【野球小説】栄冠は監督にも輝いてほしい 第9回 高校野球はお金がかかる!?
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ただ、佐伯は当時を思い返しても、シーズン中と同じ練習ができないので、その代わりに……くらいの意識しかなかった。しかし、大学へ進み、プロ野球選手も信奉するトレーナーの著書を読み、意識が変わった。そこには繰り返しこう書いてあったのだ。
「体の変わる時が技術の上がる時。子どもの頃から毎日素振りをしてきても思うように技術が伸びないなら体を変えるべき!」
実際にこのトレーナーが経営するジムに通い、プロの世界で伸び悩んでいた選手が大きく変わり、結果を出したといった話がいくつか紹介されていた。
佐伯は「このトレーナーの言葉を信じてみよう」と、自身の伸び悩みを感じていた大学2年の冬、本格的なウエートトレーニングに励んだ。すると翌春からはっきり自覚できるほどスイング、打球の速度が上がり、飛距離もアップした。
この経験は佐伯の中で極めて大きなものとして残り、大阪天栄の監督としてチームを預かった時には、体作りに本腰を入れて選手を鍛えたい、との思いが明確にあった。そこへ監督として夏、秋の大会を戦い、強豪校と実際に試合をし、あるいは大阪トップクラスのチームの試合を観戦。ここで体格、パワーの差を痛感した。
そこでまず、体作りのためにネットで情報を集め、部長の有本公寿にも相談し、近隣で指導を頼めるトレーナーを探した。すると普段は大阪市内のジムでも働くトレーナーと知り合うことができ、こちらの要望を伝えたところ、指導を依頼することが決定。12月半ばからの約3カ月。週に2回、他部と共用の学校のウエートルームで指導を受けることになった。
同時に佐伯は、体作りのもう1本の柱である食事面についても専門家の指導を受けたいと考え、12月後半に生徒と参加可能な保護者を対象にした栄養セミナーを開催した。
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