連載:私たちが現役を諦めない理由

鹿島で勝者のメンタリティを培った青木剛 社会人リーグに身を置いた理由とは?

後藤勝

とある人からの突然の電話

来シーズンへの展望がまったくイメージできなくなった時に… 【撮影:熊谷仁男】

――では。その前に、ひとつおうかがいしていいですか? 15年半も鹿島ひと筋だったじゃないですか。そのまま鹿島でキャリアを終えようという考えに傾いたことはなかったんですか?

 鹿島にはものすごく長く在籍していたので、もちろん、ひとつの選択肢として鹿島でサッカー人生を全うする考えもありました。でも自分も年齢を重ねてきて、公式戦の出場機会も少なくなってきたなかで、サガン鳥栖さんからオファーをいただいた。その時に鹿島で終えるのか、まだまだサッカーを続けるにあたって、ほかのチームでもう一度挑戦するか、という選択になりました。そこで後者を選んで、もう一回新しいチームで新しいチャレンジをすることが自分にとって成長につながると思い、鳥栖に移籍する決断をしました。

――鳥栖のあとはロアッソ熊本へと移籍しました。熊本との契約はどうなっていたんですか?

 契約期間は残っていました。複数年契約だったのでもう1シーズン契約はあったんですけど、去年1年間シーズンを戦っているなかで自分が次の1年をまったくイメージできるような状態でなくなってしまって、自分のなかでいろいろ考えて、サッカーをやめることも考えましたし、サッカーをしているなかでつながることもあったので。

――鳥栖はJ1、熊本はJ2でしたから、移籍を考えたのは理解しやすい。しかし今回はJ3、JFL、関東リーグ1部、関東リーグ2部と来て、ようやく南葛SCが属する東京都リーグ1部です。

 例えるとJ7ですよね。

――落差が大きい。たしかに、有力なチームが多く競技志向になってくる東京都2部くらいからは、“元J”の選手を見かける機会は増えますが……。

 そうですね。この前対戦したチームにも元Jリーグの選手もいましたし、チームメイトにもJ経験者がいるので、カテゴリーが7部だからといって、それに抵抗を感じているわけではないです。

――ノックアウト方式の関東社会人サッカー大会がボトルネックになって関東リーグ2部に上がれなかった強豪が滞留することもあり、都リーグ1部から関東リーグ1部くらいまでは実力差が少ないと思います。元Jの選手が初めて出た都リーグで苦戦している様子を見たこともありますし。ただ、ほんの少し前まで鹿島でプレーしていて、かつ日本代表にもなった選手がこのカテゴリーにやってくるとなると、やはりインパクトが強い。

 そこが南葛SCへの移籍につながってくるんですけど、実は昨年まで東京ユナイテッドFCにいた岩政大樹さん(元鹿島アントラーズ)から電話がかかってきたんですよ。

――岩政さんから!?

 はい。「来年どうするんだ」と。

<後編に続く>

(企画構成:株式会社スリーライト)

青木剛(あおき・たけし)

【撮影:熊谷仁男】

1982年9月28日生まれ。群馬県出身。前橋育英高校から2001年に鹿島アントラーズへ加入し、2007年から2009年にかけて、鹿島でJ1リーグ3連覇に貢献。2008年には日本代表に初招集され、国際Aマッチ通算2試合に出場した。鹿島には2016年途中まで在籍し、その後はサガン鳥栖でプレー。2018シーズンから出場機会を求めて、ロアッソ熊本へ完全移籍で加入し、J2リーグでは26試合に出場。通算ではJ1リーグ400試合出場8得点、J2リーグ通算26試合出場0得点を記録。2019シーズンは南葛SCに完全移籍し、プレーを続けている。

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著者プロフィール

サッカーを中心に取材執筆を継続するフリーライター。FC東京を対象とするWebマガジン「青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン」 (http://www.targma.jp/wasshoi/)を随時更新。「サッカー入門ちゃんねる」(https://m.youtube.com/channel/UCU_vvltc9pqyllPDXtITL6w)を開設 。著書に小説『エンダーズ・デッドリードライヴ 東京蹴球旅団2029』(カンゼン刊 http://www.kanzen.jp/book/b181705.html)がある。【Twitter】@TokyoWasshoi

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