新生オランダ代表の強みは3人のCB クーマン監督が進める「W杯後」への準備
クーマン監督の選出に多くの国民が納得
W杯への出場を逃したオランダは、クーマン監督(右)のもと新たなスタートを切った 【写真:ロイター/アフロ】
一方、欧州予選でフランス、スウェーデンに力負けし、W杯出場を逃したオランダにとって、このインターナショナルマッチウイークは「未来」へのスタートだった。
今年からオランダの指揮を執るのはロナルド・クーマンだ。現役時代はオランダの3大クラブ(アヤックス、フェイエノールト、PSV)でプレーし、指導者としても采配を振るった。国際的な名声も文句なしのクーマンこそ、「新生オランダ代表の監督に相応しい」と、多くの国民が納得している。
酸いも甘いも経験して成熟していくのが監督業というもの。オランダ国民は、監督・クーマンのバレンシア、AZ、エバートンでの失敗を見てきたが、PSV、フェイエノールト、サウサンプトンでの成功も見てきた。自国の代表監督として、機は熟したのだ。
2014年W杯ブラジル大会でオランダが3位に輝いたのは、もはや遠い昔の思い出だ。オランダは16年のユーロ(欧州選手権)、そして6月のW杯ロシア大会と2大会連続でビッグイベント出場を逃してしまった。ウェズレイ・スナイデル、アリエン・ロッベンが代表チームを去り、現在のオランダにビッグネームはもういない。
親善試合の相手が、現地時間3月にイングランドとポルトガル、5月にスロバキア、6月にイタリア、 10月にベルギー、そして9月に開幕するUEFA(欧州サッカー連盟)ネーションズリーグではフランス、ドイツと同組になったことから「18年のオランダは全敗するかもしれない」という声も、実はあった。つまり、「自分たちは弱い国」ということを受け入れた上で、オランダはチームビルディングすることができる。こうした背景を知った上で、3月のインターナショナルマッチウイークのオランダを振り返ると面白い。
3バックから逆算してシステムを組む
敗れたものの、ファン・ダイク(左)らが固める守備はイングランドの攻撃を跳ね返し続けた 【Getty Images】
「攻撃サッカーの国」「ポゼッションサッカーの国」。オランダのストロングポイントは、以前は破壊力のあるアタッカーたちだった。システムも3トップから逆算して4−3−3に選手を並べていた。しかし、今のオランダには、そこまですごいアタッカーは残念ながらいない。
ところが、フィルジル・ファン・ダイク(リバプール)がプレミアリーグ屈指のCBに育ったように、意外とオランダのCBは高い実力を持っている。
実は、13年頃から、オランダにはCBのタレントが何人か出始めていた。その中で、国際的なプレーヤーに育ったのがステファン・デ・フライ(ラツィオ)とファン・ダイクだった。
マタイス・デ・リフトは、ちょうど1年前、アヤックスの一員としてヨーロッパリーグのコペンハーゲン戦で先発に抜てきされてセンセーションを起こしたCBだ。18歳ながら、デ・リフトのフィジカルと安定感はインターナショナルレベルにある。
このファン・ダイク、デ・フライ、デ・リフトのCBトリオを、クーマン監督はイングランド戦で並べた。つまり、クーマン監督は3バックから逆算してシステムを組んだのだ。
結局、オランダはイングランドに0−1で敗れてしまった。それでも、この3人がゴール中央を固めるオランダの守備の固さはこれまでにないものだった。イングランドのシュートはことごとくオランダ守備陣の身体に当たって跳ね返されてしまった。