プロ野球12球団戦力分析(2024)

苦しい台所事情が予測されるヤクルト 巻き返しに向け、若手の躍進に期待

データスタジアム株式会社

昨年は5位に終わったヤクルト。再度の飛躍に向け、複数ポジションに挑戦している内山など、若手の成長が不可欠だ 【写真は共同】

 いよいよシーズン開幕が目前となったプロ野球。1934年の日本プロ野球誕生から90周年のメモリアルイヤーとなる今季、覇権を奪うのはどのチームになるだろうか。春季キャンプ、練習試合を含めた実戦を経て、各チームとも一軍メンバーが固まりつつあるが、もちろん1年間を戦うには開幕一軍入りを逃した選手の存在や若手の突き上げも必要不可欠だ。そこで今回のコラムでは各チームの昨季の「ポジション別得失点貢献」をもとに、新シーズンを戦ううえでのポイントや展望を確認していきたい。貢献度に使用する選手評価は、野手の打撃をwRAA(Weighted Runs Above Average)、守備にはUZR(Ultimate Zone Rating)。投手はRSAA(Runs Saved Above Average)を用いている。いずれもリーグ内の平均的な選手と比較して、打撃・守備・投球でどれだけ得失点に貢献しているかを示した指標であり、本稿ではそれぞれ同一ポジションの平均的な選手と比較している。なお、RSAAの計算式で使用される失点率は実際のものではなく、守備の影響を排除したtRA(True Run Average)を使用している。

 今回、評価に活用した2つの指標(wRAA、RSAA)は、スポーツナビがプロ野球の週間MVPを選出する企画でも活用しており、指標の解説を以下リンクから確認できる。

※本文は2024年3月17日時点の情報をもとに執筆。

※リンク先は外部サイトの場合があります

チーム最大の弱点である先発陣。故障者の復帰なしでは厳しい建て直し…

ヤクルト投手:2023年得点貢献度 【データスタジアム株式会社】

 昨季は12球団ワーストの防御率を記録した投手陣。中でも先発投手の得点貢献度は-63.3と大きな課題となっており、ローテーションの建て直しがチームの浮上に必要不可欠な状況だ。複数年に渡ってローテーションを守っている小川泰弘、サイスニードの2本柱は今季も頼りになる存在だが、小川は故障で離脱しており開幕には間に合わない見込み。加えて、オフには昨季100イニング以上を投げて防御率3.22を記録したピーターズが退団しており、上位進出には複数の投手の台頭が求められる。しかし、奥川恭伸や山下輝が肘に不安を抱えているほか、ドラフト1位ルーキーの西舘昂汰も故障で春季キャンプは二軍スタートになるなど、コンディションに不安を抱えている投手が多く、厳しい見通しとなっている。

 そうした中、2021年からのリーグ2連覇に貢献した高橋奎二の復調が求められるところ。昨季は防御率4.60と不振だったが、その要因は過去のシーズンと比較して、自慢のストレートの球威が低下していたところにある。今季は本来の直球を取り戻せるかが復活のカギを握る。次に、2年目を迎える吉村貢司郎にも期待がかかる。ルーキーイヤーの昨季は4勝にとどまったが、ここまでの対外試合で17イニングを投げて3失点、15奪三振2四球と優れたピッチングを続けている。このほか14試合に先発して防御率3.05を記録した小澤怜史や、通算185勝の大ベテラン・石川雅規、ロドリゲスとヤフーレの両助っ人、社会人出身ルーキーの松本健吾などの候補が挙がるが、長いイニングを任せられる投手が非常に少ないのが現状である。

固定されつつあるブルペン陣と成長を見せる移籍組

クローザーとして定着した田口ら、移籍組がヤクルトのブルペン陣を支えている 【写真は共同】

 リリーフ陣はリーグ平均を上回るような強みには至っていないものの、勝ちパターンは充実した布陣となっている。昨季20ホールド以上をマークした星知弥や木澤尚文、清水昇といった面々がセットアッパーを担い、クローザーには33セーブを挙げた田口麗斗が座る。また、22年シーズンにロッテから加入した山本大貴、昨季ソフトバンクを戦力外になった嘉弥真新也がオープン戦で好投を見せている。ヤクルトでは近年、今野龍太や小澤など、他球団出身の投手が移籍を機にブレークを遂げるケースが多い。今季は西武からトレードで加入した宮川哲や、巨人から移籍して2年目を迎える育成選手の沼田翔平らの飛躍にも期待がかかるところだ。

 昨季はオールスター以降の後半戦では、リーグ2位の救援防御率を記録するなど、着実にブルペンの選手層は厚くなっている。一方で、試合後半のリードを守るために優れた投手をブルペンで待機させても、先発投手が相手にリードを渡してしまっては勝利から遠ざかってしまう。先発投手の穴があまりに大きすぎるため、リリーフから先発への配置転換、オープナーやブルペンデーといった采配を積極的に検討したい選手構成といえるだろう。

1/2ページ

著者プロフィール

日本で唯一のスポーツデータ専門会社。 野球、サッカー、ラグビー等の試合データ分析・配信、ソフト開発などを手掛ける。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント