イタリア戦でオランダに少し戻った“色気” W杯出場が遠のき、ブリント監督は解任

中田徹

オランダ優位予想も、敵地でブルガリアに完敗

オランダはW杯予選でブルガリアに0−2で完敗した 【Getty Images】

 2018年のワールドカップ(W杯)ロシア大会出場を目指し、欧州予選グループAを戦うオランダは3月25日(現地時間)、敵地ソフィアでブルガリアに0−2という完敗を喫した。ユーロ(欧州選手権)2016の本大会出場を逸するなど、オランダのFIFA(国際サッカー連盟)ランキングは21位(3月9日付)と落ちる一方。それでもブルガリアの同ランキングは71位で、ブルガリア紙も含めて誰しも「オランダ優位」と見ていた。

 しかも、今予選のブルガリアはルクセンブルク、スウェーデンに3失点、フランスに4失点しており「守備に難のあるチーム」と地元でも不安視されていた。そんな相手にオランダはたった3度しかチャンスを作れなかったのだから寂しい。

 試合前日、ダニー・ブリント監督の記者会見で、ブルガリア人記者が同国のスター選手であるイベリン・ポポフの印象を尋ねた。

「私は最近、ブルガリア代表の試合の映像をたくさん見た。ポポフは(オランダ代表FWクインシー・プロメスと同じ)スパルタク・モスクワというロシアリーグのトップチームでプレーしており、とても良い選手だ。だけど私にとって興味があるのは、いかに選手がチームで機能しているかであり、個々の選手ではない」

 このブリントの答えは試合当日、本人にブーメランとなって返ってきた。DF、MF、FWといういずれのラインも壊れてしまったオランダ代表だったが、中でもケビン・ストロートマン(ローマ)、ジョルジニオ・ワイナルドゥム(リバプール)、デビー・クラーセン(アヤックス)という所属クラブで機能している3人が組んだMFは、まったく良いところがなかった。

しっかりチームが機能したブルガリア

ブルガリアはしっかりチームが機能。デレフが2ゴールを挙げてヒーローに 【Getty Images】

 ポルトガルリーグで24ゴールを決めているスポルティングCPのバス・ドストの生かし方も、分かっていたのに徹底できなかった。レギュラー視されていたビンセント・ヤンセンは、しっかり味方との連係もとれ、単独突破も図れるタイプのストライカーだが、風邪でブルガリア遠征に参加できなかった。

 そこでドストに白羽の矢が立ったが、彼はサイドからのクロスに依存するタイプ。そのため、試合前日の練習ではセンターバック(CB)やアンカーからサイドにボールを散らし、サイドバックやウイングがクロスを上げ、センターFWとインサイドハーフが頭で合わせる練習を繰り返していた。だが、後半から左インサイドハーフとして出場したウェスレイ・スナイデルが69分に左ウイングにコンバートされるまで、オランダはほとんどクロスをサイドから入れなかった。

 この“69分”というのはルーク・デ・ヨングを投入した時間だった。ブリント監督はドストとデ・ヨングを前線に張らせ、ロングボールを放り込む戦術に出たのだが、右にアリエン・ロッベン、左にスナイデルを張らせて4−2−4のようにしたので、セカンドボールを拾おうにも誰もボールの落ちどころにいないという現象が生じてしまった。

 一方、ブルガリアはしっかりチームが機能した。オランダでは「ブルガリアは前線からプレスをかけず、引いて守ってロングボールからカウンターを仕掛けるチーム」として分析されていたが、ブルガリアも「オランダはプレスを掛けられてもロングボールに逃げず、しっかりつなごうとしてくるチーム。今予選でCBコンビを組んでいたジェフリー・ブルマとフィルジル・ファン・ダイクは負傷でいないため、完全に新しいCBを組んでくる。左CBブルーノ・マルティンス・インディの出場は堅いが、右CBはステファン・デ・フライが負傷で間に合うか微妙。マタイス・デ・リフトかウェスレイ・フートが先発するだろうが、2人とも代表デビューマッチになる。しかもデ・リフトはまだ17歳。フートは左利きだ。スピードもあまりない」と分析していたはずだ。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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