選手から転身した高知FD球団社長 「球児特需」を一過性にしないために

阿佐智

今後の補強はビッグネームに頼らない

藤川が電撃加入した夏以降、球場には多くの観客が詰め掛けた 【写真は共同】

 今シーズン、アイランドリーグは前後期間の1カ月、選抜チームの北米遠征を企画した。この間、各球団は無収入で選手たちを養わねばならない。この期間に行われる入場無料のオープン戦を藤川の入団は有料にしてくれた。それだけではない。公式戦でも普段は閑古鳥の泣くスタンドを元メジャーリーガーは満員にした。球団は、急きょ藤川グッズをメーカーに注文、これも飛ぶように売れた。高知は思いもよらぬ「球児特需」に沸き、結果としてファンは、勝敗以外のところで大いに喜ぶことになった。

 しかし、これについて、梶田は複雑な表情を見せる。

「まあ、そうなりますね。でも、そうやって藤川投手を見に来てくれたファンをつなぎとめるにも、やっぱり雰囲気作りが大事だと思います。そうなると、やっぱり勝たないと、絶対にお客さんは来てくれません。だからもう来季に向けて補強に動いてます」

 詳細は企業秘密ということだったが、その補強策もビッグネームに頼るつもりはないという。

「まあ、NPB経験者はいい選手だということは分かってますけど。やっぱり、僕たちの根本は、トップリーグのNPBに選手を送り出すことなんですよね。だから、その範囲で選手をとり、育てて、それから勝つ、っていうのが、いい流れになってくると思うんですよ。そこの部分でどれだけ人を呼べるようになるのか、どれだけ育てるのかっていうところが大事だと考えています」

目指すは北米の独立リーグ

 現在の仕事の中心は、スポンサー獲得のための営業だ。中央球界では無名の梶田だが、10年間プレーしてきたミスター・アイランドリーグの顔は、ここでは大いに力を発揮する。日本の独立リーグは、その収入をスポンサーからの協賛金に大きく依存している。しかし、梶田は、このある意味、不安定な収支構造もチケット収入中心のものに変えたいと考えている。

「各球団、球場にお客さんが集まって、運営がうまくいくっていうのが理想だと思うんですよ」

 好選手の獲得、リーグ戦のレベルアップと自チームの好成績、NPBへの選手送出という正の循環を作るべく彼は日々奔走している。この夏、北米の独立リーグを目の当たりにしてきた副社長から話は聞いている。

「向こうは3000人くらい入るんでしょ。目指すは本場の独立リーグです」

「球児特需」を一過性のものに終わらせないための梶田の戦いはこれからも続く。

(敬省略)

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著者プロフィール

世界180カ国を巡ったライター。野球も世界15カ国で取材。その豊富な経験を生かして『ベースボールマガジン』、『週刊ベースボール』(以上ベースボールマガジン社)、『読む野球』(主婦の友社)などに寄稿している。

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