レッドブル2025:なぜ角田裕毅でなく、リアム・ローソンだったのか

柴田久仁夫

最終戦アブダビGP後のチーム記念撮影で、仲良く2ショットを撮る角田とローソン 【(c) Redbull】

結果だけなら角田が優位だったが

 迷走を続けたレッドブルのドライバー選定に、ようやく終止符が打たれた。

 レッドブルは来季のマックス・フェルスタッペンのチームメイトに、リアム・ローソンを抜擢することをこのほど発表した。現レッドブルドライバーで、今季中盤以降極度のスランプに陥ったセルジオ・ペレスのチーム離脱が公になった翌日のことだった。

 ペレスの後任にはダニエル・リカルドやフランコ・コラピント、あるいはカルロス・サインツなど、何人かのドライバーが取り沙汰された。しかしシーズン終盤には実質的に、ローソンと角田裕毅の2択になっていた。そしてレッドブルは、ローソンを選択した。なぜだったのか。

 ローソンの昇格に僕が疑問符をつけるのは、同じ日本人である角田のいっそうの飛躍を期待しているからだけではない。何より、実績が違いすぎる。

 去年、F1デビューしたローソンは、まだ11戦しかGP経験がない。対する角田は90戦を戦ってきた。確かに依然として未勝利、表彰台にも上がっていない。しかし着実に進化を続け、特に4シーズン目となる今季は、非力なマシンから100%の力を引き出し、時にトップ4チームを凌ぐ速さを見せ続けた。

 ローソンとの比較でも、優位は明らかだ。今季一緒に走った後半6戦で、予選は6勝0敗、レースも4勝2敗という結果を残している。

決定の裏にあったもの

アブダビテストでの好結果は、考慮されなかったということか 【(c) Redbull】

 それでもレッドブルが角田ではなくローソンを採った理由についてクリスチアン・ホーナー代表は、ESPNのインタビューで、「今後さらに良く、強くなるだろうから」と、語っている。

「確かにまだ11戦しか走っていない。しかし去年のデビュー戦オランダGPは、ダニエル(リカルド)の骨折で急遽出たにもかかわらず、いきなりマックス(フェルスタッペン)と競っていた。そんな強靭なメンタリティを持っている。ユウキとの比較でも、レースペースはわずかに優れていたし、予選も非常に拮抗していた」

 精神力の強さ、適応力を賞賛し、そして今後の伸び代に大きく期待していることが窺われる。ただし予選の速さについて言わせてもらえば、確かにアメリカ、メキシコ、アブダビは、角田との差はコンマ1秒前後で拮抗している。しかし残り3戦は、ブラジルはコンマ37秒、ラスベガスはローソンがQ2落ち、カタールはQ1落ちと、角田の速さが優っている。

 一方で角田については、「非常に速いし、3、4シーズンの経験もある。アブダビテストでは非常に良い仕事をし、エンジニアたちは彼のパフォーマンスに感銘を受けた」とコメントしている。

 ただしアブダビで角田を乗せたのはホンダの強い要請を受けてのもので、ホーナー代表以下、主要メンバーは実際の走りを見ていない。データはあとで見たとは思うが、テストに立ち会わなければ見えない部分もあったはず。角田というドライバーを、これ以上知る必要はないと思っていたということか。テストの結果にかかわらず、すでにそれ以前の時点でローソン起用は決まっていたのだと思う。

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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