選手から転身した高知FD球団社長 「球児特需」を一過性にしないために

阿佐智

現役時代から持っていた経営者目線

選手から球団社長に転身した梶田社長だが、以前から経営者目線を持っていた 【阿佐智】

 久しぶりに見たその顔は幾分痩せたように見える。

「そうですか? 皆さんに言われるんですけど、まあ、何もやっていないので痩せますよね。筋トレでもやっていれば違うんですけど、その時間もありません」

 梶田宙(かじた・ひろし)。四国アイランドリーグplus・高知ファイティングドッグスの若き球団社長である。現場上がりのフロントスタッフが少ない日本球界にあって、彼はリーグ創設当初から昨年まで外野手としてプレーしていたアイランドリーグを最もよく知る球団経営者だ。ミスター・アイランドリーグと呼ばれたこの男は、歴代最多の650試合に出場し、529本のヒットを放って、昨シーズン限りでバットを置いた。

 高知は今年、前後期とも最下位に沈んだ。彼がチームを引っ張り、独立リーグ日本一に輝いたのは、もう6年も前のことになる。リーグ創設当初の強豪も、過疎地を多く抱える高知という土地柄、球団の経営を考えると、選手補強、練習環境も思うようにはならず、ここ近年は低迷を続けている。まだ32歳、そういうチームの現状を見て、体がうずくことはないのだろうか。

「もう一度やりたいっていうのは全然ないですね。試合を見ていて、こういう球を打ったらいいのに、とは思いますが、自分だったらこうする、とは思いませんね。もう現役は十分やり切りましたから」

 選手からフロントへ転身することへの葛藤はなかったという。地域貢献活動や整わない環境という現実に、「プレーに専念できない」と不満をこぼす選手もいるなか、梶田は「独立リーグとはそういうところ」と、その中でできる最大限の努力を払ってきた。ある意味、現役時代からそういう経営者目線を持っていたことが、引退、即球団社長という「華麗なる転身」を果たした理由かもしれない。

選手に求める勝利

 社長就任後、まずは勝たねば、ということを痛感した。

「お客さんが、負けた負けた、って言って帰っていくのを見ると、すごく残念ですね。お客さんを喜ばすために、球場を盛り上げようと一生懸命やってますけど、やっぱりまずは試合でいいプレーを見せたり、勝って帰ってもらうのが、一番喜んでもらえると思います。選手に求めるものはやっぱりそこの部分ですね」

 しかし、一方で、独立リーグのファンが試合の勝敗以外のところで球場に足を運ぶことも事実である。藤川球児の電撃加入はそのことを端的に示している。リリースされたとはいえ、現役バリバリのメジャーリーガーが独立リーグの門をたたくなどとは、誰もが思いもつかなかった。それは梶田にとっても同じことで、青天のへきれきと言っていいビッグネームの入団に、球団はてんやわんやの状態になった。

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著者プロフィール

世界180カ国を巡ったライター。野球も世界15カ国で取材。その豊富な経験を生かして『ベースボールマガジン』、『週刊ベースボール』(以上ベースボールマガジン社)、『読む野球』(主婦の友社)などに寄稿している。

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