週刊ドラフトレポート2025(毎週金曜日更新)

センバツ出場選手のドラフト評価は? 巨人・丸を彷彿とさせる名門センター、強打が自慢の大型二塁手

西尾典文

この春のセンバツにも出場している横浜・阿部葉太(左)と青森山田・蝦名翔人(右) 【撮影:西尾典文】

 秋に行われるドラフト会議に向けて、年間400試合以上のアマチュア野球を観戦し、ドラフト中継番組では解説も務めるベースボールライター西尾典文さんが、有望なアマチュア選手を毎週レポートします。

 今回紹介するのは、阿部葉太(横浜・外野手)と蝦名翔人(青森山田・二塁手)の2人。現在熱戦が続いている選抜高校野球に出場し、プロのスカウト陣からも高い注目を集めていたプレーぶりを解説します。

2年夏から名門で主将、高校球界を代表する強打の外野手

巨人・丸を彷彿とさせるパワーヒッターの阿部は守備範囲の広さにも定評がある 【撮影:西尾典文】

阿部葉太(横浜 3年 外野手 179cm/88kg 右投/左打)

【将来像】丸佳浩(巨人)

外野手としての総合力の高さと長打力を備えたプレーぶりは丸と重なる
【指名オススメ球団】阪神
近本光司の後継者となれるセンター候補として
【現時点のドラフト評価】★★☆☆☆
支配下での指名濃厚

 昨年秋の明治神宮大会では松坂大輔(元西武など)を擁した1997年以来の優勝を成し遂げた横浜高校。能力の高い選手が多いチームで、野手の中心的存在と言えるのがセンターの阿部だ。愛知県の出身で中学時代は愛知豊橋ボーイズでプレー。高校でも入学直後からレギュラーとなると、昨年夏には2年生ながら主将も任せられて話題となった。夏の神奈川大会では決勝で東海大相模に敗れてあと一歩のところで甲子園出場を逃したが、秋は不動のリードオフマンとしてチームを牽引し、関東大会、明治神宮大会での優勝にも大きく貢献している。

 迎えた選抜高校野球初戦の市和歌山戦、阿部は随所に能力の高さを見せた。この日、特に際立っていたのが走塁面だ。1回表の第1打席に相手のエラーで出塁すると、すかさず盗塁を決めてさらに相手のミスを誘って三塁へ進塁。3番の為永皓(3年)のセカンドゴロにも素早くスタートを切って、先制のホームを陥れて見せた(記録は野選)。脚力だけでなく、常に次の塁を狙う姿勢には素晴らしいものがある。8回の第5打席でも振り逃げで出塁し、相手のミスを逃さずに2つの暴投で三塁まで進塁したが、試合終盤でも集中力を切らすことなく、スタートも抜群だった。

 一方で長所と課題の両方が見えたのが打撃面だ。ツーアウト一塁で迎えた2回の第2打席では初球を振り抜いてライト線へのツーベースを放ち、さすがのパワーを見せたものの、ヒットはこの1本に終わっている。上半身も下半身もよく鍛えられたたくましい体格で、全身を使ってフルスイングできるのは魅力だが、どうしても力んで上体が突っ込むようなスイングになることが多い。第1打席では低めの緩いカーブを引っ掛け(記録はファーストのエラー)、第5打席の振り逃げもワンバウンドになるスライダーを空振りしたものだった。見る度に右足の上げ方やタイミングをとる動きが変わっており、まだまだ調子の波が大きい。色々と試行錯誤している様子が見えるのは好感が持てるが、パワーアップした体をまだ上手く使いこなしきれていないように見える。力任せに引っ張るような打撃になることが多いだけに、もう少し上半身の力を抜いてじっくりとボールを長く見て、左方向へも強い打球を放つことができるようになれば相手にとってはさらに怖い打者となるはずだ。

 ただそれでもセンターの守備も落下点に入るスピード、球際の強さなどは際立っており、シートノックでもそのプレーぶりは一人だけレベルが違うように見えた。外野手としての総合力は高校生としてはトップクラスであることは間違いない。また2年生からキャプテンを任さられていることからも分かるように、ネクストバッターズサークルなどからも積極的に声をかけ、チームを鼓舞するようなリーダーシップがあるのも魅力である。順調にいけばU-18侍ジャパンにも選ばれる可能性も高く、プロ志望ということになれば若手の外野手が不足している球団にとって狙い目の選手となりそうだ。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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