秋に行われるドラフト会議に向けて、年間400試合以上のアマチュア野球を観戦し、ドラフト中継番組では解説も務めるベースボールライター西尾典文さんが、有望なアマチュア選手を毎週レポートします。

　昨年まで11年連続でドラフト指名選手を輩出している徳島インディゴソックス。今年も有望選手が多いですが、その中でも評価が高いと見られる2人について紹介します。
（企画編集：Timely!編集部）

＊現時点のレベルバロメーター：★の数
★★★★★ 5：複数球団の1位入札濃厚
★★★★☆ 4：1位指名の可能性あり
★★★☆☆ 3：上位指名（2位以上）の可能性あり
★★☆☆☆ 2：支配下での指名濃厚
★☆☆☆☆ 1：育成であれば指名濃厚

工藤泰成（徳島インディゴソックス 23歳 投手 178cm/84kg 右投/左打）

【将来像】沢村拓一（ロッテ）
たくましい体格を生かしたパワーピッチングは沢村とイメージが近い

【指名オススメ球団】ロッテ
リリーフの主力はベテランが多く、世代交代が必要なチーム事情から

【現時点のドラフト評価】★★☆☆☆
支配下での指名濃厚

　毎年多くの本格派投手が出てくる徳島だが、今年最も注目度が高いと見られているのが入団1年目の工藤泰成だ。明桜では1学年下に長尾光（現・茨城アストロプラネッツ）など力のある投手が多かったこともあってそこまで目立った存在ではなかった。ドラフト候補として名前が挙がるようになったのは東京国際大進学後だ。しかし好調時は150キロを超えるスピードをマークするものの安定感は乏しい印象は否めず、最終学年も春秋合わせて3勝6敗という成績に終わっている。プロ志望届も提出したが指名はなく、徳島に進むことになった。

　独立リーグでもシーズン序盤は不安定な投球が目立ったが、夏場以降に大きく成長。実際にピッチングを見ることができたのは7月11日に行われた巨人三軍との交流戦だ。先発を任せられた工藤は立ち上がりから150キロを超えるストレートを連発し、この日の最速は154キロをマーク。2回までは1人の走者も許さないピッチングを見せる。3回に2本のヒットを浴びて1点は失ったものの、3イニングを投げて1失点とまずまずの結果を残してみせた。スピードが大きく取り上げられることが多いが、大学時代と比べて成長を感じられたのがコントロールだ。この日もファウルで粘られた場面はあったものの、与えた四死球は0。3回を投げて球数は38で、ボール球はわずかに11球だった。変化球は140キロ近いスピードで鋭く変化するカットボールが目立ち、上手く芯を外すことができていた。短いイニングであればストレートと速い変化球で圧倒することも可能だろう。

　一方で気になったのは少し投球が単調で、緩急が不足しているという点だ。打者の目線をずらすような大きくて緩い変化球がなく、少し一本調子になることがあり、この日も失点した3イニング目はそれが顕著に出ていた。長いイニングで安定した投球をするにはカーブ、チェンジアップなどのレベルを上げるか、フォームに変化をつけるなどする必要がありそうだ。

　ただ夏場以降もさらにスピードアップし、自己最速は159キロに到達するなど出力の高さはプロでも上位というレベルにある。リリーフであれば早くから戦力になる可能性も高いだけに、支配下での指名も十分に期待できるだろう。