目指すは「山口蛍とイニエスタを兼ね合わせた選手」  神戸U-18の1年生MF今富が挑む“代表”の熱い競争

大島和人

神戸U-18で、高校1年ながら活躍が光る今富輝也 【大島和人】

高1世代のMFが豊作

 コロナ禍の制約はなお残るが、サッカー界にも年代別代表、AFCチャンピオンズリーグなどの国際試合を今まで通りやれる状況がやっと戻ってきた。森山佳郎監督が率いるU-16日本代表は、10月上旬にマレーシアで開催される「AFC U17アジアカップバーレーン2023予選」を控えている。出場資格があるのは「2006年世代」で高2の早生まれ、高1が主力となる。

 現高1世代はMF、特にボランチが豊作だ。育成年代の最高峰である「高円宮杯U-18プレミアリーグ」を見に行くと、既に主力級の働きを見せている逸材が多い。プレミアEASTならばFC東京の永野修都、佐藤龍之介が定位置を取っているし、プレミアWESTも矢田龍之介(清水)や中島洋太朗(広島)が出番を得ている。

 7月9日の「ヴィッセル神戸U-18 vs. ガンバ大阪ユース」でも、1年生MFの活躍が光っていた。神戸の勝利に貢献したのが、7月中旬のU-16代表合宿にも招集されている今富輝也だ。

神戸U-18は堅守で3連勝中

 神戸はトップだけでなく、U-18もプレミアWESTで3連勝中だ。今季は開幕直後に苦しみ、第2節から3連敗を喫した。しかし直近の5試合は負けなしで、特に6月末の再開後は3試合連続の完封勝利を挙げている。

 神戸のアカデミーはピッチの幅を使い、ボールを丁寧に動かすスタイルでお馴染みだ。さらに安部雄大監督率いるU-18は球際の強さ、ハードワーク、相手に保持された状況の堅守といった強みも併せ持っている。体格の逞しい選手の多いチームだが、クラブを挙げて取り組んでいる食事など“オフ・ザ・ピッチ”の取り組みも奏功しているのだろう。

 9日のG大阪戦は後半早々に先制し、悪い流れの時間帯を乗り切って逃げ切る展開だった。安部監督は試合後にこう述べている。

「自分たちのペースをもう一度掴み直せればいいんですけど……。そこで崩れないのは好調の要因だと思います」

 2日の静岡学園戦、9日のG大阪戦ともスコアは1-0。そしてゴールはセットプレーだった。

「前節もそうだったんですけど、いつも練習しているセットプレーで、出来すぎなくらいに取れている。苦しいときにセットプレーで取れるのはチームにとっても大きいです」

U-16代表の今富が浮上に貢献

 今富はチームが3連敗と沈んでいる状況で迎えた、5月7日のサンフレッチェ広島戦から先発に抜擢された。サイドハーフ、シャドーなど前目のポジションでもプレーできるタイプだが、現在の定位置はボランチ。ファーストタッチの上手さ、キープ力、展開力と言った強みを発揮している。

 G大阪戦では46分、右足のFKから横山志道のヘディングシュートをアシストし、他にもプレスキックで“惜しい”場面を演出していた。彼のFKには「ぶれ球」系の球質もあり、相手のゴールキーパーが飛び出しを迷う嫌らしさがあった。

 安部監督は今富についてこう述べる。

「中央でボールも触れますし、守備でも相手に見劣りせずやれている。攻撃で飛び出していくとか、連続した動きをするとか、そういう部分は求めていかないといけないと思いますけど、非常に才能のある選手だと思います」

今富のライバル、目標は?

 今富は試合後に展開をこう振り返っていた。

「後半の入りが良くて、そこでしっかり1点を取れたのが大きかった。ただこの3試合くらい、後半は攻められている展開が多いので、そこが改善点です。ロングボールが多くなったり、相手に持たれたりする時間が長かったので、もっと自分が(パスを)引き出して流れを変えたい」

 今年の抱負について尋ねると、明確な答えが帰ってきた。

「(10月にU-16代表が出場する)アジアカップのメンバーに選ばれたい。(7月下旬に開幕する)クラブユース選手権やプレミアでどんどんアピールをして、U-16代表として活躍したい」

 そのためには彼がライバルとして名を挙げる矢田龍之介(清水)や、中島洋太朗(広島)らとのポジション争いを制する必要がある。174センチ・66キロの今富は矢田や中島と体格、スタイルが近い。試合に出て「結果を出す」「競争に勝つ」ことが、そのままアピールにもなるだろう。

 目標とする選手を尋ねると、なかなか頼もしい答えが返ってきた。

「トップで言ったら山口蛍選手やイニエスタ選手はしっかり参考にしています。それを兼ね合わせた選手になりたい」
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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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