“世界3強牝馬”の夢対決は実現するか? 香港で聞いた外国騎手・メディアの評価

山本智行

香港国際競走は地元馬が史上初の4連勝

今年の香港国際競走は4レース全てで地元馬が勝利……香港ヴァーズ2着のリスグラシュー(右)をはじめ日本馬は未勝利に終わった 【写真:有田徹】

 12月9日にシャティン競馬場で行われた「ロンジン香港国際競走」は地元の香港馬が史上初の4連勝を決めた。強力布陣で臨んだ日本馬は「カップ」「マイル」「ヴァーズ」の3レースでいずれも牝馬が2着に奮闘。この結果を見届け、改めて願ったのが“世界3強牝馬”の夢対決だ。アーモンドアイ、エネイブル、ウィンクスが一戦を交えるなんて、話がちょっと飛躍しすぎだろうか。

日本馬に立ちはだかったZ・パートンとF・ロー調教師

香港の新鋭トレーナー、F・ロー調教師(右)が「カップ」「スプリント」の2勝を挙げるなど大きな壁として日本馬陣営に立ちはだかった 【写真:山本智行】

 その頂は、いつの間にか高くなっていた。週半ばの蒸し暑さがうそのようにぐっと冷え込んだシャティン競馬場での香港国際競走。GI馬6頭を含む9頭の精鋭で臨んだ日本勢は香港馬の厚い壁にはね返され、まさかの未勝利に終わった。「うまくいけば2勝、あわよくば3勝」と私自身思っていたから意外な結果。これで香港での勝ち星は2年間遠ざかり、2011年から続いていた海外でのGI勝利も途絶えた。

 立ちはだかったのは「マイル」のビューティージェネレーションと「ヴァーズ」のエグザルタントで勝った名手、Z・パートンと「カップ」のグロリアスフォーエバーと「スプリント」のミスタースタンニングで2勝を挙げた敏腕のF・ロー調教師だった。

「すばらしい出来事。信じられない」とは開業2年目で国際競走を2勝もしたロー調教師。レース後、SNSつながりの彼とは2度ガッチリと握手したが、一体どんな仕上げを施しているのか。今度じっくり聞いてみよう。

ディアドラ橋田厩舎、込山助手の思い

 もちろん、日本勢はベストを尽くした。国際競走のオープニングを飾る4R「ヴァーズ」ではリスグラシューが後方で脚をため、まくって出ると直線で一端は先頭へ。5R「スプリント」のファインニードルはゲート内で10分近く待たされ戦意を喪失する不運。これはノーカウントでいいのではないか。

 7R「マイル」では勝ち馬の強さばかりが目立ったが“大魔神”佐々木主浩オーナーが見守る中、引退戦のヴィブロスが健気な走りで2着に浮上。メーン8R「カップ」でもディアドラがゴール直前で昨年の勝ち馬タイムワープを交わし、兄弟ワンツーフィニッシュを阻止している。

 どの陣営も香港にかける思いは半端ではなかった。毎年のようにチャレンジを続ける池江泰寿調教師は今回、ペルシアンナイトで「マイル」に参戦。春の「チェアマンズスプリント」で4着に敗れたファインニードルの高橋義忠調教師も国内でのGI勝ちをひとつ加え、リベンジに燃えていた。

ディアドラの持ち乗りを務める込山助手、「四半世紀分の思い」は惜しくも届かなかった 【写真:有田徹】

 歴史の重みで言えば、ディアドラの橋田満調教師だろう。1997年サイレンススズカで「カップ」に挑戦。その後もロイヤルスズカ、アドマイヤコジーン、アドマイヤマックスなどを送り込んできた。

「サイレンスのときはコーナー2つの1800メートルだったよね。いまは2000メートルになってGIに。香港では結構いいところまで来ているのでそりゃ、勝ちたいですよ」

 今回はアドマイヤメイン以来12年ぶりの香港。66歳になった橋田調教師は自分のことより、二人三脚で長年歩んできた込山雄太調教助手の心中を思いやった。

「僕ぐらいの歳になると変な気負いはないけれど、込山は勝ちたいんとちゃう。ましてや今回は持ち乗り(助手)やからね。もともと彼は馬の世話をするのが大好きやってんから」とトレーナー。当の込山助手も「うちにとったら四半世紀分の思いがこもっている。何とか」と意気込んだ。

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著者プロフィール

やまもと・ちこう。1964年岡山生まれ。スポーツ紙記者として競馬、プロ野球阪神・ソフトバンク、ゴルフ、ボクシング、アマ野球などを担当。各界に幅広い人脈を持つ。東京、大阪、福岡でレース部長。趣味は旅打ち、映画鑑賞、観劇。B'zの稲葉とは中高の同級生。

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