23年J1・J2「補強・戦力」を徹底分析!

京都、湘南、昇格組の新潟にサプライズの可能性も キャンプに密着した識者3人によるJ1展望座談会

飯尾篤史

京都が取り入れるW杯のトレンド

昨季はプレーオフの末に残留を果たした京都だが、Bクラス入りは十分にありうる。キーマンはアンカーを務める21歳の川﨑だ 【西村尚己/アフロスポーツ】

●Cクラス予想(※並び順は北から)
河治:横浜FC、湘南、新潟、京都、神戸、福岡

青山:札幌、横浜FC、湘南、新潟、京都、福岡

池田:柏、横浜FC、湘南、新潟、神戸、福岡


──と言いながら、タツさんは柏をCクラスにしていて(笑)、代わりに京都サンガF.C.(昨季16位)を唯一Bクラスに推していますね。

池田 ダークホースですね。去年はプレーオフに回りましたけど、チームとしてやりたいことはずっとできていたし、成長もしている。それでも結果が出なかったのは、ピーター・ウタカ(→ヴァンフォーレ甲府)がコロナになって、点が取れなくなってしまったからなんです。曺貴裁監督に鍛えられた選手たちは、判断力が高くて、どんな状況にも対応できる。FWの選手がしっかり決めてくれれば、僕は普通にBクラス入りがあると思っています。

 新戦力で面白そうなのが、谷内田哲平(←栃木SC)ですね。京都の速いテンポのサッカーの中で、彼は唯一チェンジ・オブ・ペースができる存在。シュートもパスも技術レベルが圧倒的だし、この谷内田が上手くハマったら、京都は結構やるんじゃないかと。

青山 だけど去年の京都を支えていた選手たちが、ごっそり出て行ったじゃないですか。特にGKの上福元直人(→川崎フロンターレ)、左サイドバック(SB)の荻原拓也(→浦和レッズ)なんかが抜けた後ろが大丈夫なのかなって。一方で期待するのが、キャプテンに就任した川﨑颯太。彼がこのチームの核にならなきゃいけないし、日本代表の未来を考えても、なってもらわないと困る。アンカーとして、すでに中盤で潰す役割はできていますが、作る部分、例えば川崎の大島僚太くらいにボールを捌けるようになれば、京都にも上位に食い込むチャンスは出てくる。

池田 曺さんはカタール・ワールドカップ(W杯)を見て、トレンドも取り入れていますよ。それは「臨機応変さ」という部分で、これまでは川崎をアンカーに固定してきましたが、最終的には中盤の3枚をフラットに並べて、誰がアンカー役になってもいいよ、という形にまで持っていこうとしている。そうなれば、川﨑がゴール前に顔を出すシーンも増えてくるでしょうね。

河治 川﨑はここで京都の核となって、チームを上位に押し上げる中心的な存在にならないと。パリ五輪世代のアンカーは、藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス)や松岡大起(清水)などもいて、競争が激しいポジションですからね。

 あとは荻原の抜けた左SBと、ウタカがいなくなった前線の穴を埋められるかどうかでしょう。左SBでは個人的にアカデミー出身の植田悠太に期待しています。Jリーグ全体を見てもこのポジションは人材が不足していますし、若手が伸びてきてほしいという期待も込めて。

──ヴィッセル神戸(昨季13位)は、青山さんだけがBクラスに入れていますね。

青山 僕も最初はCクラスにしていました(笑)。選手は揃ってるんですけど、ベテランが多いから、練習の強度がなかなか上げられないみたいなんです。

 ジェアン・パトリッキ(←セレッソ大阪)と汰木康也のいる左サイドは面白いし、昨シーズンを怪我で棒に振ったセルジ・サンペールもすでに練習に合流していて、前線には大迫勇也、武藤嘉紀がいて、アンドレス・イニエスタも少し落ちてはきたけどまだまだ健在。こうした個の力を融合して、組織力に高められるかどうかなんですが、その意味で問われるのは、選手たちをマネジメントするコーチ陣の技量だと思っています。ベテラン選手のフィジカルコンディションをいかにキープするか。これができなければ、開幕ダッシュに失敗した昨シーズンと同じ轍を踏む危険もあるでしょうね。

河治 戦力がちょっといびつすぎるというか、レギュラー陣が怪我などでいなくなった時に、チームが変わりすぎてしまうんですね。個人戦術への依存がすごく大きいチームだから、若手がベテランの穴を簡単にはカバーできない。もちろんポテンシャルの高い若手もいますが、結局チーム戦術の共有レベルが低いから、彼らもすっと試合に入って行けないんです。小田裕太郎(→ハーツ)とか、アカデミーからいい選手も育ってきてはいるんですけど、それをトップチームに上手く組み込めていない印象がありますね。

池田 吉田孝行監督は、いわゆる“修理屋”であって、“建築家”ではないので、チームビルディングの部分がかなり心配です。あとは、小林友希(→セルティック)、郷家友太(→ベガルタ仙台)、ボージャン・クルキッチ(→未定)、小田など、主力級の人材がかなり出て行ってしまったことも不安材料ですね。

河治 なにより郷家が出て行ったという事実が、現在の神戸を象徴していると思います。今後チームの核になるはずだった彼を、結局チームとして育てきれなかったわけですからね。

池田 徳島ヴォルティスにレンタルで出している櫻井辰徳(21歳)だって、なぜ呼び戻さないのか、分かりませんね。個人的に、大好きな齊藤未月(←G大阪)には頑張ってもらいたいですけどね。

湘南の選手層は過去最高クラス

例年と比べて多くの主力を残せた湘南だけに、少なくとも降格の心配はないか。ただし、エースの町野は夏に欧州へ渡る可能性がある 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

──まだ触れていないのは、3人ともCクラスとした湘南ベルマーレ(昨季12位)、アビスパ福岡(昨季14位)、アルビレックス新潟(昨季J2優勝)、横浜FC(昨季J2の2位)の4チームですね。まず、湘南から話していきましょう。

池田 「クラブ力」ということを考えた場合、この20年にわたって湘南を支えてきた水谷尚人社長が去ったダメージは、相当に大きいと思います。戦力的には例年に比べても多くの主力を残せたとは思うけれど、僕はフロントの安定感のなさが露呈するシーズンになるんじゃないかと見ています。

青山 僕はハマれば、Bクラスの上の方まで行けるポテンシャルは十分にあると思っていて、特に日本代表の町野修斗が残留し、得点感覚に優れた山下敬大(←FC東京)も加わった前線は、結構やるんじゃないかと。それに後ろも永木亮太(←名古屋グランパス)が戻ってきて、杉岡大暉も完全移籍で残ってくれたし、選手層で言えば過去最高クラスと言っていいかもしれません。人格者として知られる山口智監督のもとで、湘南らしい一丸となった戦いができれば、少なくとも降格の心配はないでしょう。

河治 僕が個人的に注目しているのは、小野瀬康介。同じくガンバOBで兄弟みたいな関係性の山口監督のもとで、もう一度輝きを取り戻してくれるんじゃないかって期待しています。それから、新守護神のソン・ボムグン(←全北現代)。彼はJリーグ史上最強のGKになれるだけの器ですよ。そうやって見ていくと、全体的にタレントの粒はそろっていますし、町野に続き、プラスアルファの要素をもたらせるストライカーが現れれば、課題の得点力不足も解消できると思います。

 東京五輪出場を逃した悔しさを成長の糧にしてくれそうな杉岡も含めて、こうして個々を見ていけば本当に楽しみは多いんですけど、ただチームとして見た時には、いろんなことがすべて上手く回らないと、なかなか厳しいんじゃないかなって。町野もシーズンを通して湘南で戦ってくれる保証はありませんしね。

池田 町野に関して言うと、湘南は海外で勝負したい選手がいて、そのタイミングが来たと判断したら、積極的に欧州に送り出そうとするクラブですからね。夏に彼がいなくなる可能性は、十分にあると思いますよ。

2/3ページ

著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント