部員不足の野球部から考える「部活動」 たった一人の3年生がやり切った意義
埼玉県にある松伏高校野球部は、今年3月まで選手が倉田晴稀(右から2人目)の一人しかいなかった。左は矢嶋正悟監督 【中島大輔】
町内にある唯一の高校、埼玉県立松伏高校の野球部には、今年3月まで選手が一人しかいなかった。
「辞めようと思っています。友だちと遊んでいるほうが楽しいので」
高校最後の学年を迎える前、倉田晴稀は監督の矢嶋正悟にそう伝えている。野球部のことではない。学校自体に行く意味を見いだせなくなっていた。
野球部を続ける理由が見つけられない
「なんで自分は野球部に入ったんだろう?」。倉田は野球を続ける理由が見つけられなくなっていた 【中島大輔】
ところが翌年2月、倉田を誘った友人は退学した。赤髪になっていた。倉田は「辞めるかも」と聞かされていたが、本当に辞めるとは思っていなかった。
「なんで自分は野球部に入ったんだろう?」
仲の良かった友人だけでなく、同学年の女子マネジャーも姿を見せなくなり、倉田は広いグラウンドに一人残された。監督の矢嶋と、顧問の才川力也と3人で練習を続けたが、以前のように楽しい場所ではない。せっかくできた仲間との時間が失われ、一人で野球を続ける理由を見つけられなくなると、おのずと足は遠のいた。
「倉田にとって野球部という居場所がなくなると、終わりだなと思いました。どこかに受け皿が必要だな、と」
進学校である埼玉県立不動岡高校から埼玉大学を卒業し、数学教師として6年前に赴任した矢嶋にとって、自身がすごした学生時代と松伏の環境はあまりにも対照的だった。学力的に“できない部類”の子たちが多く、どこか自信がなさそうに感じられる。
とりわけ倉田はそうした一人だった。このまま消えるように野球部を辞めたら、何も残らない。部活を最後までやり切ったという結果が失われ、自己肯定感を持てないまま卒業する。その先に、果たして明るい未来が待っているだろうか。
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