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鹿島で勝者のメンタリティを培った青木剛
社会人リーグに身を置いた理由とは?
熊本で結果を残せず、「引退も考えた」という青木剛。いろんな人との出会いが未来への道へとつながった
熊本で結果を残せず、「引退も考えた」という青木剛。いろんな人との出会いが未来への道へとつながった【撮影:熊谷仁男】

 常勝軍団に15年半在籍。21世紀序盤の鹿島アントラーズを支えた青木剛は、大きな負傷なしに最終ラインと中盤の底を務め上げた稀有(けう)な存在だった。怪我がちだった羽田憲司や金古聖司が本来のポテンシャルを発揮しきれず才能を惜しまれつつキャリアを終えたことを思えば、まさに“やりきった”感がある。それでも鹿島でサッカー人生を終えずに他クラブへの移籍を選択し、ついには東京都社会人リーグ1部を戦場に選んだのはなぜなのか。J1時代の威光も衰えぬ天上人が一般的なプレーヤーの野に降りてきてしまった感のある不思議を、現場にお邪魔してのインタビューで紐解いた。

下仁田ネギと鉄人の肉体

故郷の名産が南葛SC加入のきっかけに?
故郷の名産が南葛SC加入のきっかけに?【撮影:熊谷仁男】

――青木さん、丈夫ですよね。ここまでを振り返ると、大きな怪我による長期の離脱がない。


 恵まれていましたね。一番休んだ期間でも1カ月以上休んだことはなかったかと。


――もともと怪我をしにくい体質なんですか?


 昔からというわけではなく、徐々に食事やトレーニングに気を遣うようになり、体調管理を突き詰めてきた結果です。サッカー選手は体が資本ですから、食事、睡眠、そしてトレーニング、この3つのバランスが大事だと思っています。よく、習慣とかルーティンと呼ばれるものがありますよね。それを確立していって、ただしあくまでも人それぞれですから、自分なりに試しながらいいと思ったことは取り入れ、少しずつ自分なりのリズムというかサイクルを決めていったという感じです。


――栄養学の学説や食育の情報もまちまちですよね。普遍的にそれが正しいかどうかは断言できない。


 はい。いろんな考え方があって、まず野菜から食べて次に肉という人もいれば、野菜よりも先にスープを入れた方がいいという人もいます。この場合は胃を温めるというか、ウォーミングアップさせる、そういう狙いです。そのように、本当に人それぞれだな――というのが最終的な結論にはなってしまいますね。たとえ自分が「これにこだわっています」と言っても、「それにはこだわってないけど、特に体調悪くなってないよ」という人はいますし。サッカー選手というと、ストイックに節制して体調を維持するタイプの人を思い浮かべるかもしれませんが、細かいことをまったく気にせずに好きなものを食べて、好きなことをやって、それでいてなんともない、長く現役を続けている、そういう人もいます。どうしても個人差はあるんですけれども、だからこそ自分なりに、自分に一番合ったものを、ということですね。


――どうでしょう、そこまで徹底していると、なかなか衰えを感じないのでは?


 でも正直なところ、30歳を過ぎたくらいから、試合中の例えば後半30分過ぎになった時に、ああもう足がつりそうだなと、そういう20代の時には感じていなかった変化が出てきて、体の使い方とかそういうところで改善の必要を感じていました。31、2歳の頃ですね。そのくらいの時に、さきほどお話したルーティンのところでまた違う取り組みを始めたり。食事の摂り方も、年々変えてきています。炭水化物を摂らない「グルテンフリー」など、諸説あるいろんな考え方を試しているんですけど、でもそうしたこだわりがすべてじゃなくて。たまには好きなものを食べる日があってもいいと思いますし、あとはお酒もたまに入れて、リラックスして気持ちを緩めることも大事なのかなと。人間、張り詰めっぱなしだと、ずっと伸ばしているゴムがパチーンと切れてしまいそうな状態に似たようなものだと思うので。どちらかというと、僕は考え過ぎてしまったり、悲観的になってしまうタイプなんですよ。張り詰める一方だと、どんどんきつくなってしまうので、自分を緩めてあげないと。


――徹底する人もいる?


 本当にこだわっている人は中澤佑二さん(元横浜F・マリノス)もそうですね。うまく食事のバランスをとっている選手もいると思います。自分は今言ったように、少し緩めますけど。


――サガン鳥栖やロアッソ熊本に所属していた時は単身赴任だったと聞いていますが、生活面の変化はありましたか?


 30歳を過ぎて取り組み始めたトレーニングがだんだん自分になじんできて、手ごたえを得られるようになった頃でした。仰るように、九州へは単身で行っていたので、食事の面でかなり気を遣わないといけない状況だったんですけど、本当に周りの方々との出会いに恵まれて、食事の面ではまったく心配しなくていい生活を送りました。鹿島に在籍していた時もかなり人に恵まれていたと思いますけど、九州に行っても勉強になるくらい飲食店の方に助けていただいたり、出会いに恵まれているなと感じます。


――そういえば、見識を買われて食に関する講演をされたそうで。下仁田ネギでしたっけ?


 その話、ご存知なんですか(笑)? 「アスリートの考える食とは」というテーマの講演会に、なぜか僕がサッカーの仕事じゃなくて、そういうお題の催しで呼ばれて。それは昨年、熊本でのことだったんですけど、その冒頭で僕が群馬出身ということで「群馬で有名なものといえば『下仁田ネギ』」と言おうとしたんですけど、ろれつが回らなくて「下ネタネギ」と言ってしまったんですね。すると聴衆のみなさんはどっ、と沸いて「狙って言ったのか。やりよる」「話うまいな」みたいな反応で(笑)。滑舌が悪くて噛んじゃっただけなんだけど、まあつかみはOKということで良かった。怪我の功名ですね。結果オーライで話をうまく始められたので。


――おもしろキャラだと思われてしまった。


 自分としては、あまり喋りは上手ではないと思っているんですけどね。実はこの講演会が後々、南葛SCへの加入につながってくるところもあるんですよ。あとであらためて説明しますけど。

後藤勝

サッカーを中心に取材執筆を継続するフリーライター。FC東京を対象とするWeb/メールマガジン「トーキョーワッショイ!プレミアム」(http://www.targma.jp/wasshoi/)を随時更新。著書に小説『エンダーズ・デッドリードライヴ 東京蹴球旅団2029』(カンゼン刊 http://www.kanzen.jp/book/b181705.html)がある。【Twitter】@TokyoWasshoi

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