日本代表・稲垣が語る“スクラムの世界” 「ヒジに注目してもらえると…」
秋のイングランド遠征「楽しみですね」
スピード、パワーに優れ、日本代表を引っ張る存在となっている稲垣啓太 【写真提供:WOWOW】
パナソニック、日本代表、そしてサンウルブズ、どのジャージを着ていても、スクラムでは最前列で戦い、ボールが出れば抜群の機動力で走り回り猛タックルを連発。ピッチを離れれば戦術、戦略、スクラムのメカニズムを理路整然と語る。静かで頑健なニューリーダーの言葉に耳を傾けよう。
――これまでのシックス・ネーションズ(欧州6カ国対抗戦)との関わりを教えてください。
シックス・ネーションズのチームと対戦したのは2015年ワールドカップのスコットランド戦が最初でした。その後、16年にスコットランドが来日して2試合、秋の遠征でウェールズと対戦して、17年には日本でアイルランドと2試合、遠征でフランスと対戦しました。イタリアが前回来日した14年、僕はまだ日本代表に入っていなかったのですが、18年にはイタリアがまた来日するし、秋にはイングランド遠征もあるので、そこでまたシックス・ネーションズのチームには関われると思います。楽しみですね。
欧州ラグビーのスクラムの考え方
北半球と南半球ではスクラムの考え方が違うと語る 【写真:FAR EAST PRESS/アフロ】
日本では南半球のラグビー文化がなじみ深いですが、北半球、ヨーロッパのラグビー文化は全然違いますね。特徴は、スクラム、ラインアウトというセットプレーを起点に得点を重ねていこうという考え方です。昨年の11月にフランスと戦ったときは、スクラム、ラインアウトの場面で観客がワーッと盛り上がりました。日本ではなかなかない風景でしたね。スクラム戦に対して、フランス国民が期待しているんだなということを強く感じました。
ペナルティキックでフランスがショットを選択したときは、お客さんがすごいブーイングがあがりました。やっぱりタッチに出して、ラインアウトからモールでトライを取るところを見たかったんだと思います。あるいはスクラムか。
――日本のスクラムについて、フランスのファンの反応はいかがでしたか。
日本がスクラムを押したときも観衆は沸きました。やっぱりスクラムというものに対する興味が深いんでしょうね。日本ではなかなか注目してもらえないスクラムですが、それだけ深い関心を持って見てもらえるのは、PR(プロップ)というポジションの人間としてうれしいです。
世界の強豪国の「スクラムの特徴」
スクラム、タックルだけでなく、攻撃でも高い評価を得ている 【写真:アフロ】
ヨーロッパのチームは全体的に手堅いラグビーをしますよね。反則をもらったらショットで手堅く3点を取る。リスクを避けて、確実な戦い方を目指す。スクラムで反則を奪うこともそのひとつです。
昨年戦ったアイルランドは、特別なサインプレーとかをしてくるわけではないですけど、本当にミスが少なくて、僕らの弱点を突いてきました。僕らも『我慢しよう』と言い聞かせて戦ったけれど、結果としてアイルランドが一枚上手でした。そしてペナルティを取ったら確実に3点を取ってくる。その積み重ねで点差もつけられてしまいましたね。
――スクラムの組み方にはどんな特徴があるのでしょうか。
まず、南半球では国ごとに特徴があります。ニュージーランドではだいたい3番がまっすぐ押して、1番がインサイドに入ってきます。オーストラリアはそれほど特徴はないけれど、組んでからストロングポジションに入るのが早いんです。ただ、そこさえ押さえられれば僕らがスクラムでペナルティを奪うこともできます。実際、11月の対戦ではペナルティを取りましたし。
そして南アは、組み方がどうこういうよりも、体重とパワーで強引に押してきます。強いて言えば3番が内に入ってくるんですが、それも体重で持っていこうとする感じですね。
それに比べて、ヨーロッパ勢は、スクラムを無理に押してくる感じはないです。むしろ感じるのは8人のまとまりですね。まず8人でガッチリと固まって、後ろ5人の重さをじっくり前に伝えてくるんです。誰かが前に出てスクラムを崩していこうとするのではなく、8人が一体となってプレッシャーをかけてくる。8人全員の意識が統一されているなという印象があります。これはシックス・ネーションズ勢に共通する傾向だと思います。
スクラムで注目すべきは「ヒジ」
パワフルな選手たちが組み合うスクラムでは、細かい駆け引きが行われている 【写真:アフロスポーツ】
スクラムのポイントを言葉で伝えるのは難しいのですが……ひとつの目安として、1番の左ヒジと3番の右ヒジに注目してもらえるといいと思います。というのは、スクラムが落ちたとき、どちらのヒジがどうなっていたかということが、レフェリーがどちらにペナライズするかの目安になることが多いんです。
スクラムでは、PRはお互いのジャージの袖をつかみ合って組み合うんですが、このときヒジが下がっていると、スクラムを下に引っ張って、崩れる原因をつくったと見なされやすい。だから自分のヒジから落ちるとペナライズされやすいんです。逆に、腕を伸ばしていても、相手を下向きに押し下げていると見なされて、やはりペナライズされることもあります。
僕は、ヒジを曲げて、相手の腕を上に引っ張るような、落とさせないような組み方を心がけています。相手は、組んだときに自分が有利な体勢を取れなかった場合は、崩れたようにみせかけて組み直そうとする、だけどこっちは、崩れないようにそれを上に引き上げようとしているという意図がレフェリーに伝われば、ペナライズされる可能性は低くなります。
ただこれは、こうすれば必ずこう吹いてもらえるという法則があるわけではなく、結局はレフェリーの主観で決まります。だから大切なのは、最初のスクラムでいいスクラムを組むこと。そうすれば、レフェリーにいい印象を与えることができます。逆に、最初に悪いスクラムを組んでしまうと、レフェリーは試合の間ずっと、こちらのスクラムに対してネガティブな先入観を持って見てきて、相手が悪いときでもこちらがペナライズされてしまう流れになってしまいます。僕らとしては、レフェリーに介入させずに、しっかり組み合いたいわけですからね。そのあたりが、見てわかりやすいところだと思います。
――19年のワールドカップに向けて、稲垣選手の決意を聞かせてください。
やっぱり自国開催のワールドカップですから、選手にもスタッフにもすごいプレッシャーがかかるでしょうね。その中でも、大切なのは個々がレベルアップすることだと思います。ラグビーは15人のスポーツですが、それも15人の個人の努力の集合体ですから、ワールドカップまで1年半の間に、どれだけ個人が能力を高められるかがポイントだと思っています。
戦術、ゲームプランはスタッフが作ってくれるけど、それを実行するのは選手たち。戦術を遂行するためのスキル、フィットネスを個々が身につけることが、選手の責任であり、ベスト8進出という目標を達成するための絶対条件だと思います。
稲垣啓太(いながき・けいた)
中学3年生のとき新潟ラグビースクールでラグビーを始める。
新潟工3年で高校日本代表に選ばれU18フランス代表と対戦。
関東学院大で2011年度大学選手権4強進出。
2013年、パナソニック ワイルドナイツに入団。トップリーグ優勝に貢献し、新人賞受賞。ベストフィフティーンはこの年から今季まで5年連続で受賞。
日本代表には2014年11月の欧州遠征で初めて選ばれ、ルーマニア戦で初キャップ。2015年ワールドカップでは全4試合に出場するなど通算19キャップ。
スーパーラグビーでは2015年はレベルズで、2016年からはサンウルブズでプレーしている。
186センチ、116キロ。
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第2節:
アイルランドvsイタリア 2/10(土)夜11:00〜 [WOWOWライブ]
イングランドvsウェールズ 2/10(土)深夜1:30〜 [WOWOWライブ]
スコットランドvsフランス 2/11(日・祝)夜11:50〜 [WOWOWプライム]
第3節:
フランスvsイタリア 2/24(土)午前4:45〜 [WOWOWプライム]
アイルランドvsウェールズ 2/24(土)夜11:00〜 [WOWOWライブ]
スコットランドvsイングランド 2/24(土)深夜1:30〜 [WOWOWライブ]
第4節:
アイルランドvsスコットランド 3/10(土)夜11:00〜 [WOWOWライブ]
フランスvsイングランド 3/10(土)深夜1:30〜 [WOWOWライブ]
ウェールズvsイタリア 3/11(日)夜11:50〜 [WOWOWプライム]
最終節:
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イングランドvsアイルランド 3/17(土)夜11:35〜 [WOWOWライブ]
ウェールズvsフランス 3/17(土)深夜1 :50〜 [WOWOWライブ]
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