週刊ドラフトレポート(毎週木曜日更新)

【週刊ドラフトレポート最終回】いよいよ運命の日 まだまだいる!紹介したいドラフト候補6選手

西尾典文

29回に及んだ連載で、まだ取り上げられていない6選手を紹介する 【写真提供:西尾典文】

 ドラフト会議に向けて、年間400試合以上のアマチュア野球を観戦し、ドラフト中継番組では解説も務めるベースボールライター西尾典文さんが、有望なアマチュア選手を毎週レポートしてきたこのコラム。いよいよドラフト当日ということで、高校生、大学生、社会人各カテゴリーから2人ずつ、まだ紹介できていなかった有力選手を取り上げます。
(企画編集:Timely!編集部)

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「四国が誇る剛腕!怪我に苦しむも馬力は高校生トップクラス」

川勝は高2夏に153キロを記録した本格派右腕 【写真提供:西尾典文】

川勝空人(生光学園 3年 投手 181cm/84kg 右投/右打)

 まず高校生は生光学園の川勝空人と桐光学園の森駿太の2人。ともに下級生の頃から評判だった選手だ。川勝が話題となったのは昨年夏の徳島大会。チームは準決勝で敗れたものの、最速153キロをマークしたのだ。初めて現場でピッチングを見たのは秋の県大会の城東戦だったが、この試合でもストレートは最速151キロを記録し、試合終盤でもコンスタントに145キロを超えるなどその出力の高さは評判通りだった。フォームは少し上半身の力が強く、制球がアバウトな面はあったが、スライダーなど変化球のレベルも高い。2年秋にこれだけのスピードを投げられる投手はなかなかおらず、この時点で2024年の上位候補という声も多かった。しかし最終学年で川勝は状態を落とすこととなる。春先に右肘の故障でしばらく実戦から離れると、6月に行われた神戸弘陵との練習試合では、明らかに前年秋と比べるとボールの勢いがなく、安定感を欠く内容だった。夏の初戦でもリリーフで登板したものの制球を乱して逆転サヨナラ負けを喫した。ただそれでも好調時の球威は今年の高校生でも屈指であることは間違いない。逆に低い順位で狙えると喜んでいるスカウトがいることも十分に考えられるだろう。

「新基準のバットでもホームラン量産!左打ちの大型内野手」

森駿太は打者としての魅力が高い大型内野手 【写真提供:西尾典文】

森駿太(桐光学園 3年 三塁手 187cm/90kg 右投/左打)

 森は旧チームから大型ショートとして活躍。2年春の県大会では2試合連続でホームランを放っており、そのうち1本はプロ入りした杉山遥希(横浜→西武3位)からの特大弾だった。しかし森も川勝と同様に上位候補という声はあまり聞こえてこない。その大きな理由が守備面への不安だ。2年秋はファーストで出場し、3年春は一時ショートに戻ったものの、最後の夏はサードに回っている。投手も兼任していたが、スナップスローが不安で、ピッチャーゴロの送球を下から投げることもあった。それでも打者としては大きな魅力があることは間違いない。今年春の県大会でも新基準の金属バットを感じさせない特大のホームランを放ち、脚力も十分に備えているのだ。担当スカウトからも早くから外野で勝負していればもっと評価が上がっていたのではないかという声も聞かれただけに、打撃面を評価して狙う球団が出てくる可能性は高そうだ。

「大学4年秋に急浮上!MAX150キロの本格派右腕」

山城航太郎は大学4年秋に急浮上を見せている 【写真提供:西尾典文】

山城航太郎(法政大 4年 投手 183cm/84kg 右投/右打)

 大学生の場合、4年秋のシーズンで一気に評価を上げて滑り込みで指名を受けるというケースもあるが、今年それに当てはまりそうなのが法政大の山城航太郎だ。中学時代はU-15侍ジャパンにも選ばれており、福岡大大濠でも山下舜平大の控えだったものの、ショート兼ピッチャーとして注目されていた選手である。大学ではなかなか力を発揮できず、4年春まで5試合、5回2/3のみの登板に終わっていたが、秋はリリーフとして投手陣の一角に定着。筆者も9月24日の立教大戦を現地で見たが、最速150キロのストレートを武器に3回をパーフェクト、2奪三振と見事な投球を見せた。テイクバックで少し右肩が下がるフォームだが、リリースでしっかりボールを抑え込むことができ、ボールの角度は素晴らしいものがある。鋭く落ちるスプリットも決め球として十分な威力があった。10月20日の慶応大戦では自己最長となる5回を無失点、5奪三振の好投で初勝利をマークしている。投手としてのスケールの大きさは魅力で、支配下指名も十分に狙えそうだ。

「大学日本代表でも活躍!東都が誇る俊足強打のサード」

柳舘憲吾は報道の扱いこそ多くないが、実力と実績は十分 【写真提供:西尾典文】

柳舘憲吾(国学院大 4年 三塁手 180cm/82kg 右投/左打)

 大学生野手で実績の割に報道が少ない印象を受けるのが国学院大の柳舘憲吾(日大三高)だ。選手層の厚い国学院大で1年秋からサードの定位置をつかむと、3年春には打率.375で首位打者を獲得。今年は大学日本代表にも選出され、6月に行われた2つの国際大会でも安定した成績を残した。特に素晴らしいのがバットコントロールと内角のさばきで、昨年秋のリーグ戦では下村海翔(青山学院大→阪神1位)の鋭く変化するカットボールを見事にとらえてライト線へ運んでおり、その打撃にはスカウト陣からも思わず驚きの声があがっていた。それでも報道が少ないというのは右投左打で、そこまでホームランが多くない中距離打者タイプという影響が大きいのではないだろうか。同じ三塁手でも佐々木泰(青山学院大)の方が打撃の確実性は乏しいが、長打力がある分、プロから評価されているように見える。ただ柳舘も芯でとらえればスタンドに運ぶだけに力はあり、サードの守備も安定しているだけに、プロでも戦力となる可能性は高いだろう。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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