元審判員・中村稔氏が選ぶベストナイン 真のスターは「審判に文句を言いません!」
新庄のパフォーマンスに「今日は何をやるんだ?」
新庄のパフォーマンスには審判たちも「今日は何をやるんだ?」と楽しみにしていた部分があったそうだ 【写真は共同】
外野はダントツでイチロー(元オリックスほか)ですよ。僕の母校・愛工大名電高の後輩でもあります。
球審として見ていて、「これはイチロー以外、絶対に打たないな」というインコースのボールまで打って、ファウルにしていました。インコースのボールは、明らかに自分のストライクゾーンを持っていましたね。逆にアウトコースのストライクゾーンは、3割バッターの中では一番広かった。要するに全部飛びつく、当てに行っていましたね。
――2人目は誰でしょうか。
秋山幸二(元西武ほか)さんですね。
今季、西武からメジャーに移籍した秋山翔吾もすごいけど、秋山幸二さんほど三拍子そろった人はいなかった。とにかく身体能力が素晴らしかったですね。日本シリーズでのバック宙だけでなく、大車輪でもなんでもできるんですよ。野球でなくても、名アスリートになっていたでしょうね。
――さて外野、残りのひと枠はどなたにしましょう。
新庄剛志(元日本ハムほか)かな。ファンをあれだけ喜ばせてくれて、審判員の僕らも「今日は何をやるんだ?」って楽しみなところがありましたからね。もちろん野球のほうでも秋山さんのようにバランスのいい選手でした。
彼はいつも香水の匂いがしていてね。試合中、毎回毎回、ベンチに帰るたび香水を噴き掛けているんですよ。バッターボックスに入ってくるとき、その香りがファンのところまで漂っていってね。ファンは喜んでいましたよ。それで他の選手もマネしたけれど、やっぱり新庄じゃないとダメでしたね(笑)。
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タフィ・ローズ、ブライアント(ともに元近鉄)、ディアズ(元ロッテ)、ソレイタ(元日本ハム)……ここも精鋭ぞろいですね。でも、僕は西武のデストラーデを入れたいな。数字で見ても十二分だし、またどんなときも文句も言わず、常に前を見ていた好青年でした。
元楽天イーグルス監督・星野仙一氏との不思議な縁
さまざまな個性派監督がいたパ・リーグ。その中で中村氏は星野仙一氏とのエピソードを明かす 【写真は共同】
仰木(彬=元近鉄監督ほか)さんは抗議に出てくるとき、「俺が教えたる」って言うんですよ。「ゆっくり見て、ジャッジしなさい」とか言ってね。野村(克也=元楽天イーグルス監督ほか)さんは愚痴っぽく「なんとかしてくれよ」とか言うんだけど、決して嫌味なことは言わなかった。
星野(仙一=元楽天イーグルス監督ほか)さんは、任侠映画に出てくるような雰囲気でね。楽天イーグルスが初優勝した2013年、優勝を決めた西武ドームの試合は僕が球審を務めていたんです。最終回、星野監督が出てきてね、「ピッチャー、田中(将大=現ヤンキース)」と交代を告げて、「分かってんだろうな?」とひと言。「はい、わかりました」と返事をした記憶があります(笑)。
そういえば、星野さんが初めてパ・リーグの、楽天イーグルスの監督になられて初抗議を受けたのも、僕でした。そして星野さん亡き今、僕が楽天イーグルスで仕事をしているのだから、不思議なご縁でしたね。
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中村氏が選ぶ「審判から見たパ・リーグベストナイン」
捕手:里崎智也
一塁:清原和博
二塁:辻発彦
三塁:松永浩美
遊撃:松井稼頭央
外野:イチロー、秋山幸二、新庄剛志
DH:デストラーデ
中村稔(なかむら・みのる)
【写真提供:楽天イーグルス】