「選手権制覇」の名将は千葉U-18を“県リーグ”からどう引き上げようとしているのか?
朝岡隆蔵・千葉U-18監督 【大島和人】
ジェフユナイテッド千葉U-18も関東の予選を勝ち抜き、3年連続でこの大会に参加していた。初戦で大分トリニータに2-2と引き分けたものの、第2戦は川崎フロンターレに0-1、第3戦はツエーゲン金沢に1-2で惜敗。グループステージの突破はならなかった。
「育成のジェフ」が現在は県1部
しかし今はどのクラブもアカデミーの強化に力を入れていて、競争が激化し、選択肢は増えた。近年も櫻川ソロモンのような人材が輩出されているし、環境や指導者の質が劣っているわけではない。ただ千葉は県リーグ1部からなかなか「関東」「東日本」の上位カテゴリーに届かないでいる。
U-18を任されて4シーズン目を迎えているのが朝岡隆蔵監督だ。1994年の第73回全国高等学校サッカー選手権大会では市立船橋の初制覇を経験。監督としても母校を2011年の第90回大会制覇に導いた。選手、監督として選手権制覇を経験した史上初の人物でもある。
彼は公立高の教員という安定した立場を捨て、プロクラブの現場に飛び込んだ。今大会初戦の大分戦後に、その朝岡監督から話を聞いた。テーマはU-18の現状、高校とクラブの違い、そして彼が千葉U-18の指導者として持つ“野心”だ。
「ポジショナルプレー」がコンセプト
朝岡はこう説明する。
「クラブとしてのコンセプトを持って、しっかりボールを動かして、スペースを見てフリーを見つけて、優位性を使いながら、主導権を取って押し込んでいくサッカーをしています。[4-3-3]の5レーンで、位置的な優位性をとにかく取る、サイドで優位性を作るところは基本コンセプトですね。最初は立ち位置だけで優位性を取ってやっていましたけど、それだけだと立ち行かないことがある。『どうアクションを起こすか』っていうモビリティ(動き)のところまで今はやっています」
もっとも彼が市船の監督として2011年度の選手権でやっていたスタイルと、今の千葉U-18ではかなりの違いがある。難易度の高いサッカーに取り組んでいる分、千葉U-18のサッカーはやや完成度が低く、率直に言って隙もある。大分戦の2失点はいずれも自陣の低い位置で相手にボールを奪われる“安い失点”だった。とはいえ彼らが取り組んでいるのは「人を育てる」「先につながる」サッカーなのだろう。