メッシを彷彿とさせる三笘の天才技 “神がかった4タッチ”から生まれた衝撃の先制弾
「タッチのところは全部完璧でした」と自ら評した
「そうだと思いますね。クオリティの面からすれば」という答えが返ってきた。自分のプレーに厳しい三笘にしては珍しく満足感がにじんだ返答だった。
しかしあのスーパーゴールに対する発言としては物足りない。だから「ハーフタイムに、英国人の記者たちが“What a touch! ”だと口々に言っていた。あのファーストタッチが決まった瞬間、どう思った?」と、少しあおってみた。
けれども三笘はそんな筆者の思惑には我関せずというふうに、「ツータッチ目をすぐに触れれば、(相手を振り切り)方向転換できるところがあったんで。(右の)スペースは認知していました。どうやってシュートにいくかというところで、相手の選手も速いですし、あのタイミングでしか打てなかったかなと思う。タッチのところは全部完璧でしたけど、少しでもずれていればやっぱり難しいところはあったと思います」と淡々と語った。
ただし「タッチのところは全部完璧でした」と言った。淡々と、冷静にゴールシーンを振り返りながらも、ファーストタッチ、次のコントロール、そしてインサイドで放ったシュートと、右足一本で繰り出した4回のタッチに関しては“完璧”と自ら評して、満足感を示した。
だから「あのプレーをプレミアリーグの舞台で見せるすごさについてはどう思う?」とさらにあおったのだが、「いや、もうプレミアでプレーしている以上はどこでも。ここで結果出さないといけないんで」と、また謙虚で冷静なコメントが返ってきた。
驚いたのは「本当に扱いが難しいボールだったが」という質問に対して、「練習でもああいうのをやってますし、過去にも何回もやってるんで。得意なところでもあります」と語ったことだ。あのタッチ、どうやら練習場ではしょっちゅう見せているようだ。
さらには、後方からの強いロングボールを足元に収めたあのタッチを「得意なところ」と言っている。確かにブライトンでは主将のルイス・ダンクがしばしば“ほら行ってこい!”とばかりに、三笘の韋駄天に期待して後方から強いロングボールを左サイドの裏のスペースに向かって蹴る。だから、後方から自分の頭を越えてくるボールの扱いには慣れているのだろう。
まあ逆に言えば、それだからこそ、三笘は世界最高峰のプレミアリーグでも際立つアタッカーとして存在感を示しているのである。
一生語り種になるような試合に
そのなかの1人、三笘の日本代表のユニホームを着た若者を混み合った車内で押してしまった。「ごめんなさい」と日本語で謝ると、「あっ、日本の方ですか?」と返され、話しかけられた。取材で来ていると明かして、スポナビでコラムも書いているとこのコーナーを少し宣伝した。すると駅に着いたら、あっという間に彼らに取り囲まれていろいろと質問された。写真も一緒に撮った。
「おっ、スタジアムが見えたぞ!」
「すげえ! ここがそうか!」
若者たちが漏らすそんな呟きがすごく初々しくて、聞いているだけで口角が上がった。みんな興奮していた。生まれて初めて生で観るプレミアリーグ戦だと言っていた。
だから、「よく来たなあ。長旅だったし、円安でお金もたくさん使ったね。でもその甲斐があったという試合になりそうだよ。ブライトンもチェルシーも攻撃的なチーム。きっと一生の思い出になるような試合になるはず。死ぬ時に走馬灯のように出てくる、そんな試合にね」と言った。みんなが揃って「うぉ~!」と唸った。
それどころじゃなかった。あんな三笘のゴールを肉眼で目撃したのだ。
来月、63歳になる筆者が寒さを忘れ、真夜中を過ぎても眠気も疲れも全く感じなかったほどアドレナリンが出たゴール。それをあの若さで体験した彼らはあの後どうしたことやら。
筆者が予言した通り、“俺はあそこにいたんだ!”と、彼らにとって一生語り種になるような試合となったことだけは間違いない。
(企画・編集/YOJI-GEN)