“通”たちが語る「奥深きスポーツ漫画の世界」

未来の日本代表ストライカーが語る『ブルーロック』の魅力 FC東京の熊田直紀「馬狼照英に自分の姿が重なる」

飯尾篤史

U-20ワールドカップにも出場した19歳の熊田直紀。結果がすべてと言い切る強いメンタリティと豪快なシュートが魅力なストライカーだ 【飯尾篤史】

 日本がW杯で優勝するために必要な“最強のストライカー”を育成すべく、集められた高校生ストライカーたちが生き残りを懸けて競い合うサッカー漫画――それが『ブルーロック』だ。Jリーガーからも人気が高いが、FC東京の熊田直紀もその世界観に惚れ込むひとりだ。ポテンシャルあふれるFWが語る『ブルーロック』の魅力と、自身のストライカーとしての矜持とは?

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馬狼が這い上がっていくシーンが好き

――『ブルーロック』を好きになったきっかけは?

 オフに福島に帰省したとき、兄に薦められて一緒にアニメを観たのがきっかけで、そのあと漫画も読みました。『ブルーロック』はストライカー育成がテーマで、自分もFWなので、自分視点になれるところが面白いですね。

――潔世一(いさぎ・よいち)、蜂楽廻(ばちら・めぐる)、凪誠士郎(なぎ・せいしろう)、糸師凛(いとし・りん)……と、たくさんのストライカーが登場しますが、なかでも馬狼照英(ばろう・しょうえい)が好きだそうですね。今年3月のU-20アジアカップでも、馬狼のゴールセレブレーションを真似していましたよね。

 雰囲気が好きなんですよ。「俺が俺が」っていう王様なところも好きだし、一番ストライカーらしいキャラクターだし、ストイックさがあるところが好きです。性格も自分に一番近いと思いますね。

――好きなシーンや印象に残っているシーンはどこですか?

 やっぱり二次選考で3対3をするところですね。潔と凪と馬狼の3人が組んで、そこで1回、馬狼が「おれは王様(キング)じゃなかったんだ」って沈んで。でも、そこから覚醒するところ、這い上がっていくところが好きです。

――そうじゃないかと思っていました(笑)。あそこで馬狼が潔に「下手くそ」って言われて主役の座から下ろされて、パスを出そうとするんだけど、覚醒していく。

 弾き(チョップ)ドリブルっていう新しい武器を手にして、復活するんですよね。あそこはいいですね。

――あのシーンで馬狼は、潔と凪によって脇役に追いやられた。このまま蹴落とされてしまうのかなっていう不安はありました? 「馬狼、大丈夫かな?」みたいな。

 いや、なんとなく変わっていくんだろうな、っていうのは感じていました。馬狼がこのまま終わるわけはないだろうなって。

――チーム内で、『ブルーロック』の話をする選手はいますか?

 話はしないですけど、土肥(幹太)はたぶん、読んでますね。

小さい頃のほうが尖っていた

『ブルーロック』7巻の表紙を飾る馬狼照英。「一番ストライカーらしい選手」とは熊田評 【YOJI-GEN】

――ブルーロックプロジェクトの全権を握る絵心甚八(えご・じんぱち)が「サッカーにおいて得点を奪うのは相手の組織を破壊する行為、つまりストライカーとは破壊者だ」と言いますが、その言葉には共感できますか

 プロの世界では現実的ではないかもしれないですけど、自分は共感できますね。ストライカーは馬狼みたいに悪役でいい。嫌われようが結果がすべて。ストライカーはそういうタイプのほうがいいんじゃないかって自分は思います。

――熊田選手自身も子どもの頃からずっとストライカーだったんですか?

 そうですね。FWしかやってこなかったんで。今よりも小さい頃のほうが尖っていました。口も悪かったし(苦笑)。小さい頃は自分も馬狼のように、王様みたいな感じでしたね。

――馬狼が「自分と同じようにサッカーに命をかけてた人間を、自分の手で主役の座から引きずり下ろす快感のためにサッカーをしてる」と語るシーンがありますが、そこも共感できる?

 子どもの頃の回想シーンですよね。さすがにそれはないです(笑)。

――プロの世界では現実的ではない、とのことですが、裏を返せば『ブルーロック』は昔の自分だったり、ストライカーとして大事なものを思い出させてくれる部分もある?

 ありますね。モチベーションにもなるし。今は「俺が俺が」っていうエゴ丸出しのプレーをしようにも実力が伴ってないんで、できないんですけど、もっと力を付ければ、馬狼みたいになれるんじゃないかって。「点が欲しければ、俺に出せ」って。そこは理想像としてありますね。

――その理想像を目指して、ストライカーの道を極めたい?

 ストライカーとしてずっと生きていきたいですけど、例えば、海外でプレーするとなったら、違ったポジションもできないといけない。一番はストライカーですけど。違うポジションもやれるように、とは思っています。

――熊田選手にしては、珍しく弱気ですね。

 いや、弱気とかじゃなくて、違うポジションもできたほうがいいなって。東京でもウイングで起用されることがありますから。

――なるほど。それが段々プロらしくなっていくというか、大人のプレーヤーになっていくということだと思います。一方で、トゲがなくなっていく自分に対して寂しさを感じたりもしますか?

 それはそうですけど、全部なくなることはないと思います。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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