フェルスタッペンの4連覇は、どれほどの偉業なのか

柴田久仁夫

タイトル獲得の重圧から解放され、晴々とした笑顔のフェルスタッペン 【(c) Redbull】

苦難のタイトル獲得

 マックス・フェルスタッペンがラスベガスGPで、今季のチャンピオンを確定させた。2021年の初戴冠からの4連覇という偉業達成だ。ただし22戦目でのタイトル獲得は、ルイス・ハミルトンと激闘を繰り広げた2021年と並んで最も遅いものだった。それだけ今季のフェルスタッペンは、苦戦を重ねて来たといえる。

 シーズン前半は10戦7勝。選手権2位のランド・ノリスに大差をつけ、「今季もフェルスタッペンで決まり」という声も多く聞かれた。しかし仔細に見ればすでにこの頃から、フェラーリやマクラーレンとの差は確実に縮まっていた。

 この時期、フェルスタッペンが勝利を重ねる一方で、同じマシンを駆るセルジオ・ペレスは1勝もできないどころか、第6戦マイアミGP以降今に至るまで表彰台にも上がれなくなった。ペレス本人のスランプもあったとはいえ、ライバルチームの戦闘力向上が一番の要因と言っていい。

 そしてフェルスタッペン自身も6月の第10戦スペインGPを最後に、長い無勝利レースが続く。純粋な戦闘力で言えば、シーズン中盤以降の最強マシンはマクラーレンMCL38、ほぼ互角でフェラーリSF-24が続き、レッドブルRB20は3番手といったところ。コースによっては(今回のラスベガスや7月のシルバーストンのように)明らかにメルセデスW15に劣ったレースもあった。

 それでもフェルスタッペンはマシンから最大限の性能を引き出し、2位、3位表彰台を獲得。最悪でも4位、5位に踏みとどまり続けた。タイトルをここまで争ったランド・ノリスは、そんなフェルスタッペンの凄さを身をもって実感したドライバーだった。
「今のマックスには弱点がない。彼自身は最高のシーズンを送った。マシンが最速のときはレースを支配し、そうじゃないときでも僕たちのすぐ後ろにいた。1年を通してミスをしない。完璧なドライバーだよ」

4連覇はいかに難しいか

ラスベガスGPレース終了直後、角田裕毅が真っ先に祝福に駆け寄った 【(c) Redbull】

 では歴代のチャンピオンたちと比べて、フェルスタッペンはどれほど凄いのだろう。

 来年で75周年を迎えるF1GPにおいて、一度でも世界チャンピオンになったことのあるドライバーは34人を数える。それが2回のタイトル獲得となると、17人まで半減する。F1ファンなら誰もが知っているナイジェル・マンセルやキミ・ライコネン、ジェンソン・バトンも1回しかタイトルを獲れていない。

 連覇となるとさらにハードルが上がり、2連覇はフェルナンド・アロンソやアイルトン・セナ、アラン・プロストなど7人。そして3連覇は、フアン・マヌエル・ファンジオ、ミハエル・シューマッハ、セバスチアン・ベッテル、ルイス・ハミルトン、そしてフェルスタッペンの5人しかいない。

 言い換えれば生涯で3回のタイトルを獲得したセナやニキ・ラウダ、あるいは4回のプロストでさえ、3連覇はできていない。それほどの難事だということだ。一方で3連覇組の5人は、その勢いのまま4連覇も果たし、シューマッハに至っては5連覇を達成した。

 そんな5人の中で、フェルスタッペンはどんな立ち位置なのか。

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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