23年J1・J2「補強・戦力」を徹底分析!

2強に迫るのは浦和、広島、FC東京か? キャンプに密着した識者3人によるJ1展望座談会

飯尾篤史

王者・横浜FMは、昨季MVPの岩田が移籍した穴をどう埋めるかがテーマの1つだ。パリ五輪世代の逸材・藤田の成長にも期待したい 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 2023年シーズンのJ1リーグが、2月17日に開幕する。日本代表の快進撃に沸いたカタール・ワールドカップ直後のシーズンだけに、例年以上の盛り上がりは間違いないだろう。さらに今季は、J2降格が1チームのみという特別なシーズン。はたしてそれが、各チームの編成にどのような影響を及ぼしているのだろうか。ここでは、精力的にJリーグを取材する3人のジャーナリスト、河治良幸氏、青山知雄氏、池田タツ氏(プロフィールは文末を参照)に登場を願い、18チームをA、B、Cとクラス分けしてもらった上で、開幕を目前に控えた各チームの状況について話をうかがった。

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「クラブ力」が最も優れている横浜FM

──今年もJリーグの開幕が近づいてきましたが、今回は各クラブのキャンプを精力的に取材されてこられた3人のジャーナリストの方にお集まりいただき、新シーズンのJ1を展望していきたいと思います。事前にみなさんには、18チームをAクラス、Bクラス、Cクラスに分けていただいていますが、まずAクラスから見ていくと、昨シーズンの上位2チーム、横浜F・マリノスと川崎フロンターレは、3人とも順当にトップ6に入れていますね。

●Aクラス予想(※並び順は北から)

河治:浦和、川崎、横浜FM、C大阪、広島、鳥栖

青山:浦和、FC東京、川崎、横浜FM、C大阪、広島

池田:浦和、FC東京、川崎、横浜FM、広島、鳥栖


河治 チャンピオンチームの横浜F・マリノスには、継続性がベースにありますよね。ですから、ここから「変化」するというよりも、昨シーズンのチームをベースに、どう「進化」していけるかがポイントになってくると思います。

 ただ、チームの屋台骨を背負っていた岩田智輝(→セルティック)が抜けたのは大きい。正直、J1MVPの穴を埋められる選手なんて、簡単には見つかりませんから。そこを1人じゃなくてチーム全員でカバーする、あるいは岩田にはないプラスアルファを、例えば藤田譲瑠チマのような選手がもたらしていけるかでしょうね。

青山 昨シーズンのF・マリノスは毎週のようにスタメンが変わりましたが、誰が出てもそれぞれの良さが上手く噛み合っていました。それでも岩田や、起用法にかかわらず高い決定力を見せていたレオ・セアラ(→セレッソ大阪)、さらに仲川輝人(→FC東京)も含め、チームの根幹を成すような選手たちが抜けたのは、ちょっと不安ですね。今のJ1は選手層が厚くないと勝ち上がれませんから、余計に彼ら主力の穴をどう埋めるのかは気になるところではあります。

河治 ただ昨シーズンも、ここまでやるとは思わなかったような選手、例えば西村拓真なんかがものすごくいい働きをしたじゃないですか。個人的にV・ファーレン長崎から加入した植中朝日は、そういう存在になりうると見ていますし、センターバック(CB)の上島拓巳(←柏レイソル)もポテンシャルはとても高い。期待値込みになりますが、補強に関してはプラスの要素もなくはないと思います。

青山 大分トリニータから加入の井上健太も、あの右サイドからの突破は面白そうです。だから計算は立ちにくいけれど、河治さんが言うように期待値込みで、彼らがF・マリノスに来てどう成長していくのか、見守っていきたいですね。

──タツさんは、今シーズンのF・マリノスをどう見ていますか?

池田 僕が何よりも重視するのは「クラブ力」なんです。結局、単純な選手のイン&アウトだけでは今の時代、予想は難しい。そのクラブがシーズン中にどんな補強するかだとか、コーチングスタッフを含めたクラブ全体の力、そういったものが順位予想の骨子になると思っていて、その点で最も優れているのが、F・マリノスなんです。このチームは、シーズン中に必ず足りないところを埋める素晴らしい補強をしますからね。それはもう何年も続いていて、決して偶然ではありません。

 もちろん岩田が抜けたのはきついですけれど、クラブ力を考えれば、僕は優勝候補の筆頭かなという気もしています。

川崎の宮代は「ここでやらなきゃ……」

L・ダミアンや小林が怪我で出遅れる川崎。開幕ダッシュを決められるかどうかは、3年ぶりの復帰となった宮代の働きぶりにかかっている 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

──なるほど。では、対抗馬となりそうな川崎はどうでしょう?

河治 僕は(中下位チームに)食われる可能性もあると見ています。最終ラインの柱だった谷口彰悟(→アル・ラーヤン)が抜けたことに加え、前線に怪我人が相次いでいることもマイナス材料。ボールを持てるチームだし、止める・蹴るはみんな上手いんですけれど、前線に迫力をもたらしていた選手たち、レアンドロ・ダミアン、家長昭博、小林悠といったところが軒並み出遅れているので、そこを控え選手たちがどこまでカバーできるかでしょうね。特に3年ぶりに復帰した宮代大聖(←サガン鳥栖)には期待していて、ことシュート力に関しては、彼は日本一だと思っていますから。

青山 登里享平と大島僚太が怪我なく順調にきていたのは、ポジティブな材料でしょうね。あの2人が万全でいてくれれば、間違いなく川崎のクオリティは担保されますから。あと、宮代の話が出ましたけれど、言ってみれば、彼にとってこんなチャンスはないわけじゃないですか。「ここでやらなかったら男じゃない」くらいの意気込みでやってくれると思っています。

 それから、高卒ルーキーの名願斗哉(←履正社高)。見ていて本当に面白い選手ですよね。紅白戦でも左サイドからのカットインプレーなど、持ち味をしっかりと出していましたし、これも期待値込みなんですが、1年目からチャンスは結構あるんじゃないかと。そこで一発決めれば、一気に「ネクスト三笘薫」にもなれるかもしれません。

池田 今年の川崎は新しいことにトライしていて、特に攻撃時の動き方がこれまでとはかなり違うんです。だから正直、全選手が付いていけているかと言ったらそうではないんですが、山根視来なんかは「久々に新しいことをやって、すごく刺激的で楽しい」と話していましたし、チームとして前向きに取り組んでいる印象を受けました。現体制も7年目と長くなりましたが、鬼木達監督が優秀だなと思うのは、こうして常に新しい刺激を入れて、チームを停滞させないところなんです。

 選手では宮代、名願に加えて、京都サンガF.C.から加入したGKの上福元直人にも期待しています。もちろんチョン・ソンリョンのシュートストップは凄いんですけれど、何回もボールに関わって、作り直して、みたいなビルドアップの部分では、上福元が一歩リードしている。このオプションを得たのは相当大きいんじゃないかな。

 あと僕は、大島が全試合に出場するくらい、シーズンを通して良好なコンディションを維持できれば、普通に川崎が優勝すると思っています。彼は別格の選手ですから。

──宮代、名願の印象は?

池田 名願は手足が長いモデル体型で、相手より先にボールに触れるリーチがある。同じ左サイドだし、プレーを見ていても三笘を彷彿とさせますね。宮代については、青山さんもおっしゃっていましたが、ここで燃えないわけがないでしょ、ってことです。L・ダミアンも小林もいない序盤戦は特に、彼が前線を引っ張ってくれないと。

浦和の新監督に就任したスコルジャは、前任者ロドリゲスのサッカーをベースに新たなチームを構築。継続性をもたらしている点は特筆に値する 【写真:共同通信社】

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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