嫌な流れを払拭し、ヤンキースの待つWSへと誘う――大谷翔平が珍しく自画自賛した打席とは?【NLCS第6戦】
10月20日(現地時間)に行われた、ドジャースとメッツによるナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)第6戦。ドジャースは10-5でメッツに勝利。試合後、3度目のシャンパンファイトを楽しむ大谷翔平とチームメイト 【Photo by Daniel Shirey/MLB Photos via Getty Images】
大谷も負けまいと応戦し、手当たり次第にかけまくる。ミゲル・ロハスをインタビューしていた地元局のリポーター、キリステン・ワトソンさんも被害を受けた。
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日本のファンにもすっかりおなじみとなった、ドジャースの地元局リポーターのキリステン・ワトソンさん(写真は今年8月) 【Photo by Michael Zagaris/Oakland Athletics/Getty Images】
「全員の力でここまで来れた。(シャンパンファイトは)何回やっても本当にいいもの。もう1回やって今年を終わりたい」
大谷は、シャンパンが目に染みるのか、目をしばたたかせながら「厳しい戦いが多かった」とも振り返ったが、第6戦も中盤まで、どちらに流れが転ぶか分からなかった。ドジャースは三回までに6対1とリードしながら、四回には3点差とされ、その後も毎回のように走者を背負いながらも、かろうじて凌ぐ――そんな展開が続いていたのである。
ただ、そこで試合の行方を決めるタイムリーを放ったのが大谷だった。
裏目に出たアロンソの博打
六回の第4打席、大谷翔平はメッツのライン・スタニクから7点目のタイムリーヒットを放った 【Photo by Kevork Djansezian/Getty Images】
無死一塁でクリス・テーラーがバント。打球を処理したピート・アロンソ(メッツ)が二塁に投げたが、フィルダースチョイスでセーフ。そうして得たチャンスだったが、そのとき、第5戦のプレーが蘇った。
ドジャースは初回、無死二、三塁で、テオスカー・ヘルナンデスがショートゴロ。このとき、三塁走者の大谷は、ホームへの突入を自重した。すると試合後、デイブ・ロバーツ監督は「翔平はホームに走るべきだった」と苦言を呈している。
「おそらく1点先制できた。それで流れが変わった」
遊撃手のフランシスコ・リンドアがバックホームしたかどうかわからないが、大谷がホームに走っていれば1点を先制し、なおも無死一、三塁となったかもしれない。ロバーツ監督の言葉にそこまで含みがあったわけではないが、いずれにしてもあの走塁は、第6戦の試合前の段階でも話題になっていた。
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「アウトになれば、1死一、三塁で4番のフレディ(・フリーマン)。足を痛めていて走れないので、併殺のリスクが生まれる。打球も速かったので、1死二、三塁の方がいいと思った、というのが翔平の説明だった」
ただ、それに対してイベルコーチは「あそこは突っ込んでもらって構わない。それでアウトになっても、それはチームの責任だ」と伝えたそう。
大谷もそれを了承したそうだが、果たしてあそこでホームへ突入した場合、ショートのフランシスコ・リンドアは、バックホームしたのだろうか?
その見解をイベルコーチに問うと、「ほとんどの遊撃手は、投げないだろうな」と首を振ったが、「フランシスコなら、投げたんじゃないかな」と推測している。
その場合、大谷が感じたようにアウトとなり、1死一、三塁となったのか、セーフとなり、無死一、三塁となったのか。それはわからないが、イベルコーチはこう付言した。
「あそこでホームに投げられる選手がいるとしたら、リンドアとアンドレルトン・シモンズ(エンゼルスなど。ゴールドグラブを4度受賞した守備の名手)ぐらいだろう」
無死二塁で投前に犠牲バントが転がる。アウトのタイミングでも、三塁へ投げられる投手は意外と少ない。セーフになった場合のリスクを考えるからだ。アロンソのプレーがまさにそう。結果、大谷のダメ押しタイムリーを呼び込んでしまった。
ちなみに、このシリーズにおいて全試合ドジャースのショートを守り、リーグチャンピオンシップシリーズのMVPを獲得したトミー・エドマンに「あの場面で本塁に投げるか?」と聞くと、「ケース・バイ・ケース」と答えた。
初回に逆転の2点タイムリー2ベース、三回に2ランを放ったトミー・エドマン。NLCSでチーム最多の11安打、打率.407をマークし、MVPに輝いた 【Photo by Sean M. Haffey/Getty Images】
スタンフォード大出身で、佐々木麟太郎(花巻東卒)の先輩にあたるエドマンは、さらにこう続けている。
「セーフになった場合1点を取られ、さらに無死一、三塁になる。それよりは1点を与えても、1死二塁を選ぶ」
それがおそらくMLBのスタンダードだろう。アロンソの博打は、裏目に出た。