佐賀競馬の働き方改革、週休“1日半”や厩務員住宅を新築/月刊・佐賀競馬だより
佐賀競馬場パドックで馬を曳く厩務員 【撮影:大恵陽子】
午後半休と全休でのんびり過ごせるスケジュール
そして、佐賀競馬では「週休1日半」を導入しています。どういうことかというと、具体的なスケジュールはこんな感じ。
土曜 レース
日曜 レース
月曜 午前:仕事
午後:休み
火曜 休み
水曜 調教
木曜 調教
金曜 調教
月曜朝は週末にレースを使っていた競走馬の体調や歩様に異常がないかを確認したり、出走していなかった馬たちの通常どおりの世話を行います。
午前中にそういった仕事を終えると、昼以降は休日。翌日も丸1日休みのため、1日半のお休みとなります。
半休と全休がくっつくことで、月曜は午後から自宅にこもってゲームや漫画を心ゆくまで楽しむもよし、明るいうちからハッピーアワーでビールを飲むもよし、佐賀近辺には温泉がたくさんあるので日帰り温泉に出かけるもよし。のんびりと過ごすことができます。
佐賀競馬で1日半休が始まったのは2000年代初頭。週3日開催だったのが、バブル崩壊後の不況で売り上げが落ち、週2日開催となった頃からだと、佐賀県調騎会会長の真島元徳調教師は話します。
1日半休みのパターンは週によっては「全休+半休」という順になることもあり、また実際の運営は厩舎によって細かな違いはあるようですが基本的にはこの形。休みの間は当番制でエサやりを担当します。
前述のスケジュールのメリットについて、ネクストスター佐賀を無敗で制したミトノドリームを管理する平山宏秀調教師はこう説明します。
「日曜のレースに走った馬は、次の日に歩様に異常がないかなどを確認しないといけません。月曜を全休にしてしまうと、担当馬が日曜に出走していた厩務員だけが気になって厩舎に出てきてしまい、休みが休みじゃなくなってしまいます。それなら、月曜朝は一律仕事にした方が馬のためになると思います」
動物が相手。たとえば、休日だからといって風邪を引いた子供の面倒を見ないということはないように、仮に業務上は休日扱いでも、放っておけなくなるのが心情です。
JRAや南関東と異なり、佐賀競馬では2~3週に1走するのが基本パターン。さらに、1人4~5頭担当するのが主流ですから、担当馬の体調を気遣うあまり、休日がつぶれてしまうリスクもあるのです。それを両立できる形として、現在はレース翌朝は仕事というスケジュールを調騎会としてなるべく取り入れるようにもなっているのです。
また、厩舎によってはウォーキングマシンを導入。レース後の上がり運動にも活用することで「翌朝の歩様の硬さが改善された」との声も聞こえてきます。
敷地に限りがあるため、全厩舎というわけにはいきませんが、様々な方法で馬にとってもよりよい環境づくりに努めています。
佐賀競馬場の厩舎地区。手前はウォーキングマシン 【撮影:大恵陽子】
広々3LDKに、ブーツも楽々収納できる新築住宅
それは、厩務員住宅を新築したこと。23年7月、ファン用駐車場だった一角にマンションが完成。ファミリー向けは3LDK、単身者向けは1Kで格安な家賃で住むことができます。
新築の厩務員住宅 【撮影:大恵陽子】
厩務員住宅(ファミリー向け)のリビング 【撮影:大恵陽子】
「いいなぁ。僕たちもここに住みたいです」
と思わず口にしてしまうほど。
個人的な経験としても、実家が築30年超えから新築に引っ越した時、自宅にいるのがこんなにも楽しくてウキウキした気分になるんだ、と驚いたほど。住まいは大切ですね。
馬づくりは人づくり――競馬の世界ではたびたび耳にするこの言葉。
佐賀競馬では働き方や住まいなど、気持ちよく仕事ができる環境を整えていっています。
文・大恵陽子(おおえ ようこ)
競馬リポーター。小学5年生で競馬にハマり、地方競馬とJRAの二刀流。毎週水曜日は栗東トレセンで、他の日は地方競馬の取材で全国を駆け回る日々。グリーンチャンネル「アタック!地方競馬」「地方競馬中継」などに出演のほか、「優駿」「週刊競馬ブック」「うまレター」「馬事通信」など各種媒体で執筆。
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