フェルスタッペンの4連覇は、どれほどの偉業なのか
タイトル獲得の重圧から解放され、晴々とした笑顔のフェルスタッペン 【(c) Redbull】
苦難のタイトル獲得
シーズン前半は10戦7勝。選手権2位のランド・ノリスに大差をつけ、「今季もフェルスタッペンで決まり」という声も多く聞かれた。しかし仔細に見ればすでにこの頃から、フェラーリやマクラーレンとの差は確実に縮まっていた。
この時期、フェルスタッペンが勝利を重ねる一方で、同じマシンを駆るセルジオ・ペレスは1勝もできないどころか、第6戦マイアミGP以降今に至るまで表彰台にも上がれなくなった。ペレス本人のスランプもあったとはいえ、ライバルチームの戦闘力向上が一番の要因と言っていい。
そしてフェルスタッペン自身も6月の第10戦スペインGPを最後に、長い無勝利レースが続く。純粋な戦闘力で言えば、シーズン中盤以降の最強マシンはマクラーレンMCL38、ほぼ互角でフェラーリSF-24が続き、レッドブルRB20は3番手といったところ。コースによっては(今回のラスベガスや7月のシルバーストンのように)明らかにメルセデスW15に劣ったレースもあった。
それでもフェルスタッペンはマシンから最大限の性能を引き出し、2位、3位表彰台を獲得。最悪でも4位、5位に踏みとどまり続けた。タイトルをここまで争ったランド・ノリスは、そんなフェルスタッペンの凄さを身をもって実感したドライバーだった。
「今のマックスには弱点がない。彼自身は最高のシーズンを送った。マシンが最速のときはレースを支配し、そうじゃないときでも僕たちのすぐ後ろにいた。1年を通してミスをしない。完璧なドライバーだよ」
4連覇はいかに難しいか
ラスベガスGPレース終了直後、角田裕毅が真っ先に祝福に駆け寄った 【(c) Redbull】
来年で75周年を迎えるF1GPにおいて、一度でも世界チャンピオンになったことのあるドライバーは34人を数える。それが2回のタイトル獲得となると、17人まで半減する。F1ファンなら誰もが知っているナイジェル・マンセルやキミ・ライコネン、ジェンソン・バトンも1回しかタイトルを獲れていない。
連覇となるとさらにハードルが上がり、2連覇はフェルナンド・アロンソやアイルトン・セナ、アラン・プロストなど7人。そして3連覇は、フアン・マヌエル・ファンジオ、ミハエル・シューマッハ、セバスチアン・ベッテル、ルイス・ハミルトン、そしてフェルスタッペンの5人しかいない。
言い換えれば生涯で3回のタイトルを獲得したセナやニキ・ラウダ、あるいは4回のプロストでさえ、3連覇はできていない。それほどの難事だということだ。一方で3連覇組の5人は、その勢いのまま4連覇も果たし、シューマッハに至っては5連覇を達成した。
そんな5人の中で、フェルスタッペンはどんな立ち位置なのか。