センバツ出場を逃した大阪桐蔭、履正社の現在地 逆襲の夏へ——大阪2大強豪校の可能性は?

沢井史

センバツの連続出場が4年で途切れた大阪桐蔭は、夏に向けて、この冬に厳しい練習を積んできた 【沢井史】

 ともに優勝候補に挙げられていた昨秋近畿大会で初戦敗退し、センバツ出場を逃した大阪桐蔭と履正社。両校はその悔しさを糧に、夏に向けて鍛錬を続けている。全国トップレベルの強豪校である大阪の両雄は、夏にリベンジを果たせるのか。まずは4月に始まる春季大会がその試金石となる。

例年のようにパワーのあるバッターはほとんどいない

昨秋の大阪大会を制した履正社だが、続く近畿大会では初戦敗退。多田監督が敗因に挙げた「対応力」がどれだけ身に付いたか。春季大会での戦いぶりに注目だ 【沢井史】

 98年ぶりに大阪勢がゼロとなった今年のセンバツ。大会もいよいよ佳境となり、決勝戦が終われば高校野球界は春の大会、そして夏の大会に向けた準備が一気に加速する。センバツではその姿を披露することはできなかったが、毎年大阪の覇権争いを繰り広げている“あの2校”の指揮官に、チームの現在地、そしてこの先の戦いに向けた思いを聞いた。

 まずは昨秋の府大会を制した履正社。近畿大会には大阪1位校として出場したが、初戦で滋賀短大付に1-4で敗れた。

 多田晃監督に昨秋の府大会の勝ち上がりから振り返ってもらうと、大差で勝った試合が目立つものの「苦しい試合も多かった」という。

「秋は大阪で優勝させてもらいましたけれど、初戦の大阪戦や5回戦の興国戦は相手投手に抑えられて、接戦を何とか勝ちました。4回戦の関大北陽戦も前半は接戦で、後半になんとか点差をつけて勝てたゲーム。しんどい試合は多かったですね」

 それでも決勝では、森陽樹、中野大虎という大阪桐蔭の2本柱から12安打・8点を奪った。ただ、近畿大会ではその打棒が振るわなかった。

「今年のチームは例年のようにパワーのあるバッターはほとんどいません。近畿大会では滋賀短大付の(エース左腕の)櫻本(拓夢)君の投球術に抑えられてしまったという感じでした。負けた要因は力の差というより、対応力がまだまだだったと思います」

春季大会は夏の大会のつもりで戦っていく

秋の大会で主戦投手を担ったのは、二遊間コンビの辻と矢野(写真)。彼らの負担を軽減するためにも、頼れるピッチャーの台頭が待たれる 【沢井史】

 現チームは旧チームからメンバーがほとんど入れ替わり、レギュラーでは辻琉沙、矢野塁の二遊間コンビのみが残った。野手として堅守ぶりを見せる2人だが、ともに投手としてマウンドにも上がる。秋の大阪桐蔭戦、滋賀短大付戦で先発投手を務めた辻は、変則フォームからキレのある変化球を投げ分け、バッターにとっては的が絞りにくい。

 ただ、例年の履正社は絶対的な背番号1のエースがいて、そのことで強力打線も一層際立っていた。夏の甲子園で初の全国制覇を果たした2019年は清水大成(早大→東邦ガス)がエースで、さらに2年生の岩崎峻典(東洋大→ソフトバンク)も存在感を発揮。春夏連続で甲子園に出場した2023年は、福田幸之介(中日)、増田壮(近大)と太い2本柱のいたことが大きかった。

 現チームは秋の時点では古川拓磨がエースナンバーを背負っていたが、大一番は辻と矢野でマウンドを分け合うことが多かった。

 多田監督は続ける。

「辻も矢野も前のチームからマウンドに立っていましたし、(滋賀短大付戦で先発投手に辻を起用したことは)特に奇策でもなんでもありません。辻ならやってくれると思って送り出しました。ただ、野手も兼ねているので、確かにいろんな負担はあったとは思います」

 現チームの課題は、とにかく経験を積むことだと多田監督は言う。

「去年は足を活かしながら攻撃につなげていきましたが、今年はセーフティも多用していこうと。練習試合も3月、特に春休みはいつもの1.5倍は試合を組みました。センバツに出場する学校さんとも多くさせてもらって、完敗した試合もありました。それでも経験していかないとバッティングの技術は高めていけませんからね。実戦も練習と思いながら試合をしていって……。(勝敗は)なんとか勝ち越せるくらいの結果を残せたらと思っています」

 春休みが終われば春の府大会も開幕する。

「春の大会は夏の大会のつもりで戦っていこうと思っています。特にウチは、最近夏のシードを取れない大会が続いていますので、なんとかシードを取れるところ(府大会ベスト16)までは勝たないと。まずはこの3月に何かを掴んでいけたらと思います」

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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