2023シーズンJ1戦力ランキング “3強”以外にもポテンシャルが大きいチームが多い

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 お届けするのは、2023シーズンのJ1全18クラブの戦力ランキングだ。「攻撃力」「守備力」「選手層」「監督力」「完成度」という5項目について各20点満点で採点し、その合計ポイントによって導き出した。あなたが応援するクラブは、果たして何位に入ったか?
(企画・編集/YOJI-GEN)

※ランキング上位と寸評コラムはスポーツナビアプリでご覧いただけます

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解説

マリノスの攻撃力を満点評価にできない理由

現時点の評価では、ディフェンディングチャンピオンの横浜Fマリノスがトップ。MVPの岩田ら主力数人が抜けたが、DF上島の加入や成長が見込める若手の存在などポジティブな要素も少なくない【Photo by Masashi Hara/Getty Images】

 昨シーズン優勝を果たした横浜F・マリノスが戦力値では頭1つ抜けており、合計ポイントは唯一の90オーバーとなった。MVPを獲得した岩田智輝がスコットランドのセルティックに移籍した穴は簡単には埋められないが、藤田譲瑠チマをはじめ中盤は充実しており、山根陸のようなアカデミー出身の成長株もいる。またバックラインは、柏レイソルから加入した上島拓巳が順調にマリノスの戦術を吸収している様子だ。

 今年からACL(AFCチャンピオンズリーグ)のグループステージが9月開始と遅くなることもあり、ルヴァンカップで若手を使いながらチーム作りができる。そうした意味で、選手層に関しては昨シーズンより事実上アップして戦う環境が整っている。自慢の攻撃力は満点の「20」をつけてもよかったが、レオ・セアラ(セレッソ大阪へ)や仲川輝人(FC東京へ)の移籍に加えて、新戦力の植中朝日はまだ期待値込みという部分もあり、現状評価として「19」にした。待たれるのが、昨シーズンに大怪我を負った宮市亮の完全復活だ。

 ケヴィン・マスカット監督が就任3年目で、Jリーグをよく知っていることもマリノスの強みだ。「自分たちのサッカー」を貫くと言っており、対戦するチームによってスタイルを変えることはない。他チームの対策が進むとしても、一方で相手がどんな手を打ってくるか事前に予測できるというメリットもある。攻撃的なチームだが、ほとんどハーフコートに押し込むことで、守備の安定度も引き上げる相乗効果が期待できる。

 GK高丘陽平のMLSバンクーバーへの移籍(脱稿時点では未契約)は、ヴィッセル神戸を退団していたベテラン飯倉大樹の復帰によって、その穴が完璧に埋まるわけではないだろう。しかし、J3の鹿児島ユナイテッドに期限付き移籍していた白坂楓馬など、成長著しい若手にチャンスを与える好機であり、経験豊富で、明るいキャラクターでも知られる飯倉の存在も頼もしい。ただし、攻守の要だった岩田が抜けた事実と合わせて、特にディフェンス面は注視していく必要はある。

広島は得点数の大幅増が見込める

広島の攻撃陣には上積みが見込める強力な外国籍選手に加えて、ブレイク候補の棚田(写真)もいる。昨シーズンはマリノス、川崎に差をつけられた得点数は大幅に増えるのではないか【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 総合2位の川崎フロンターレはキャプテンだった谷口彰悟のカタール移籍に加えて、レアンドロ・ダミアン、小林悠、家長昭博と攻撃陣の主力が相次いで負傷した影響も、選手層の評価(17)に反映した。谷口のリーダーシップをすぐに埋めることは不可能でも、守備面は新戦力の大南拓磨やアカデミーから昇格したU-20日本代表候補の高井幸大に期待したい。彼らの奮闘次第で、「16」にした守備力が「18」くらいに上がってもおかしくない。ただ、現時点でそれは期待値だ。

 監督力は鬼木達監督の実績と手腕を評価して「20」にした。2020シーズンに用いた4-3-3を再び導入したように、就任7年目にして新たなチャレンジに取り組んでおり、あえて完成度を「18」にとどめたが、逆に言えば伸びしろがあると捉えられる。総合評価はマリノスより3ポイント低い「89」だが、チームが新たなサイクルに入ったことを考えても、王座奪還は十分に射程圏内だ。

 3位はサンフレッチェ広島で、トップ3は昨シーズンの順位通りの並びとなった。しかしながら筆者は、広島はマリノス、川崎に匹敵する優勝候補と見ている。ドイツ人のミヒャエル・スキッベ監督が2年目を迎えて、年齢やキャリアを問わず、選手たちの成長意欲がチームに満ち溢れていることが伝わるからだ。また新スタジアムの建設に伴い、エディオン・スタジアムがメインのホームスタジアムとしては最終年となる。そうした現在の能力値に表れない逆転要素があることは踏まえておきたい。

 攻撃力は「17」としたが、昨シーズンの得点数が52で、70得点を挙げたマリノス、65得点の川崎よりも一段落ちることは否めない。しかし、昨年は開幕後の合流だったスキッベ監督はもちろん、ともに2年目となる外国人FWのナッシム・ベン・カリファとピエロス・ソティリウがキャンプからじっくり準備しており、攻撃面の完成度向上が期待できる。ドウグラス・ヴィエイラを含む強力助っ人陣がチーム戦術にうまくフィットできれば、昨シーズンを大きく上回る得点数を記録してもおかしくない。

 さらにアカデミーから昇格して2年目のFW棚田遼は、昨シーズンの満田誠に続くブレイク候補と見ている。いずれも現状評価が「17」の攻撃力、選手層、完成度はシーズン中の上積みが期待できることを踏まえておきたい。スキッベ監督は1年目にしてルヴァンカップ優勝に導いたことは素晴らしいが、現時点での評価は「19」。やはり最高値をつけるにはリーグ優勝の実績が必要だ。

香川復帰のC大阪は指揮官の手腕がポイント

C大阪には香川が13年ぶりに復帰。レオ・セアラ、カピシャーバの両外国籍選手を含めた攻撃陣の新戦力を、小菊監督がチームにうまく組み込めるか【写真は共同】

 マリノス、川崎、広島の“3強”の間に割って入り、優勝争いに絡める力があるのは浦和レッズ、セレッソ大阪、名古屋グランパスあたりか。合計点「80」でランキング8位のFC東京も、アルベル監督が2年目となり、戦術面はベースアップしているはず。ただ、スタイルが明確になってくるので、対戦相手に対策を講じられやすい側面もある。本当にリーグ優勝を狙えるのは来シーズンと筆者は見ているが、前半戦で波に乗れば、昨シーズンの6位を上回る成績は十分に可能だろう。

 浦和はポーランド人のマチェイ・スコルジャ監督が1年目ということで、現状の完成度を「16」としたが、戦術的なメッセージが明確なので、選手たちの飲み込みも早い。そのなかでリカルド・ロドリゲス前体制から役割が大きく変わったのがトップ下で、指揮官は「10番」と表現して、小泉佳穂など、このポジションの選手たちに直接ゴールに関わる仕事を求めている。

 いわゆる「9番」の新戦力を獲得できていない事情もあり、攻撃力も「16」にとどめたが、北海道コンサドーレ札幌から復帰した興梠慎三や2年目のブライアン・リンセンなどがうまくハマれば、不安も杞憂に終わるかもしれない。もっとも浦和の強化部は現状に慢心することなく、遅くとも夏には前線に新戦力を加えるのではないか。

 一方でディフェンス面は、念願だった左利きのCB(センターバック)マリウス・ホイプラーテンを獲得できたことが大きい。岩波拓也の残留は財政的にはマイナスかもしれないが、ディフェンスの選手層という意味で、長いシーズンを考えれば間違いなくプラスだ。

 そうした攻守の戦力収支により選手層は「18」としたが、特に序盤戦はベンチ外になる実力者も出てくると考えられるため、マチェイ監督のマネジメントも鍵だろう。

 浦和と並ぶランキング4位のC大阪は、香川真司というビッグネームの復帰で注目度もJ屈指となっている。小菊昭雄監督は守備組織の構築には定評があるが、果たして香川、マリノスで2季連続二桁ゴールのレオ・セアラ、初来日のカピシャーバなど、個性的なアタッカーたちをどうチームに組み込んでいくのか。徳島ヴォルティスで経験を積んだパリ五輪世代のFW藤尾翔太も復帰しており、そうした選手たちをうまく組み込めれば攻撃力アップが期待できる。

 ランキング6位の名古屋は守備力が目を引く。ただし、2年目の長谷川健太監督が得点力アップを目指すなかで、前に比重をかけると見ており、そのバランス次第で「19」としている守備力が相対的に下がるリスクもある。どちらにしても名古屋が王者マリノスなどを上回り優勝を果たすには、現状「15」としている攻撃力の向上が絶対不可欠だ。その意味で浦和から加入したキャスパー・ユンカーにかかる期待は大きい。

 名古屋の“アキレス腱”は、相馬勇紀(カーザ・ピアへ)、宮原和也(東京ヴェルディへ)、吉田豊(清水エスパルスへ)、J2ファジアーノ岡山に期限付き移籍していた成瀬竣平(モンテディオ山形へ)がこぞって抜けたサイドの選手層だ。広島から加入したDF野上結貴は守備的なポジションをマルチにこなせるが、それでもサイドの陣容は心許ない。1つのシステムに固執しない長谷川監督の選択もキーになりそうだ。

鹿島はSBの守備力が不安要素だが…

鹿島はSBに不安を抱えるうえに、5年ぶりに帰ってきたCB昌子が1月に膝を負傷。現状では守備力の評価を低くせざるを得ない【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 ランキング7位以下でも、既述のFC東京に加えて、人望が厚い川井健太監督が率いるサガン鳥栖、岩政大樹監督が2年目の鹿島アントラーズ、実力者のMF小林祐希が加入した札幌は、シーズン中の成長力も加味して、上位進出のポテンシャルがあると見ている。

 ランキング11位の柏レイソルは、昨シーズンは大方の予想を覆して前半戦は優勝争いに加わり、終盤に成績を落としながらも7位でフィニッシュした。ただ、守備陣の入れ替わりが激しく、守備力を「13」にとどめたこともあり、この順位となった。鳥栖、札幌、柏に共通するのは期待の若手選手が多いことで、彼らの成長が成績にも大きく影響しそうだ。

 鹿島はキャンプ中のテストマッチで良い結果は出ていないが、トレーニングマッチはあくまでトレーニングマッチだ。岩政監督はリスク覚悟で攻撃重視のサッカーにトライしているはずだが、唯一、前からボールを奪いに行くスタイルにおいて、SB(サイドバック)の守備は不安要素である。ここがしっかりハマれば上位躍進も可能ながら、現状は守備力と完成度を低めにせざるを得ない。5年ぶりに復帰の昌子源が実戦起用できるまで、CBも当面は不安なポジションだ。ただ、あくまで開幕時の評価なので、岩政監督の手腕次第で、気が付けば優勝争いに加わっているかもしれない。

 大型補強により選手層を「18」としたガンバ大阪も上位進出のポテンシャルは十分ある。ただ、ダニエル・ポヤトス監督が新たな戦術を構築している初期段階ということもあり、降格枠が1つという今年のレギュレーションにおいて、余裕を持って残留できれば最低限のノルマは達成と見ていい。それでも、チームとしての成長は必須で、来年の今頃、現在の総合「76」から10ポイントくらい引き上げられるパフォーマンスを期待している。

(文:河治良幸)

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