渡邊雄太の千葉ジェッツ加入が持つ意味 「代表」「バスケ界」にも及ぶ大物帰国の影響
8月27日に都内で渡邊雄太の千葉J加入会見が行われた 【撮影:大島和人】
獲得に成功したのは千葉ジェッツだ。2016年のBリーグ開幕以後にB1チャンピオンシップを1回、天皇杯を5回制しているBリーグ屈指の強豪で、昨シーズンは30億円を超える売上を挙げた人気クラブでもある。
千葉Jは2024-25シーズンからホームをLaLa arena TOKYO-BAY(ららアリーナ 東京ベイ)に移す。アリーナの収容人員が約2倍に増える中で、渡邊の加入には経営的なインパクトも見込める投資だ。田村征也社長は「オーセンティックユニフォームの売上は昨シーズンの倍近く」と明かしていた。
ジェッツの「熱量」が加入の決め手に
千葉Jは今季から「ららアリーナ東京ベイ」にホームを移す 【写真:つのだよしお/アフロ】
「皆さんはなぜ千葉ジェッツなのか、気になっていると思います。帰国したときの記者会見でも『一番僕に対して熱量を持ってくれるチームを優先したい』と話しました。どのチームも魅力的なオファーと熱量をくださったのですが、どこよりも千葉ジェッツは熱量があったと感じています」
NBAで過酷なサバイバルを続けてきた彼は、精神的に疲弊をした状態だった。2023-24シーズンの2月にメンフィス・グリズリーズへ移籍したが、シーズンの終盤はコートに立てない時期が続いた。メンタル面の理由があったと後に渡邊は明かしている。千葉ジェッツは、その問題に正面からアプローチをした。
「日本に帰ってくる一番大きな理由として、メンタル的な問題がありました。NBA(2023-24シーズン)の終盤はプレーできない、大好きなバスケットができない苦しい時間を過ごしました。そこはセンシティブな問題なので、話しにくい、あまり話題にしたくないのが普通です。『そこを全力でサポートしたい』『十分にバスケットを楽しめる環境を作っていきたい』と強調してくださったのは千葉ジェッツだけでした。そこは(加入を決めた)何よりの理由です」
繰り返しになるが千葉JはBリーグ屈指の実力と人気を持つクラブだ。渡邊の親友で、日本代表のチームメイトでもあるポイントガードの富樫勇樹もいる。これについて渡邊はこう口にする。
「ああいう大きなアリーナを使えて、沢山のお客さんの前でプレーできることも一つ(の理由)です。個人的に仲のいい富樫勇樹選手がいて、彼とは『いつか同じチームでやりたいね』と話していました。ただアリーナとか、勇樹との約束が仮になくても、ジェッツを選んでいただろうと思うくらい、ジェッツから熱量をいただきました」
GM、富樫のアプローチ
1歳上の富樫は「親友」と言える関係 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】
「渡邊雄太選手の千葉ジェッツ加入は私にとっても念願で、毎年のように彼のエージェントを通して話をさせてもらっていました。スタイルも千葉ジェッツとフィットしますし、アメリカで培った経験も大変リスペクトしています。GMとしてというより、バスケットボールに関わる者として『バスケットに集中して、ストレスなくやってもらいたい』という願いが強くあります。我々がメンタル的なところからしっかりサポートして、競技に打ち込める環境を整えて、日本のバスケット界全体を盛り上げて欲しいという思いを込めて、プレゼンテーションをしました」
池内GMと違う方法で「公開アタック」を仕掛けたのが富樫だった。渡邊が帰国を表明した約1カ月後の5月26日、富樫はX(旧Twitter)上で「誰がなんと言おうと俺はゆーたと同じチームでプレーしたいぞ!!!!!!」とメンションを飛ばし、千葉J加入を熱く呼びかけている。
渡邊は微苦笑を浮かべながらこう述べる。
「ネット上で色々言われるなと思ったし、自分がちゃんとチームを決めるまで穏便に……というのもあったのですが、そう思っているのを分かっていて、彼は僕をおちょくってああいうことをやったのかなと思います(笑)。ただ『一緒にやりたい』と公言していたのは素直に嬉しかったです。改めて同じチームで、同じユニフォームを来てプレーさせてもらえることになったので、今まで以上により良い関係を築いていきたい」
渡邊が明かしたところによると、彼はこれまでBリーグを3回「生観戦」していて、すべて千葉ジェッツ戦。そのうち2試合は船橋アリーナだった。
「レベルの高い、見ていて楽しいバスケットをやっているなと思っていました。そのチームに入って、ららアリーナという更に大きいアリーナでできることを楽しみにしています」