W杯行きに黄信号がともるオランダ代表 フリットの絶賛コメントに世論はいら立ち

中田徹

ブルガリアに勝利しグループ3位に浮上も……

オランダ代表はブルガリアに勝利しグループ3位に浮上。W杯出場へ臨みをつないだ 【写真:ロイター/アフロ】

 辛うじて、オランダはまだワールドカップ(W杯)ロシア大会行きの可能性を残している。8月31日(現地時間)、パリで行われたフランス戦で0−4という歴史に残る完敗を喫したオランダは、この時点で欧州予選グループAの4位。しかし、9月3日、アムステルダムで3位ブルガリアを3−1で倒し、再び3位に浮上した。

 オランダは10月7日にまずボリソフでベラルーシと戦い、3日後に2位スウェーデンとアムステルダムで最終戦を戦う。この10月シリーズを連勝すれば、少なくともオランダはスウェーデンと勝ち点で並ぶ計算になる(スウェーデンが7日の試合に勝った場合)。

 だが、オランダに追い上げムードはない。スウェーデンとオランダとの間には得失点差で6もの開きがあるのだ。『アルヘメーン・ダッハブラット紙』が実施したアンケートでは、まだオランダの予選突破を信じているのは13%。残り87%は無理だと諦めている。

 ブルガリア戦後の記者会見場では、ひな壇(だん)に上がったディック・アドフォカート監督にオランダ人記者たちが「何で追加点を狙いにいかなかったのか?」と詰問をあびせ続けた。誰も挙手すらせず、ただひたすらアドフォカート監督を責めた。

――終盤は、もっと縦にボールを入れて、追加点を狙うべきだったのでは?

 縦に蹴ろって!?

――つまり、スウェーデンが前半のうちにベラルーシを3−0でリードしていた(試合結果は4−0)から、得失点差を考えるとオランダはもっとゴールを決めるべきだった。

 フランス戦は批判を受けても仕方のない試合だった。しかし、今日のオランダはよくやったと思う。3−1というスコアはいい結果だったと思う。

――バス・ドストを入れなかったのは、なぜ?

 今日のビンセント・ヤンセンは良いプレーをしていた。1枚MFを削って、ヤンセンとドストの2トップにしたところで、サッカーというのはチャンスが増えるものではない。

――今日のヤンセンは全くゴールに絡めなかった。私は、良いストライカーというのは良いプレーをすることではなく、ゴールを決めることだと思っている。メンフィス・デパイやドストを入れてもよかったのではないか?

 私はあくまで今日のヤンセンは良かったと思っている。ともかく、スウェーデンができたこと(注:ベラルーシにアウェーで4−0で勝つこと)は、オランダにもできる。私はポジティブだ。別にネガティブな議論をしてもいいけれど、それは君たちがやってくれ。私はそんな議論に加わる気はない。

議論を呼んだ「ファンタスティック・ゲーム!」

国民の不満が溜まる内容となったブルガリア戦をフリットコーチ(左)は「ファンタスティック・ゲーム!」とコメントした 【写真:ロイター/アフロ】

 そのころ、オランダはロッカールームでもひと悶着(もんちゃく)が起きていた。アシスタントコーチのルート・フリットが、試合直後のロッカールームの様子を動画に撮り、実に満足げな表情で「ブルガリア相手に3−1。ファンタスティック・ゲーム!」というコメントも加えて自身のSNSに載せてしまったのだ。

 フットボーラーにとって聖域のロッカールーム。その様子をSNSにあげるのはタブーである。後からこのことを知ったアドフォカート監督は「ちょっと理解し難い」とビックリしていた。フリットはその後、謝罪のコメントを出している。

 だが、オランダ人がビックリしたのは、フリットコーチが「ファンタスティック・ゲーム!」と満面の笑みで語っていたことだった。解説者のヤン・ムルダーはベルギーのテレビで言った。

「私にとっては、ロッカールームの様子をSNSにあげたことはどうでもいいこと。問題はルートがブルガリア戦を『ファンタスティック・ゲーム!』と言ったことだ。この試合は、オランダ代表の歴史の中で最もひどい試合だった。それが『ファンタスティック・ゲーム』だなんて“皮肉”ととらえるのが普通。だが、監督やコーチがそんなことをするわけがない。ルートは『うれしさのあまり熱くなりすぎてしまった』ということだった。私には全く理解できない」

「オランダ代表史上最もひどい試合」というのはムルダー特有の誇張だと思う。私個人は、「あの“0−4”の大敗から、テクニカル・スタッフはブルガリア戦に向けてよくマネジメントをして、しっかり勝ったな」という感想を持っている。しかし、攻撃サッカーの国オランダには、ブルガリア相手に実力の差をもっと点差で示してほしいという高い要求がある。スウェーデンとの得失点差が、オランダの明暗を決めることになりかねない状況ではなおさらだ。

 せっかく開始7分に鮮やかな攻撃から先制点を決めたのに、なぜ、そこから試合が停滞してしまったのか。なぜ、終盤、追加点を奪いにいかなかったのか。なぜ、ジョルジニオ・ワイナルドゥムはリバプールでのプレーを、代表チームで還元できないのか……。多くの「なぜ」がオランダ人の頭の中に積もっている。だからフリットコーチの「ファンタスティック・ゲーム!」という言葉に、彼らはいら立ちを隠せないのだ。

 かつての名選手、ビーレム・ファン・ハネヘムは『アルヘメーン・ダッハブラット』紙の定期コラムで「もう私はオランイェ(オランダ代表の愛称)がW杯にいくとは信じていない。この2試合(フランス戦、ブルガリア戦)のオランダは、かつてないほどひどすぎた。ブルガリア戦で2−0とした後、すぐにボールを拾って3点目を奪いにいくべきだったのに、誰もそうしなかった。『これでオランイェも終わったな』とわれわれは皆、感じたのではないか」と手厳しく書いた。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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