新生オランダ代表の強みは3人のCB クーマン監督が進める「W杯後」への準備

中田徹

中盤を修正し、ポルトガル戦は3バックが躍動

2試合続けて出場した18歳のデ・リフト(左)はポルトガル戦で攻撃でも活躍 【Getty Images】

 イングランド戦で高評価を得た最終ラインの守備だったが、ビルドアップとクリエイティビティーには物足りなさを感じた。

 イングランド戦のオランダは、システムを「3−4−3」とするメディアが多いが、「5−2−3」とした方が頭の中でシステムをイメージしやすい。「5」は3バックにウイングバック(WB)、「2」はコントロールMF、「3」は3トップだ。イングランドのMFは3人だったので、オランダは中盤で「2対3」の数的不利に陥った。 

 26日のポルトガル戦に向けて、クーマン監督は中盤の再構築に迫られ、「5−3−2」にすることによって中盤を厚くした。すると今度はイングランド戦とは逆に、オランダが中盤で「3対2」の数的優位を作ることになった。

 その結果、ポルトガル戦はどうなったか? オランダが誇る3バックが攻守に機能して3−0で快勝したのだ。

 ポルトガル戦の3バックは、右からデ・リフト、ファン・ダイク、ナタン・アケと並び、デ・フライはベンチスタートだった。このトリオは攻守に、後顧の憂いのない思い切った前へのプレーを見せた。守備では、相手のFWをいったん捕まえたら、自分のポジションから離れても執拗(しつよう)にマークし続けた。それも、後ろにCBが2枚残っているからできることだ。攻撃では、ボールを奪ったら、彼らはその推進力を生かして前へ出ていった。こうして守備ではクリーンシートを達成し、攻撃では全3ゴールにCBが絡んだ。

W杯後に向けた準備はもう始まっている

W杯後に向けたオランダの準備はもう始まっている 【Getty Images】

 1点目は11分、カウンターから決まった。アタッキングサードでファン・ダイクが大外を走った右WBのケニー・テテにパスを出し、最後はMFドニー・ファン・デ・ベークからメンフィス・デパイにつながり先制ゴールが決まった。

 2点目は32分。デ・リフトがワンツーから右サイドを抜け出し、高速のクロスをセンターFWのライアン・バベルにピンポイントで合わせて決まった。

 3点目は前半のアディショナルタイムにセットプレーから。右サイドからメンフィスの蹴ったFKをファーサイドでデ・リフトが落とし、これをファン・ダイクが豪快に右足で蹴り込んだ。

 とりわけ、流れの中から生まれた1点目、2点目は、彼らの攻撃参加のセンスの高さが表れていた。前線に駒が少ない分、スペースはある。14年のW杯でオランダが3位になった時、ルイ・ファン・ハール監督も5バック戦術を採用したが、これはロッベンのスピード、テクニック、チャンスメーク力、得点力を最大限に生かすためのものだった。しかし、今のオランダはFWにビッグネームがいない。ならば最終ラインのタレントを生かすまで。それが、クーマン監督の頭の片隅にあるのではないか。

 密かにオランダ人が狙っているのは、9月9日、ネーションズリーグの第2節でフランスに一泡吹かせること。W杯直後のシーズン明けの国際試合は、どこの国にとっても難しい。

 W杯で勝ち上がれば勝ち上がるほど、フランスの達成感は高まり、油断が生まれ、疲れも残る。そこをオランダは突く。W杯後に向けたオランダの準備はもう始まっている。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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