“原点”の釜石で引退したレジェンド 「伊藤剛臣はラグビーを愛しています」
“ブレイブ・ブロッサムズ”と称賛されたW杯
――シックス・ネーションズ(欧州6カ国対抗戦)がたけなわですが、長いキャリアを重ねてきた伊藤さんは、対戦経験もたくさんありますね。
スコットランド、フランスとは2003年のワールドカップで対戦しましたし、ウェールズとは1999年のワールドカップで、アイルランドとは2000年に遠征で、2005年に向こうが来日したときも対戦しました。
――その中で印象に残っている試合は。
まず、2003年のスコットランド戦ですね。僕にとっては2回目のワールドカップだったのですが、1999年は3試合ともリザーブからの出場だったので、ワールドカップの試合で先発したのは初めてだったんです。
僕にとってはちょうど50キャップ目だったし、試合も後半20分過ぎまでどちらが勝つかわからない試合ができた。みんな頭からタックルに行って、すごい試合ができました。
最後は11対32で負けたのですが、海外のメディアからも称賛されました。日本代表はエンブレムが桜の花なので、それまで海外のメディアからは“チェリー・ブロッサムズ”と呼ばれていたんですが、このスコットランド戦の日本代表の戦いを見た現地の新聞が『コイツらは“ブレイブ・ブロッサムズ”だ。“勇敢な桜”と呼ぼう』と見出しを打って、それが今のジャパンのニックネームになったんです。うれしかったですね。
「シャバルのタックルは死ぬかと…」
特別ですね。やはり、ラグビー界で最高の真剣勝負の場であり、夢の舞台です。選手だけでなく、お客さんもいろいろな国から来る。試合当日はホテルからパトカーが先導して、ノンストップでスタジアムまで行くんです。特別なものを感じましたね。
――スコットランド以外の国とはどんな思い出がありますか。
同じ2003年ワールドカップで対戦したフランスもよく覚えています。フランスはその前のワールドカップでオールブラックスに勝ったりしているし、セットプレー、特にスクラムにはものすごいこだわりがあって、アタックはひらめきがすごくて予測がつかない。何をしてくるかわからないんです。
ディフェンスも激しい。特に覚えているのはFL(フランカー)のセルジュ・ベッツェンですね。身長も体重も僕と同じくらい、世界的には小さいFLなんですが、ジャッカル、ボールへの絡みは絶品でした。
あとWTB(ウイング)のクリストフ・ドミニシですね。彼も身長170センチ、体重80キロくらいで日本人と変わらない体なんですが、スピードが素晴らしい。オールブラックス戦でも2トライくらい取ってましたよね。あとはLO(ロック)のセバスチャン・シャバル。タックルされたんですが、死ぬかと思うくらいの衝撃がありました。あれは一生忘れられません。