盤石の陣容の王者・神戸、目立つ大阪勢の積極補強…J1リーグ全20クラブの補強診断【後編】
名古屋からG大阪に移籍した中谷進之介。新天地ではさっそくゲームキャプテンを務めるなど、中心的な役割を担っている 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
※情報は2月20日時点
※【IN】のチームのカテゴリーは23年シーズンのもの
※【IN】【OUT】は戦力の+・−が分かるように、契約上の移動ではなく“体の移動“を記載
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補強禁止が解けて助っ人4人を一気に獲得
〈アルビレックス新潟〉
補強診断:E/戦力ランキング:72点(14位)
昨シーズン:10位
監督:松橋力蔵(3年目)
【IN】
MF 小野裕二 ←鳥栖(J1)
MF 宮本英治 ←いわき(J2)
MF 長谷川元希 ←甲府(J2)
MF 奥村仁 ←関西福祉大(新人)
MF 石山青空 ←新潟U-18(新人)
DF 遠藤凌 ←いわき(J2)
DF 森璃太 ←早稲田大(新人)
GK 吉満大介 ←山口(J2)
【OUT】
FW グスタボ・ネスカウ →未定
MF 三戸舜介 →スパルタ・ロッテルダム(オランダ)
MF 高宇洋 →FC東京(J1)
MF シマブク・カズヨシ →藤枝(J2)
MF 吉田陣平 →讃岐(J3)
DF 渡邊泰基 →横浜FM(J1)
DF 田上大地 →岡山(J2)
GK 瀬口拓弥 →引退
昨季はシーズン序盤に旋風を巻き起こし、J1復帰1年目にして10位でフィニッシュ。結果・内容ともに見事だった。しかし、ゲームキャプテンの高宇洋、パリ五輪代表の主軸である三戸舜介、配置転換によって開花したセンターバックの渡邊泰基と、躍進の立役者が一気に退団。昨夏にはファンタジスタの伊藤涼太郎も海を渡っており、戦力ダウンが著しい。
鳥栖から1トップでも2列目でもプレーできる小野裕二を獲得したが、補強選手の中でJ1経験者は小野だけ。甲府から加入した長谷川元希は昨季J2で7得点6アシストをマークして満を持してのJ1挑戦となるが、上のカテゴリーでどれだけ活躍できるかは未知数だ。
その点で鍵を握るのが、松橋力蔵監督の手腕だろう。浦和で燻っていた伊藤を覚醒させたように、タレントの能力を引き出す術に長けている。長谷川やいわきで右サイドバックとして躍動した宮本瑛治、さらには既存の戦力である21歳の小見洋太、22歳の松田詠太郎らがグッと伸びてくる可能性はありそうだ。補強診断としては厳しい評価にならざるを得ないが、若く魅力的なチームとなる伸び代を秘めている。
〈ジュビロ磐田〉
補強診断:C/戦力ランキング:70点(17位)
昨シーズン:J2・2位
監督:横内昭展(2年目)
【IN】
FW マテウス・ペイショット ←アトレチコ・ゴイアニエンセ(ブラジル)
FW ウェヴェルトン ←ニューイングランド・レボリューションⅡ(USA)
FW 石田雅俊 ←大田ハナシチズン(韓国)
MF ブルーノ・ジョゼ ←グアラニ(ブラジル)
MF レオ・ゴメス ←ヴィトーリア(ブラジル)
MF 中村駿 ←福岡(J1)
MF 平川怜 ←熊本(J2)
MF 川﨑一輝 ←讃岐(J3)
MF 植村洋斗 ←早稲田大(新人)
DF 西久保駿介 ←千葉(J2)
DF 高畑奎汰 ←大分(J2)
DF 朴勢己 ←東邦高(新人)
GK 坪井湧也 ←神戸(J1)
GK 川島永嗣 ←無所属
GK 杉本光希 ←立正大(新人)
【OUT】
FW 後藤啓介 →アンデルレヒト(ベルギー)
FW ファビアン・ゴンザレス →甲府(J2)
FW 吉長真優 →讃岐(J3)
FW 大津祐樹 →引退
MF 大森晃太郎 →ムアントン(タイ)
MF 鈴木雄斗 →湘南(J1)
MF ドゥドゥ →千葉(J2)
MF 針谷岳晃 →福島(J3)
MF 山本康裕 →松本(J3)
MF 遠藤保仁 →引退
DF 高野遼 →相模原(J3)
GK 梶川裕嗣 →鹿島(J1)
GK 八田直樹 →引退
1年間の補強禁止という極めて重い処分を受けながら、見事にJ1復帰を果たした今オフ、積極的な補強を敢行した。ファビアン・ゴンザレスとドゥドゥを放出し、4人のブラジル人選手を一気に獲得して陣容を大幅に刷新。なかでも新得点源として期待されるのが、マテウス・ペイショットだ。190cmの高さを生かしたゴール前での迫力あるプレーに加え、守備においても献身的だと評判だ。トップ下を務める山田大記や金子翔太との相性も良さそうだ。
昨季、固定し切れなかったボランチはヴィトーリアからやって来たレオ・ゴメスが務めそう。一方で、熊本で復活した“天才”平川玲は従来のトップ下だけでなく左サイドハーフでも試されており、山田や金子、藤川虎太朗や古川陽介とのポジション争いにも注目が集まる。
J1初挑戦となる横内昭展監督にとって心強いのが、14年ぶりに国内復帰した元日本代表GK川島永嗣の存在だろう。近年は所属クラブでの出場機会がほとんどないのが気がかりではあるが、40歳のベテランGKのプロフェッショナリズムはピッチ内にとどまらず、ピッチ外でも好影響をもたらすはずだ。
〈名古屋グランパス〉
補強診断:C/戦力ランキング:79点(6位)
昨シーズン:6位
監督:長谷川健太(3年目)
【IN】
FW パトリック ←京都(J1)
FW 山岸祐也 ←福岡(J1)
MF 椎橋慧也 ←柏(J1)
MF 小野雅史 ←山形(J2)
MF 中山克広 ←清水(J2)
MF 榊原杏太 ←立正大(新人)
MF 倍井謙 ←関西学院大(新人)
MF 鈴木陽人 ←名古屋U-18(新人)
DF ハ・チャンレ ←浦項(韓国)
DF 山中亮輔 ←C大阪(J1)
DF 三國ケネディエブス ←福岡(J1)
DF 成瀬竣平 ←水戸(J2)
DF 井上詩音 ←甲府(J2)
GK ピサノ・アレクサンドレ幸冬堀尾 ←名古屋U-18(新人)
【OUT】
FW 貴田遼河 →アルヘンティノス・ジュニアーズ(アルゼンチン)
FW 前田直輝 →浦和(J1)
FW 中島大嘉 →藤枝(J2)
MF 山田陸 →長崎(J2)
DF 森下龍矢 →レギア・ワルシャワ(ポーランド)
DF 藤井陽也 →コルトレイク(ベルギー)
DF 丸山祐市 →川崎F(J1)
DF 中谷進之介 →G大阪(J1)
日本代表に選出され、クラブの顔となった藤井陽也と森下龍矢の流出には、長谷川健太監督も頭を抱えたに違いない。守備陣では藤井だけでなく、丸山祐市と中谷進之介も退団し、チームの一時代を築いた3バック全員が同時にチームを去ることになった。近年、負傷の影響で出番を減らしていたベテランの丸山は構想外の形だが、藤井と中谷が移籍した今となっては、丸山と契約延長していてもよかったかもしれない。
彼らに代わる守備陣としては福岡から三國ケネディエブス、韓国の浦項からハ・チャンレがチームに加わる。三國は福岡で定位置を取り切れなかったが、192cmの恵まれた体躯を誇り、ポテンシャルは十分。一方、ハ・チャンレは攻撃の起点となれるセンターバックで、長谷川健太監督が惚れ込んだ逸材だ。
守備陣の顔ぶれには不安もあるが、C大阪から加わった山中亮輔と清水から加入した中山克広の両翼は、戦術面において今季のカギを握りそうだ。また、福岡で2年続けて二桁得点をマークした山岸祐也、Jリーグでのプレー経験も10年を超え、G大阪時代に長谷川監督のもとでプレーしたパトリックを獲得するなど、キャスパー・ユンカーのパートナー確保にも抜かりがない。就任3年目、長谷川監督もリーグ制覇に燃えている。
〈京都サンガF.C.〉
補強診断:C/戦力ランキング:71点(15位)
昨シーズン:13位
監督:曺貴裁(4年目)
【IN】
FW マルコ・トゥーリオ ←セントラルコースト(オーストラリア)
MF 鈴木冬一 ←ローザンヌ(スイス)
MF 塚川孝輝 ←FC東京(J1)
MF 安齋悠人 ←尚志高(新人)
DF 宮本優太 ←浦和(J1)
DF 松田佳大 ←水戸(J2)
DF 鈴木義宜 ←清水(J2)
DF 喜多壱也 ←京都U-18(新人)
DF 飯田陸斗 ←京都U-18(新人)
GK ファンティーニ燦 ←福島(J3)
【OUT】
FW 木下康介 →柏(J1)
FW パトリック →名古屋(J1)
MF 山田楓喜 →東京V(J2)
MF 三沢直人 →甲府(J2)
MF 荒木大吾 →岐阜(J3)
DF 井上黎生人 →浦和(J1)
DF イヨハ理ヘンリー →広島(J1)
DF 植田悠太 →大宮(J2)
GK 若原智哉 →長崎(J2)
レギュラークラスの放出を最小限に食い止め、ピンポイント補強で戦力を上積みした印象を受ける。懸案だった両サイドバックに迎え入れたのは、いずれも曺貴裁監督の教え子たちだ。鈴木冬一は湘南時代に、宮本優太は流通経済大時代に指揮官の薫陶を受けており、そのイズムを知る選手たち。ふたりとも豊富な運動量で上下動を繰り返し、クロスを蹴り込む“ザ・サイドバック”だ。
清水からやって来た鈴木義宜は危機察知能力が高く、攻撃の起点にもなれるセンターバック。井上黎生人が抜けた穴を埋めるだけでなく、リーダーシップも期待できる。FC東京から獲得した塚川孝輝はアンカーとしてもインサイドハーフとしても計算できそうだ。
未知数なのが、新助っ人のマルコ・トゥーリオ。ポルトガルのスポルティングでもプレー経験のあるこのブラジル人ストライカーがフィットすれば、昨季7ゴールの原大智、同じく10ゴールの豊川雄太、両ワイドアタッカーの輝きもより一層増すことだろう。
〈ガンバ大阪〉
補強診断:B/戦力ランキング:71点(15位)
昨シーズン:16位
監督:ダニエル・ポヤトス(2年目)
【IN】
FW ウェルトン ←レフスキ・ソフィア(ポーランド)
FW 山下諒也 ←横浜FC(J1)
FW 坂本一彩 ←岡山(J2)
MF 山田康太 ←柏(J1)
MF 鈴木徳真 ←C大阪(J1)
MF 岸本武流 ←清水(J2)
MF 美藤倫 ←関西学院大(新人)
DF 中谷進之介 ←名古屋(J1)
DF 松田陸 ←甲府(J2)
DF 坂圭祐 ←大分(J2)
DF 今野息吹 ←法政大(新人)
GK 一森純 ←横浜FM(J1)
GK 張奥林 ←G大阪ユース(新人)
【OUT】
FW 鈴木武蔵 →札幌(J1)
FW 山見大登 →東京V(J2)
FW 塚元大 →金沢(J2)
MF 山本悠樹 →川崎F(J1)
MF 杉山直宏 →山形(J2)
DF クォン・ギョンウォン →水原FC(韓国)
DF 高尾瑠 →札幌(J1)
DF 佐藤瑶大 →浦和(J1)
DF 柳澤亘 →徳島(J2)
DF 藤春廣輝 →琉球(J3)
GK 市川暉記 →横浜FC(J1)
16位に沈んだ昨季の汚名返上の意気込みが伝わってくる。主力クラスの流出は川崎Fへと移籍した山本悠樹のみ。その穴を埋めるべく、徳島でのダニエル・ポヤトス監督の教え子である鈴木徳真を獲得した。同じく徳島時代に重用された右のスペシャリスト・岸本武流を迎え入れ、ポヤトススタイルの浸透に余念がない。
昨季後半に柏の攻撃陣を牽引した山田康太、名古屋の守備リーダー・中谷進之介の獲得に加え、期限付き移籍から復帰したふたりも戦力アップをもたらしそう。横浜FMでフルシーズンゴールマウスを守った一森純は言うまでもなく、岡山で武者修行を積んだU-20日本代表の坂本一彩もダニエル・ポヤトス監督の評価が高く、レギュラーポジションを射止めそうな勢いだ。
宇佐美貴史やイッサム・ジェパリ、ネタ・ラヴィらがベンチを温めかねない状況は、競争原理においては素晴らしいが、彼ら実力者が控えに回ることを納得させられるかどうか。スペイン人指揮官の人心掌握とマネジメントが問われることになりそうだ。