B1全体2位・三遠が示す圧倒的な攻撃力と上昇機運 20歳の「大器」を引き上げるチームカルチャーとは?
三遠はここまで15勝4敗と堅調。新加入の湧川(写真左)がプレータイムを伸ばしている 【(C)B.LEAGUE】
しかし2024-25シーズンは中地区が熱い。レギュラーシーズンのほぼ3分の1に当たる19試合を終えた現時点の戦績を見ると、全体首位は17勝2敗のアルバルク東京(中地区)だ。さらに「4敗」で三遠ネオフェニックス(中地区)、千葉ジェッツ(東地区)、宇都宮ブレックス(東地区)が並んでいる。A東京が今季は東地区から移ったのも一つの要因だが、中地区の首位争いは際立ってレベルが高い。
攻撃力が突出する今季の三遠
チームの特徴は、簡単にスタッツをおさらいするだけで分かる。まず1試合の平均得点が「91.7」と、B1でも2位・琉球(85.6)以下を大きく引き離す全体トップだ。ペース(攻撃回数)は微差の2位で、オフェンスレーティング(攻撃効率)が1位なのだから、得点数が増えるのは当然のこと。シンプルに攻撃力こそが彼らの強みだ。
大野篤史ヘッドコーチ(HC)が就任して2季目の2023-24シーズンに、三遠は46勝14敗と初の地区優勝を飾った。CSはクォーターファイナル(準々決勝)で広島に屈したものの、ポイントガード(PG)の佐々木隆成を筆頭に個とチームが躍進したシーズンだった。
今季はさらに日本代表の吉井裕鷹、NBAで6シーズンのキャリアを持つデイビッド・ヌワバと強力なウイングが2名加入。フィリピン代表サーディ・ラベナはUAEのクラブに移籍したが、帰化選手のウィリアムス・ニカや20歳のPG湧川颯斗も加わった。今季はさらに「個」の部分でバージョンアップが見て取れる。
12月11日のサンロッカーズ渋谷戦は、B1優勝経験を持つコーチ同士のハイレベルなバトルだった。三遠はパワーフォワードのヤンテ・メイテンを体調不良で欠いた中で接戦を演じた。結果的には第4クォーター残り35秒の田中大貴の3ポイントシュートが「ダメ押し」となり、三遠は74-78で敗れた。
もっとも大野HCは結果だけでなく「プロセス」にこだわる指揮官。内容には手応えを感じていた様子で、試合後にもこう語っていた。
「いいファイトだったと思います。しっかりゲーム内のアジャストメント(適応)をして、どちらに転ぶか分からない展開まで持っていけた。収穫が多い内容だったと感じています」
敵将が評価する三遠の強み
渋谷のルカHCは会見で大野HCの手腕を称賛していた 【(C)B.LEAGUE】
「大野さんは本当に強いバスケットの『形』を築いている。三遠はオフェンスリバウンドを取ることで、シューター陣が楽にシュートを打てるようになります。タフショットでも『オフェンスリバウンドを取ってくれる』という安心感の中で打てる――。そういうコンセプトがあるように見えます。(三遠の強さには他にも)様々な側面がありますけど、2つ目の強みは全員が高いエナジー、インテンシティー(強度)を持ち、フルコートで40分間守り続けるDFです。それに対して多くのチームは焦ってターンオーバーが増え、もしくは受身のオフェンスをしてしまいます」
三遠のオフェンスリバウンドは琉球に次ぐB1全体の2位(1試合平均13.9個)で、間違いなく彼らの強みだ。11日の渋谷戦はリバウンドの「稼ぎ頭」であるメイテンを欠き、そこを支配し切れなかった。また渋谷は田中やアンソニー・クレモンズ、ベンドラメ礼生といったハンドラーが安定してボールを運んだ。それらが勝敗を分けるポイントになった。
「三遠は(渋谷戦で)9つのオフェンスリバウンドを取りましたが、これは我々から見てコントロールできた結果です。私たちのターンオーバーも8個で、しっかりコントロールした数字です」(ルカHC)
ただルカHCのコメントから、大野HCと相手チームに対するリスペクトが強く伝わってきた。そして敗れてなお、三遠の充実ぶりも伝わる展開だった。