況や巡り合わせに大きく左右される。2023年の週間MVPランキングでは、選手にはコントロールできない要素よりも、プレー内容そのものを評価するために、これらの指標を採用している。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

日本で唯一のスポーツデータ専門会社。 野球、サッカー、ラグビー等の試合データ分析・配信、ソフト開発などを手掛ける。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント