連載:コロナで変わる野球界の未来

球速10キロUPも…今夏に増えた急成長 “2カ月間”が球児に変化をもたらした

中島大輔
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一躍ドラフト候補へ

190センチ、84キロの恵まれた体から最速148キロの直球を投げ込む履正社の内。実は「コロナ以前」の球速は130キロ台半ばだった 【中島大輔】

 新型コロナウイルスの影響で活動自粛を迫られた今春の約2カ月間で、スケールアップを果たした高校球児が全国に数多くいる。

「コロナの自粛期間が明けてから、急にたくさんの取材が来るようになりました」

 履正社の右腕投手、内星龍(うち・せいりゅう)はそう語る。この春まで公式戦に未登板だったが、自粛期間が明けると今秋のドラフト候補に躍り出た。最速130キロ台半ばだった速球が、148キロを計測したのだ。

「コロナでチームの練習ができないからこそ、自分でできることを探してやっていました。試合のない、冬のトレーニング期間がもう1回始まったと思って取り組んできました」

 プロのスカウトが熱視線を向けるのは、内が190センチ、88キロと恵まれた体格を誇ることが一つの要因にある。日本人離れしたエンジンは、他者が簡単にはマネできない能力だ。

 ただし、内のポテンシャルはそれだけではない。彼の成長物語には、令和の時代を生きる高校生にとって、レベルアップするために大事な要素が詰まっている。

もがき、たどり着いた「山本由伸」

 履正社に入学して1年夏、打力を買われた内は大阪大会に野手としてメンバー入りを果たした。その一方で、投手の練習を始めたのもこの頃だった。

「ピッチャーを始めたのがみんなから3、4カ月遅れているので、なかなか追いつかなくて。中学までピッチャーをやっていたんですけど、高校は環境も違うので、結果が全然出なかったです。結構悩んだ揚げ句、投げ方もワケがわからなくなってしまいました」

 190センチと上背のある内は、大型投手の大谷翔平(エンゼルス)やダルビッシュ有(カブス)を参考にしていた。しかし高2の秋まで自らの体をうまく操ることができず、「最悪の時期」をすごした。

 光明が見え始めたきっかけは、「概念を変えた」ことだ。ちょうどこの年(2019年)、パ・リーグの最優秀防御率に輝いた山本由伸(オリックス)を参考にし始めた。
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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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