2023シーズンJ2戦力ランキング 1年でのJ1返り咲きを目指す清水に追随するのは……

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J1編に続いて、2023シーズンのJ2戦力ランキングをお届けする。全22クラブのチーム力を「攻撃力」「守備力」「選手層」「監督力」「完成度」という項目ごとに各20点満点で採点し、その合計ポイントによって導き出した。あなたが応援するクラブは、果たして何位に入ったか?
(企画・編集/YOJI-GEN)

※ランキング上位と寸評コラムはスポーツナビアプリでご覧いただけます

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解説

清水はスタメンを2セット作れるレベル

J1得点王のチアゴ・サンタナを筆頭に、清水の攻撃陣には好タレントがひしめく。守備陣を含めて選手層は分厚い【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 総合1位は清水エスパルスとなった。昨シーズンにJ1で得点王を獲得したFWチアゴ・サンタナ擁する前線の攻撃力は、J2の基準で「20」をつけるに相応しい。鈴木唯人はフランス1部のストラスブールに移籍したが、モンテディオ山形から復帰したFWディサロ燦シルヴァーノが、鹿児島キャンプの総仕上げであるジュビロ磐田とのトレーニングマッチで2得点を記録するなど、猛アピールしている。

 さらに北川航也、乾貴士という海外経験もある選手、193センチの韓国人FWオ・セフン、大卒ルーキー屈指の実力を持つ齊藤聖七、10番を背負うカルリーニョス・ジュニオ、セットプレーのキッカーとしても違いを生む西澤健太など、攻撃陣はベンチ入りメンバーを予想するのが難しいほど充実している。守備陣もディフェンスラインから複数の主力が抜けたが、代わりに柏レイソルから加入したCB(センターバック)の高橋祐治、名古屋グランパスから古巣に戻ったSB(サイドバック)の吉田豊がプラスをもたらすはずだ。

 選手層も申し分なく、故障離脱者が出なければJ2で上位を狙えるスタメンが2セット作れるレベルだ。昨シーズンはJ1でも堅固だと思われたディフェンスが突如崩れたり、試合の終盤に失速して逆転される試合が続くなど、ゲームコントロールのまずさが降格を招いた。しかしながら、日本代表の守護神・権田修一が残留したことに加えて、高橋や吉田も統率力のあるタイプだけに、彼らが数値に表れにくい不安を解消してくれるかもしれない。

岡山のディフェンスはJ2最強と言える水準

G大阪からレンタルで加わった坂本に、高卒2年目の佐野(写真)、さらに櫻川など、岡山には伸び盛りの有能な若手が多い。彼らの成長次第では、やや不安がある選手層も厚みをはずだ【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 昨シーズンの昇格プレーオフを戦った4チームのうち3チームが、総合2位から並ぶ。そのプレーオフを勝ち抜き、J1・J2入れ替え戦で敗れて惜しくも昇格を逃したロアッソ熊本は主力の過半数が移籍したため、全体の12位という評価にとどめざるを得なかった。それでも大木武監督の続投は大きく、監督力は全体1位の「19」。昨年ブレイクした平川怜をキャプテンに指名して、新たに攻守両面で高強度のチームを作り上げようとしていることは見逃せない。

 2位のファジアーノ岡山も数人の主力が抜けたが、加入した選手の質も高く、むしろ戦力値はアップしたと見る。「18」の評価をつけた木山隆之監督が植え付けたディフェンスは「19」で、J2最強レベルだ。

 カタールW杯でも得点を挙げたオーストラリア代表FWミッチェル・デュークが、同じJ2のFC町田ゼルビアに移籍したのは痛手だが、ガンバ大阪から期限付きで加入したU-20日本代表候補のFW坂本一彩が大ブレイクの予感を漂わせている。選手層(評価は16)に若干の不安はあるが、19歳のMF佐野航大や21歳のFW櫻川ソロモンなど、若手がさらに成長すれば、シーズン後半には強みに変わっているかもしれない。

 ランキング3位の山形は、横浜F・マリノスのコーチとしてJ1優勝を経験したピーター・クラモフスキー体制が3年目を迎えており、「19」に評価したチームの完成度は高い。参謀の渡邉晋コーチとのタッグも板に付いてきている。

 チームの象徴的な存在だった“プリンス”山田康太が柏に移籍しても、清水からFW後藤優介が加わるなど、「18」に評価した攻撃力はJ2屈指だ。右SBは半田陸がG大阪に移籍したが、同じパリ五輪世代のホープである成瀬竣平(名古屋から)が来たことは心強い。ただ、CBも兼ねていた半田と成瀬では守備の信頼感に差がある。昨季CBの主戦を担った山﨑浩介がサガン鳥栖に移籍した影響も加味して、守備力は「16」とした。

 大分トリニータは中盤の軸だった下田北斗がJ2のライバル町田に引き抜かれるなど、重要なタレントの移籍が目に付くが、戦術的に見れば、就任2年目の下平隆宏監督(評価は18)の目指すサッカーの質を高めるのに適した人材が主力候補として残り、スタイリッシュなチームができ上がりつつある。長身FW長沢駿をターゲットにしながら、テンポ良く長短のパスをつないで全体で攻めきる基本設計は1年目より明らかに向上しており、完成度は高い。

 ただ、攻撃面は前線のパンチ力という部分で清水や岡山、山形に比べると若干見劣りし、守備も高い位置でボールを奪えなかった時の耐久力は岡山などよりは落ちる。つまりはシーズンを通して、どれだけ下平監督の狙い通りに試合を運べるかが鍵になる。その意味ではチームリーダー的な存在も必要で、司令塔の町田也真人やパスセンスに定評のある10番の野村直輝などには、個人として輝くだけでなく、チームを引っ張る役割も期待したいところだ。

仙台で鍵を握るのは地元に帰還した郷家

今年は外部から選手を獲得できない磐田だが、J1を戦った昨シーズンの主力の大半が残ったのは大きい。静岡学園高から入団して2年目の古川(写真)など、成長著しい若手の活躍も楽しみだ【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 山形と並ぶ総合4位のジュビロ磐田は、FIFAの裁定により今年は外部からの選手獲得を禁じられており、J2でも苦しい戦いが予想される。ただ、栃木SCで主力CBだったパリ五輪代表候補の鈴木海音や、ゲームメイクとチャンスメイクの両面で違いを生むMF針谷岳晃など、レンタルバックの選手が実質的な補強となっている。元日本代表MFの藤田俊哉スポーツダイレクターの働きもあり、J1を戦った昨シーズンの主力のほとんどが残留したのも大きい。

 キャンプのトレーニングマッチでは、ユースからの若干名の参加者を含めて3チームを作れており、開幕に明らかに間に合わないと見られるのは、DF森岡陸と出場ペナルティを受けているFWファビアン・ゴンザレスぐらいだ。

 ただ、日本代表コーチを務めた横内昭展監督はチーム作りを急がず、まずは個人戦術や切り替え、球際など原理原則のレベルを引き上げるスタンスを示しており、完成度は「13」にとどめた。逆に言えば、気鋭のドリブラー古川陽介や高校生JリーガーとなるFW後藤啓介らの成長も含めて、チームの伸びしろは大きく、最終的に静岡勢のライバルである清水に匹敵する数値に上がってもおかしくない。

 総合6位のベガルタ仙台は、昨シーズンは7位で惜しくもプレーオフを逃したチームであり、途中就任だった伊藤彰監督が今シーズンはキャンプから戦術を植え付けられるので、チームのベースアップが期待できる。補強の目玉はヴィッセル神戸から加入した大型MF郷家友太。この注目の新戦力が、攻守にわたるダイナミックなプレーを売りとする生まれ故郷のチームでA代表レベルの輝きを見せれば、全体的な上方修正もありうるし、上位2チームに与えられる自動昇格も見えてくる。

 7位以下でも、守備力「18」の徳島ヴォルティス、V・ファーレン長崎、大物外国人のエリキやデュークなど、大型補強でオフの話題をさらった町田あたりには自動昇格のポテンシャルがあると見ている。ただ、上位6クラブに比べると、やや不確定要素が多いのも確かだ。

 徳島はスペインのレアル・ソシエダで分析官を務めたベニャート・ラバイン新監督がチームをまとめられるか。また長崎は、不安定になりがちなパフォーマンスを高いレベルで安定させられるか。そして町田は、タレント軍団を高校サッカーの名将・黒田剛監督(青森山田高・前監督)が、元サガン鳥栖監督の金明輝ヘッドコーチとともにチームをどう組み上げるか。黒田監督はさらに、主力とサブの実力差がつきやすい課題にも向き合っていくことになるだろう。

甲府、東京V、山口、千葉にも昇格の可能性

東京Vは今年も複数の主力を失った。それでも城福監督の手腕は確かで、引き抜きが噂されたMF森田(写真)の残留も朗報。現有戦力を最後まで維持できれば、J1昇格は射程圏内だ【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 プレーオフからの昇格チャンスは最終順位が3位から6位のチームに与えられる。しかも今シーズンはJ1との入れ替え戦がなく、4チームによるトーナメントを勝ち抜けば昇格できる。いわゆる“トップ6”に入る可能性という意味では、天皇杯チャンピオンとして秋開幕のACL(AFCチャンピオンズリーグ)に出場するヴァンフォーレ甲府、甲府と並ぶ総合10位の東京ヴェルディ、大木監督の熊本、総合13位のレノファ山口、ヘッドコーチから昇格した小林慶行監督の下で再出発を図るジェフユナイテッド千葉あたりまでは十分にチャンスがあるのではないか。

 千葉はその小林新監督(評価は13)の采配やマネジメントに未知数の部分はあるが、尹晶煥前監督が築いたチームのベースは引き継がれており、「17」に評価した選手層の厚さも強みだ。名塚善寛監督が3年目の山口も、評価を「17」とした完成度の高さを背景に開幕ダッシュに成功すれば、チームは勢いづくだろう。数値には示しにくいが、MF矢島慎也(大宮アルディージャから)などが加入した中盤の構成力はランキング上位のチームにも引けを取らない。

 またヴェルディは例年通り重要な戦力を何人も失ったが、監督力「18」の城福浩監督がチームをまとめ上げれば、躍進も期待できる。ただ、前半戦で活躍した選手が夏に引き抜かれる“悪循環”もあるので、現時点では予想しにくい部分がある。

 最後に、J3から昇格したいわきFCと藤枝MYFCは、どちらも見どころのあるクラブだ。独自の筋力強化でも注目を集める前者は、豊富な運動量を生かしたダイナミックなフットボール、気鋭の須藤大輔監督が率いる後者は、“欧州流”を取り入れた可変性の高いスタイルで相手ディフェンスの逆を取っていくスタイルを掲げる。いわきは総合19位タイ、藤枝は22位とランキング下位となったが、あくまで開幕時の評価だ。周囲をあっと驚かせ、J2の台風の目になる躍進を昇格2チームには期待したい。

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