【野球小説】栄冠は監督にも輝いてほしい 第6回 スカウティング初参戦
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写真はイメージです。本文とは関係ありません 【写真:アフロ】
電話をかけてきたのは中学生の硬式クラブチーム、大阪港町ボーイズの代表だという年輩風の男性だった。
名前は黒川孝二。
電話での語り口からだけでも押しとクセの強さが伝わってくるようだったが、用件は9月を前にしたこの時期、まだ進路の決まっていない中学3年生にまつわるものだった。つまりは大阪天栄で推薦で獲ってくれないか、という“相談”だ。黒川は選手個々の特徴を挙げながら、合間にはチラチラとこちらの気をくすぐる話も交えてきた。
「いやいや、いつも付き合いのある地方の高校からもいろいろ誘いがあるんやけど、本人たちが通えるところでやりたい言うんで、天栄さんはどうかな思ってね。僕らの時代、大阪天栄いうたら強豪中の強豪やったから、個人的にはいつも気になっとったんです」
「セカンドを守っとる沢村公一いうのは、背は小さいけどええ根性しててチームを引っ張るタイプ。左の篠木裕次郎いうピッチャーは、今は120キロも出えへんけど投げ方がええし、左やから面白い。あとは頭の回転が早くて勉強もできる外野と、当たったらなかなか強い打球飛ばす左。僕が高校の監督やったら、結構、おもろいなと思う選手ばっかりや。天栄さんの夏の戦いも見せてもらって、昔の雰囲気が戻ってきそうな感じもしたから、久しぶりに連絡させてもらおうかなと思うてね。大阪天王大付属さんとか北城さんとかにも毎年選手を送っとるんですけど、今回は天栄さんに早く電話させてもらったいうことです」
佐伯は<調子のいいことを……>と思いつつ、むげにはできない。少年野球チームとのつながりは素材豊かな人材を得るためには大切な一歩。そういえば……とまた思い出すことがあった。
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