23年J1・J2「補強・戦力」を徹底分析!

京都、湘南、昇格組の新潟にサプライズの可能性も キャンプに密着した識者3人によるJ1展望座談会

飯尾篤史
 日々Jリーグを追いかけ、このオフも精力的にキャンプ取材を行った3人の識者、河治良幸氏、青山知雄氏、池田タツ氏(プロフィールは文末を参照)による、2023年シーズンのJ1リーグ展望座談会。AクラスとBクラスについて評価してもらった前編に続き、後編では残りのBクラスとCクラスについて、各チームの戦力を分析していただく。
●Aクラス予想(※並び順は北から)
河治:浦和、川崎F、横浜FM、C大阪、広島、鳥栖

青山:浦和、FC東京、川崎F、横浜FM、C大阪、広島

池田:浦和、FC東京、川崎F、横浜FM、広島、鳥栖


●Bクラス予想(※並び順は北から)
河治:札幌、鹿島、柏、FC東京、名古屋、G大阪

青山:鹿島、柏、名古屋、G大阪、神戸、鳥栖

池田:札幌、鹿島、名古屋、京都、G大阪、C大阪


※詳しくは前編をご確認ください。

補強した選手の粒が一番大きいG大阪

チュニジア代表FWジェバリなど有力助っ人を獲得したG大阪。今季から「7番」を背負うエース宇佐美の負担も軽減されるだろう 【Photo by Masashi Hara/Getty Images】

──続いて、みなさんがBクラスに入れたガンバ大阪(昨季15位)を見ていきましょう。

青山 ガンバはAクラスにも上がれるし、Cクラスに落ちる危険性もあると思っていて。徳島ヴォルティスからポゼッションスタイルを掲げるダニエル・ポヤトス監督を呼びましたが、それによってボールを繋ぐことが目的のサッカーになるのではなく、ちゃんとゴールから逆算したボール回しができるかどうかで、順位も変わってくるでしょうね。

 ただ、前線にチュニジア代表のイッサム・ジェバリ(←オーデンセ)、ボランチにイスラエル代表のネタ・ラヴィ(←マッカビ・ハイファ)が加わったことで、これまで多くの役割を託されていた宇佐美貴史の負担は軽減されるでしょうね。去年は大きな怪我もあって、シーズンをほぼ棒に振った宇佐美ですが、背番号を「7」に変え、キャプテンも務める今シーズンは、かなりやるんじゃないかと見ています。

河治 純粋に、補強した選手の粒が一番大きいですよね。正直に言うと、最初はCクラスにしようかとも考えたんですが、オフの補強で軸となるような選手が3、4人入ってきて、宇佐美におんぶに抱っこのチームではなくなった。ポヤトスさんのサッカーが完成するにはまだ時間がかかるでしょうが、去年のFC東京のように、完成しない中でもそれなりの結果は出すんじゃないかと思います。

池田 これまでのガンバは、良い意味でも悪い意味でも宇佐美の存在感が大きすぎましたが、ここ数年でかなり若手が台頭してきた。昨シーズンの山本理仁(21歳)、中村仁郎(19歳)に加え、このオフには湘南ベルマーレから谷晃生(22歳)を呼び戻し、モンテディオ山形からはパリ五輪世代の半田陸(21歳)も獲得した。新しいガンバを作っていく彼らがベテラン勢を脅かし、チーム内に良い切磋琢磨が生まれれば、僕はAクラス入りもあると思っています。

 ただ、一番大きかったのは、確実に点が取れるジェバリを獲得できたこと。得点王になってもおかしくない力があるし、鈴木武蔵あたりもかなり触発されているようですよ。

小林が札幌にもたらすインテリジェンス

神戸から札幌に完全移籍した小林(写真手前)。クリエイティビティに富んだプレーで、ミシャ・サッカーにプラスアルファをもたらしそうだ 【Photo by Etsuo Hara/Getty Images】

──続いて北海道コンサドーレ札幌(昨季10位)ですが、唯一Bクラスからも外した青山さんから、その理由を聞かせてください。

青山 まず、どうやって点を取るのかなっていうのがあって。確かに中島大嘉などブレイクを期待したいタレントはいますが、高嶺朋樹(→柏レイソル)、興梠慎三(→浦和レッズ)、ガブリエル・シャビエル(→未定)といった中心選手がいなくなり、点を取れるイメージが湧かないんです。パリ五輪世代の馬場晴也(←東京ヴェルディ)の獲得とGKク・ソンユン(←金泉尚武)の3年ぶりの復帰で、後ろは安定すると思うんですけどね。

河治 僕は逆に、FWのメンバーには可能性しか感じない。エース格の小柏剛はもちろんですが、中島も興梠のプレーを見て学び、チームのために働きながら個人としてスペシャルな部分も出せるようになってきています。さらにキム・ゴンヒの高さを生かす形も持っている。確かに絶対的なストライカーがいないので、僕もBクラス止まりにしましたが、逆にフィニッシュの部分さえ上手く行けば、ACL出場権を争ってもおかしくない。

 その大きな根拠の1つが、小林祐希(←ヴィッセル神戸)の存在ですね。彼を獲得したことで、札幌の攻撃にインテリジェンスが加わった。ミシャさん(ミハイロ・ペトロヴィッチ監督)のサッカーって、ときにオートマティックに振れすぎてしまう傾向があるんですが、小林がいればそこにクリエイティブな変化を与えられる。

 あとは、馬場ですね。本人はセンターバック(CB)で勝負したいんでしょうけど、前向きにボールを奪いに行けるプレースタイルを考えても、僕は中盤で使って、小林とコンビを組ませた方が覚醒する可能性が高いし、チームとしてもより多くのチャンスを作っていけると思っています。

池田 韓国人の2人、キム・ゴンヒとク・ソンユンがしっかり活躍すれば、全然Aクラスもありえますよ。FWに関しては、みなさんが推す中島よりも、僕はキム・ゴンヒに期待していて。キャンプを見ていても、凄すぎましたから。彼をシーズンの頭から使えるのは、札幌の最大の強みでしょうね。

 このオフに獲ってきた選手はみんな有能で、僕が再三言っている「クラブ力」も高い。練習試合では、小林、馬場の新戦力2人が、誰よりもミシャさんのサッカーを体現していたくらいですから。

河治 ミシャ・サッカーがベースにある上で、そこにプラスアルファを加えられるのが、その2人ですよね。

池田 まさにそう。特に小林はシャドーもボランチもできるから、その幅の広さは札幌にとって大きいと思いますね。馬場に関しては、僕は1トップをやってもいいんじゃないかって思うくらい、シュート力がエグい(笑)。セカンドボールを拾って、ミドルをズトンに期待したいですね。

──その札幌から高嶺を獲得した柏(昨季7位)はどうですか?

河治 柏は、現時点では良くも悪くも計算できない選手が多いですよね。去年のレギュラーの半分くらいが変わりそうで、高嶺も含めた新戦力がどの程度フィットするか、蓋を開けてみないと分からないところがある。

青山 確かに、未知数すぎますよね。上手くハマらなければ残留争いに巻き込まれる可能性もある。特に最終ラインから、キャプテンシーを持った選手たちがごっそりいなくなってしまったのは心配です。大谷秀和も引退したし、誰がチームリーダーになるのかなって。大谷はコーチに転身しましたけど、ピッチ内に「柱」が見当たらない。例えば、山田康太(←モンテディオ山形)がJ1でどんなプレーをするのかとか、楽しみな選手は多いんですけどね。

河治 ワクワク感はあるんですよ。ただ戦えるチームかと言われると、本当に古賀太陽なんかが覚醒してメンタルリーダーになっていかないと、厳しいかもしれませんね。

池田 僕が柏をCクラスにしたのは、ディフェンスラインに不安があるから。まったくもって駒不足だし、なかでも高橋祐治(→清水エスパルス)がいなくなったのは、柏にとって最大の痛手でしょう。昨シーズンも、彼のところで全部はね返していましたからね。

 攻撃に関しても、細谷真大がどこまでやれるのかという懸念があります。昨シーズンも序盤戦は良かったけど、終盤戦でペースダウンしましたからね。

河治 いい補強はしているんですよ。オランダ人FWのフロート(←ヴィボー)なんかは、浦和にやってきた頃のユンカーみたいに、チームに新たな側面をもたらしてくれるかもしれない。

池田 柏のプラス要素は、“鳥栖味”があるということですね。小屋松知哉と仙頭啓矢のコンビとか、三丸拡やジエゴなど、かつて鳥栖で一緒にプレーした選手が多いこと。それぞれの特徴を分かり合っているのは大きいと思いますね。あとは、GKの佐々木雅士。僕は今シーズンのブレイクを予想していて、活躍次第ではA代表に呼ばれてもおかしくないタレントだと思っています。シュートストップはもちろん、足元も上手いので、ポゼッションをベースとする“鳥栖味”のあるサッカーをすれば、間違いなく彼は生きるでしょうね。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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