連載:“大谷翔平の衝撃”でどう変わる? 日本人メジャーリーガーの現在と未来

前田健太が語る大谷翔平、指導者の夢「翔平は成績、技術もすごいけど……」

杉浦大介
 右肘のケガからの復帰を目指し、現在リハビリに励む前田健太(ミネソタ・ツインズ)のロングインタビュー。後編で語ってくれたのは、MLB全体の近年の変化と日本人メジャーリーガーの未来についてだ。昨シーズンの大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)の活躍を、マエケンはどのように見ていたのか。そして、日本人選手がメジャーで成功するための条件とは──。さらに自身の将来の話として、指導者になる夢も打ち明けてくれた。

繰り返される投手と打者のイタチごっこ

インタビュー後半のテーマは、MLB全体の変化と日本人メジャーリーガーについて。日本人がアメリカで活躍するために必要なメンタリティーとは? 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

――前田選手は今シーズンでメジャー7年目になりますが、この間にMLB全体はどのように変化したと感じていますか?

 めちゃくちゃ変わったと思います。ピッチャーの目線で言ったら、以前はボールを動かしておけばなんとかなるといったイメージがありましたが、今はそういうピッチャーは減ってきて、どちらかというと4シームで空振りを取るピッチャーが増えていますね。かつては2シーム、2シームって言われてましたけど、そんな単純なものではなくなってきている気がします。

――全体のレベルは上がっていると考えていいでしょうか?

 そうですね。イタチごっこみたいな感じで、結果として上がっているんじゃないかと。打者が2シームを打つために“フライボール革命”(打球に角度をつけて打ち上げることを推奨する打撃理論)が起きて、それに対抗して投手が高めの4シームで空振りを取るようになった。すると今度は、高めのボール球を振らない打者が増えてきた、といった具合に。バッターとピッチャーのしのぎ合いみたいなものが、毎年繰り返されている感じですね。

――他に目立つ変化はありますか?

 ストライクゾーンが年々、小さくなっている気はします。メジャーは外角のゾーンが広いイメージを持たれていましたが、最近はテレビでストライクゾーンが表示されるようになって、そこから外れたボールをストライクに取ると、審判が下手だと見なされるようになってしまった。おかげでキャッチャーが気持ちよく取れば、コースが1個、2個外れていてもストライク、みたいなことはほとんどなくなりましたね。

――シフトの導入も近年の変化だと思います。シフトを好む投手とそうではない投手がいると言われますが、前田選手はいかがでしょう?

 プラスとマイナス、両方の側面があるので何とも言えないところです。(シフトを敷いた場所に)打球が飛ぶ確率は高いはずなので、助かっている部分が多いとは思いますが、一方で野手がいないところにちょこんと打たれてヒットにされると、投手としては嫌な気持ちになる。ピッチャーによっては初球はやめてくれとか、2ストライクになったらできるだけ定位置に戻ってくれとか、いろんな意見がありますね。

――前田選手の場合は?

 僕も初球をセーフティバントされたくないので、できるだけサードは定位置にいてほしいとか、シフトは1ストライクを取ってからにしてほしいとかって伝えたことはあります。最近はそういった意見をコーチも聞いてくれるようになってきましたね。

――これは一概には言えないと思いますが、近年、日本人メジャーリーガーがやや減少傾向にあるとは感じませんか?

 単純にタイミングの問題じゃないですか。誰もが行きたいと思ったタイミングで行けるわけではありませんから。まずは日本で認めてもらって、FAだったり、ポスティングだったりというシステムを利用しなければいけない。日本の球団も、特にポスティングで抜けられると困ると思うので、そのタイミングも関係しているのではないかと。これから先も多くの選手がアメリカにやって来ると思いますよ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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