現状の継続か、秋春制を導入か 新チェアマン・野々村氏はJリーグをどう導く?

大島和人

Jリーグの未来を託された野々村氏は札幌での成功体験を踏まえ、どのような改革を行っていくのだろうか 【写真:松岡健三郎】

 野々村芳和チェアマンの就任は、Jリーグにとってかなり大きな変化だ。彼は村井満・前チェアマンからの指名でなく、独立した役員候補者選考委員会による人材探しと、長い審議の末にチェアマン候補として指名されている。理事会の承認、リーグの総会による専任を経て、直前までコンサドーレ札幌の社長を務めていた49歳が第6代チェアマンに就いた。新理事会は彼も含めて若く、さらに“プレーヤー色”の強い構成となっている。

 Jリーグは30年目のシーズンを迎え、クラブ数は初年度の10から58へ拡大した。日本はワールドカップの常連となり、この3月には7大会連続7回目の本大会出場を決めている。しかし新チェアマンの言葉から伝わってくるのは満足感でなく成長、変革への強い思いだ。理事の人選、地域との関係、秋春制といったテーマについて新チェアマンが述べている。

常勤の理事4名に期待したい役割は?

――村井満・前チェアマンはJリーグの経営が厳しい中で就任し、4期8年の在任中に明治安田生命やDAZNとの大型契約締結、コロナ対策といった成果を残しました。野々村さんからご覧になって「引き継ぎたい」「評価できる」という要素はありますか?

 特にそういうことを考えずにやったほうがいいかなと思っています。前の体制の人たちが今の体制を推薦して選んだ形なら、どう継続してやっていくのかという発想があっていいですよね。でも今回は第三者機関が、今までの流れを考えつつ、俺らみたいな人たちにやらせたほうがいいと決めている。もちろんJリーグは30年もやっていますから、いいところはたくさんあると思います。

――村井チェアマンはメディアを介したサポーターとの向き合い、説明がお上手で「顔が見えている」安心感を与えていたと感じます。野々村さんも札幌の社長としてそこは同じように意識されていたと思います。

 そこは普通に、僕の今まで通りやっていけばいいのかなと感じています。平穏に見せるのがJリーグは上手だなと思っていました。何かあっても「何事もなかった」かのように見せている。

――野々村さんのチェアマン就任とともに理事も大きく入れ替わって、常勤の理事4名のうち3名は新任です。それぞれに期待することを教えて下さい。

 並木(裕太)さんに関しては、元々知っているのもありますけれど、右腕的にやってもらいたいと思っている人材です。チェアマンに内定しましたと伝えられて、その後「どのような人を理事にするか」という話し合いがあったんですけれど、名前が最初に浮かびましたね。彼は話をしていて「こうしよう」「ああしよう」ということに対してのレスポンスが早い。「こうしたい」と言ったことに対して、すぐ道筋を見つけてくれる人間です。

 窪田(慎二)さんはリーグに長くいて競技的なこと、運営的なこと、規約をよく分かっています。そういうところで活躍してほしい。

 馬場(浩史)さんはスポーツ×デジタルの領域で最近ずっと仕事をしている人です。デジタルの部分でどういう使い方がJリーグの中であるか、今までもそこは考えていたはずですけれど、デジタルを使った新しいコミュニケーションの取り方に関して、アイディアを出してくれると期待しています。

 高田(春奈)さんはクラブ(V・ファーレン長崎)の経営もやっていましたが、社会連携の部分ですね。Jクラブは「地域とどうつながるか」がキモ中のキモだったりします。クラブが大きく成長すると地域色は薄れるかもしれないけれど、J2やJ3はそこがすごく大切です。そういった部分でクラブの経験も生かしてやってほしいと期待しています。Jリーグ発で世の中を、SDGs含めてどう良くしていくのか? ということをお願いしたいと考えています。

元日本代表の4氏を理事に任命した狙い

――議決権のない特任理事に引退後まもない内田篤人さん、中村憲剛さんが入って、他にも宮本恒靖さん、森島寛晃さんと元日本代表選手が理事会に入っています。その意図はいかがですか?

 やはりフットボールを中心にもう一回色々なことを考えなければいけないという感覚があります。自分も実行委員会や理事会に出ていて、だんだんとサッカーの話が少なくなっていた感じを持っていました。時間がなくてサッカーの話にたどり着かない部分もあったと思いますけれど、Jリーグの会議体なんだから「どんなサッカーを目指そうか」という視点もなければいけません。

 憲剛はJリーグでまだまだ小さかったクラブが、チャンピオンになった実体験を持っています。Jリーグで育った人の意見は聞きたいところですね。あとプロではなかったけれど選手をやっていた人もいます。(新理事の)湘南ベルマーレの水谷尚人社長、ベインキャピタルの杉本勇次代表は大学までやっていたし、辻井隆行さんも(大学、企業のサッカー部で)選手をやっていた。プレーヤー感覚やサッカーの知見もありながら、特別な分野で活躍している方……ということでお願いしました。

――やはり元Jリーガー、サッカー経験者の方が感覚を共有できる、一緒に仕事をしやすい部分がありますか?

 あるかもしれないし、まったく違う意見を言ってくれたとしても「なるほどな」と思える気がしますね。同じ意見を言う人がいても仕方ありません。でも一から「サッカーとはこういうものですよ」と説明しなくてもいいようなメンバーかもしれない。

――「サッカーの質を追求しても、それが地域密着やビジネス的な発展につながるわけではない」という意見もあると思います。それに対してはどう答えますか?

 今の質問に対してどう答えるのが正解か分からないですけれど……。いずれにしても最後はいい作品にする、Jリーグがより高いレベルになるというところはずっと目指していくはずです。決定をするときにはまずフットボールの観点から入って、どうビジネス面からサポートできるかという思考回路が大切だと思って、このメンバーになっています。

――フットボールの質と集客は経営拡大の両輪をうまく回した成功事例が、野々村さんが経営していたコンサドーレ札幌だと思います。

 コンサドーレでやったことをベースにやればいいのかな? と自分では思っています。地域性があるので同じ手法ではないにせよ、考え方としてはそれでいい。ローカルの放送局があるエリアではそれを使えばいいし、ただ関東エリアだとそれがなかなか難しいという違いがあるじゃないですか?

 今までは一律に「上からプロモーションをします」という感じでした。そうでなくクラブに合わせて、小さなクラブにはそのサイズなりのフォローをするし、それなりに大きくて影響力もあるクラブには金額的にもそれなりのサポートをする――。そうやって個別に最適解を見つけていくべきだと考えています。

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著者プロフィール

大島和人

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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